先生、「相性」ってなんですか?
この学校生活で大事なのは「相性」!!!!
でも、憧れの男の子との相性診断は×
終わった〜〜〜〜
「ねー、スイ、ヤバい!ヤバいよ!推しと『相性抜群』だった!!」
4組の朱莉が、物凄い勢いで走ってくる。今日も今日とて、元気いっぱいだ。
「おめでとう。よかったじゃん。ワンチャンあるかも?」
「ないないない、いや、ウチはただのオタクだし!!」
最近の話題は「相性」ばっかりだ。それもそのはず、高校一年生になったのだから。
私が生まれるちょっと前くらいから、学校生活では「相性」が重要視されるようになった。
小学生、中学生の間に定期的な診断やテスト、カウンセリングなどを受け、高校生になると、「性格・個性・適性」によってクラスが分けられる。通称「SKT」だ。
お母さんが子供の頃は、学力や学問分野でクラスが分けられていたっていうけど、目指すべき職や向いているクラブ、付き合うべき相手なんかは、全部SKTである程度絞られる。大人たちはSKTに頼らず、自分で道を決めていたんだなーと思うと、なんだかすごい。
「でもさー、やっぱりウチとスイの相性がいいのは、小学校の時からわかってたよねえ」
「本当は相性悪かったらどうしようって、結構心配したんだからね?」
SKTは便利な反面、友達を失う危険もある...らしい。
「わかるー!なんかさ、仲良くてもSKT違うと、この先揉めたりしそうでちょっと怖い、みたいなのあるしね。ああ〜、これで何も考えずにスイと友達でいれるから、よかったー」
朱莉がまん丸な目をパチクリ開いたり閉じたりしながら喜んでいる。どこか冷静な私と、素直で少し子供っぽい朱莉との相性が抜群か...。やはり信頼できる制度なのかもしれない。
入学してやっと一週間。仲が良いのは小中と同じ学校で育った朱莉くらいで、進路のこともまだあんまり考えてないし、私はまだ、特に問題なさそうかも。
「そうそう、ウチのクラスの担任から面談でこっそり聞いたんだけど、スイのクラスに転校生くるらしいよ」
朱莉が悪戯っぽく笑いながら、耳打ちする。
私も体を少し屈めて、小声で返す。
「今の時期に?まだ入学して一週間だよ」
「こっちに引っ越す予定だったのが、入学直前に病気で入院することなったとかで、手続きとか引越しが若干遅くなったらしい」
「へえ。なんでそんなこと知ってんの?先生と仲良くなりすぎだよ。朱莉は本当に社交的だねえ」
「まあー、社交性はSKTでも証明されたしね」
朱莉は社交的でリーダーシップがある。概ねそういう評価を受けているらしい。反対に、内向的で人についていくことを好む私のようなタイプは相性ピッタリだ。でも、SKTが決まる前、つまり幼少期から二人の関係性ははっきりしていて、逆に今更だよなあとも思う。
「先生曰く、イケメンなんだって」
「ふーん」
「でもSKT的に、結構変わり者だから見どころあるぞーって」
「朱莉の担任、口軽すぎ」
「だよね。でも、なんか楽しみじゃない?転校生きたら、絶対教えてね!!」
「わかったよ」
それにしても「性格・個性・適正」でSKTって、なんかちょっとダサいんだよな。
チャイムが鳴って、「じゃ!!!」と手を振りながら朱莉は走って教室に戻る。
転校生、ちょっと気になるけど、自分から積極的に話しかけられるタイプでもないし、結局は外野としてみてるだけなんだろうな。なんて考えて、少し憂鬱な気分になる。