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■外側:家に帰って

 路地裏の先の出口の光へ近付くと、そこにいたのは玲音だった。

 近付いて行くと、

「琥珀?」

 という懐かしい声がして、見ると、母親が立っている。


「あ……かあ、さ……」


 全部言い終わらないうちに、母親は琥珀を抱きしめた。


「無事で、よかった。本当に」


 母親はぼろぼろ涙を流しながら琥珀を抱きしめた。


「琥珀、歩夢は?」


 母親の問いに答えたのは、後ろにいるルカだった。


「歩夢は、ここです」


 ルカが歩夢をおんぶしてくれていたのだ。


「歩夢は少し弱ってるかも。三日間何も口にしていないから、病院に行った方がいいと思います」

 歩夢を母親に託しながら、ルカが言った。


***********************


「さて、何から話してもらおうかしら」


 琥珀の家のリビングでは、家族会議的なものが開かれていた。琥珀の家は、いつもこうだ。何かあるとすぐに家族で集まって会議が始まる。議題は様々、大なり小なりだ。そのほとんどが取るに足らない小さなことで、例えば琥珀がもう少しドリブルの技術を上げるには何が必要か、とか、はたまたバレンタインデーにチョコを多くもらうためにはどうするか、というような内容のものである。今日は、その会議にルカも参加しているから新鮮な気分だ。


 歩夢はあのあと病院へ連れていかれ、無事に目が覚めたと聞いた。でも憔悴しているのは事実で、点滴することになったので今日は入院だ。病院へは父親が付き添った。なので今家にいるのは母親と琥珀、ルカの三人だ。


「あの船の上で、変なやつらに囲まれて……そこからの記憶はほとんどないよ。ルカのいる島に流されて、普通に生活してた」

 母親が作ってくれたココアをすすりながら、琥珀は答えた。


「そう、そうよね……その変なやつらっていうのは、あの後すぐに捕まったのよ。ああいう客船に乗り込んで、子供を誘拐するグループらしいわ」


「はあ……そうなんだ」


「ルカくん、本当にありがとうね。一緒にここまで来てくれたのね」


「いえ」


 にっこり笑うルカの左手に付いているミサンガはふたつ。ひとつはアニカにもらったもの。もうひとつはタケルの変化である。琥珀の親が出て来たとわかった瞬間に、面倒ごとを避けるため咄嗟に変化したのだ。タケルにしてはなかなか機転が利いている。


「こんな時間だから、今日はうちに泊まって行ってね」


「ありがとうございます」

 ルカはとても礼儀正しく答えた。


「歩夢、明日帰ってくるかな」


「そうね、ケガもないみたいだし。元気にしてるみたいだから、帰ってくると思うけど……あなたも元気そうでよかったわ。この三日間、生きた心地がしなかったのよ、本当に」


 琥珀のお母さんは嬉しそうにしている


「ねえ、ルカくんは、何ていう島に住んでるの?」


「はあ……えっと」


 ルカは頬をぽりぽりとかきながら、空を見ている


「内側です」


「ウチガワ? ウチガワ島? 初めて聞いたわ」

 

 母親がスマホで調べ始める前に、琥珀が慌てて話に割って入る。


「疲れたから、部屋に行っていい?」 


「いいわよ。ごはんが出来たら呼ぶわね」


なんとかごまかせた、と思い琥珀は安堵した。


***********************


 部屋の窓を開けると、ちょうど目の前に隣の家の窓がある


「あの窓の向こうが、玲音の部屋だよ。まだ戻ってないかな」


 琥珀はクローゼットの中から懐中電灯を取り出して、玲音の部屋をぴかぴかと照らした。


「これ、昔よくやってたんだ。暗号みたいだろ?」


「へえ」


 ルカは面白そうにその様子を眺めている。しばらくすると、隣の部屋の窓があいて、玲音が顔をだした。


「やあ、お疲れ」


「いろいろ聞かれたんじゃない?」


「うん。聞かれた。でも、なんとかなった」


「そっか。うちは質問攻めで大変だったよ」


「なんていったの?」


「記憶喪失で通したよ」


「実際、そんなかんじだったもんね」


 琥珀と玲音はゲラゲラと笑い合った。


「オルロワは、もういなくなっちゃったんだね」

 玲音は静かに頷いた。


「でも、大丈夫だよ。いなくても、ちゃんといるから。僕の中に」


 琥珀はその意味がいまひとつわからなかった。


「そうだ。しばらく、今のまま学校に通う事にしたんだ」


「そうなの?」


 そもそもあの旅行に行くきっかけは、玲音が転校して会えなくなってしまうから、という理由だった。


「転校する理由も、ピアノ教室の関係で、学校自体に問題があるわけじゃなかったし……というか、あるにはあったけど、転校するほどのことでもなかったな、て思えて来て。それで、今のままやってみることになったんだ」


「そっか」


「明日、学校どうする?」


 窓の向こうから玲音が聞く。


「休もうかな。ルカもいるし」


「休むの? 球技大会だよ」


「球技大会?」

 ルカの目がキラキラした。


「俺も行っていい?」

 琥珀と玲音は顔を見合わせた。もしルカが学校へ来るとしたら、それはとても面白いことになりそうだと思ったからだ。


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