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超短編小説『千夜千字物語』

『千夜千字物語』その21~駐輪場

作者: 天海樹

付き合いだして3年目あたりから

お互いの気持ちが少しずつズレていった。


そんな時に起きた彼の浮気疑惑。


互いに忙しくて会えない日々が重なり、

ようやく会えるとなった日でさえ

ユウキに仕事が入りドタキャンとなった。

ところがミクは、

その日ユウキが女性と一緒にいるところを

偶然にも見てしまったのだ。


後でわかったことだが、

相手は会社の後輩で

部内のハラスメントの相談をするため

社外でユウキと会っていただけだった。

でもこれが理由ではないが

きっかけとなって二人は別れた。


1年後、二人が再会したのは近所の駐輪場でだった。

ミクが駐輪場をうろうろと探し物をしていると

「どうした?」

聞き慣れた声が聞こえた。

見るとユウキだった。

「自転車をどこに停めたか

 わからなくなっちゃって」

「相変わらずだなぁ」

昔よく二人して探したことを思い出しながら

二人で広い駐輪場を探し回った。

ほどなくして自転車は見つかり

「覚えやすいところに停めろよ」

と、ユウキのお馴染みのセリフも併せて

すべてを懐かしく思いながら二人は別れた。


また別の日、

ミクが駐輪場の精算機でまごまごしていると

酔っぱらった男二人組に絡まれていた。

それを見つけたユウキは

「お巡りさーん、こっちです!」

と言って駐輪場に向かうと

男たちはすぐに退散していった。

「ありがとう!」

「帰りが夜になるなら

 明るい駅前に停めなって言ってるじゃん」

少し呆れたようにユウキが言った。

ミクは怖さから逃れられたのと

聞き馴染みのユウキのセリフに、

あの頃に戻ったように安心した。


それからも、

駐輪場での偶然の出会いは何度か続いた。


ある出来事の後、

ユウキはちょっと真剣な顔をしてミクに尋ねた。

「オレがここにいるのは偶然だと思ってる?」

ミクは惚けるように

「だってご近所さんじゃん」

と答えた。

ユウキは焦れるように

「そりゃそうだけどさ、

 いつも偶然にしちゃ

 タイミング良すぎるとかって思わない?」

と言った。ミクは薄々気づいていた。

ユウキが夜に限って

駐輪場に様子を見に来てくれてることを。

それを知っていて

「え、まさかストーキングしてたー?」

ユウキの顔を覗き込みながら

からかうように言った。

「つ、つけてたわけじゃないけど…」

ミクは、バツの悪そうな顔をしてそう答えるユウキが

かわいらしく見えた。

「冗談よ。でも、こんなストーカーなら大好き!」

と言ってユウキに抱きついた。

ユウキもミクの身体を抱きしめた。そして

「やり直そう」

と耳元で囁いた。

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