■内側:流れ着いたのは
荷揚げの時間はそろそろ終わる。海から流れ着いたものは荷揚げ担当の男たちが引き上げて、その後「拾得物管理人」が分類する。そのままどうにかできるものは大通りの両端に設営された棚に並べられ、加工や修理が必要なものはそれぞれの担当に振り分けられる。
そして、どうにもできない「不要」、ほとんどこれに分類されるのだが、これが「大口」に運ばれる。一連の作業は日が高く昇る頃には終わってしまう。
この時間、大通りには様々な食べ物や果物、食器などの雑貨品、服やアクセサリー、石鹸、タバコ、ありとあらゆるものが並べられているので、島民はそれらを物色するため、カートや買い物カゴを片手にこぞって家から出て来る。そんな人通りの多い道を行くのは得策ではない。さて、どうするか。
答えは簡単だ。屋根の上を走ればいい。
ルカは手前の家の壁沿いにあるごみ箱に飛び乗り、そこからさらに屋根の上に飛び乗った。あとは屋根から屋根へ、飛び移って行くだけだ。ちょっと屋根の上を走るくらいでは家は壊れない。
「ねえ、何が流れ着いたか教えてよ」
走りながらノースに聞くと、ノースは飛ぶのをやめてルカの肩にちょこんと乗った。
《ルカみたいなのが、二人》
「なにそれ? どういうこと?」
ノースは答えない。
でも、次第にルカは理解した。
「つまり、人が流れて来たの? 俺みたいって、同じくらいの歳の子ども?」
ノースは何も言わなくなってしまった。
この鳥は、肝心なところでだんまりを決め込む傾向があるから、きっと答えはイエスだろう。
「それ、すごいよ! だって今までそんな事、なかったもの」
ルカはわくわくして、さらに足に力を込めた。あとほんの少しで浜に着く。
この島には、ルカと同じ歳、すなわち十三歳の子供がいない。五、六歳くらいの小さな子供か、アニカみたいに十六歳以上の大き目の子供、あとは大人たちだ。
同じ歳の友達と遊ぶというのはどんな感じだろうか。そんな事を思いながらルカはスピードを上げ、いくつもの屋根の上を飛び越えて行く。道ゆく人が、何か音がすると思って屋根を見上げても、そこにはもう誰もいない。見る間に浜が近づいて来る。ルカは風のように走った。