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【書籍化】すべてを奪われた少女は隣国にて返り咲く  作者: 狭山ひびき
第二部 すべてを奪われた少女は隣国にて返り咲く

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人事表の違和感 1

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『ちょっと遅れたけど、誕生日おめでとうサーラ!

 今年は直接おめでとうが言えなくて残念だけど、安全第一だもんね。

 あたしのところにもまだ、サーラを知らないかって訊ねてくる人が来るの。

 もちろんあたしは、知らないわよって答えるけどね!

 閉めているポルポルの前にたたずむ人を見たってルイスも言ってたし、もう少し避難していたほうがいいと思う。


 そうそう、サーラが気にしてた神の子だけど、相変わらず下町の北のあたりに多く出没しているみたいよ。

 ルイスにも頼んで何か情報を仕入れたら教えてもらうようにしているんだけどね、相変わらず奇跡を起こしたり、人の人生相談に乗ったりもしているんだってさ。

 いつ現れるのかはわからないけど、北の方では青いスカーフを巻いている神の子ファンたちが変なネットワークを構築しているのか、現れたら瞬く間に人だかりができるんだってさ!

 一種の宗教みたいな雰囲気になってきて、ルイスがちょっと怖いって言ってたよ。

 最近では神の子がいないときも、ファンの連中が頻繁に集会を起こしたり、セレニテ様コールをしながら大通りを闊歩したりしているんだって。


 この前なんか、神の子ファンと市民警察の間で小さな衝突があってね、ケガ人も何人か出たんだよ。

 南側まではまだ影響が出ていないけど、いつか下街全体が神の子に飲まれそうでなんか怖いよ。

 こういう時サーラがいたら、いい感じに解決してくれるんだろうな~なぁんてね。


 じゃあ、また手紙書きます。

 早く会いたいよ。

 愛をこめて、リジーより』



 マルセルが持ってきてくれたリジーからの手紙を読み終えて、サーラはふと、ライディングデスクの奥の窓に視線を向けた。

 明け方から降りはじめた雨はまだ続いていて、暗く重い曇天が広がっている。


(わたしも会いたいよ、リジー)


 他愛ない噂話で盛り上がって笑いあっていた日常が懐かしい。

 返信を書きたいが、この状況で、手紙に何を書けばいいのかもわからない。

 近況はもちろん報告できないし、リジーが面白がりそうなネタも何も持っていなかった。


(マルセルさんが下町に行くまでまだあるし、返事は後にしようかな)


 リジーからの手紙をライディングデスクに収めると、サーラは代わりに、ロクサーヌが調べてきてくれた『不老不死の薬』の使用者と入手ルートの一覧表を取り出した。アルフレッドが写しをくれたのだ。


 そのアルフレッドは、ウォレスとともに仕事中である。

 一階の部屋に作られた仮のウォレスの仕事部屋で城から届けられた仕事や報告書などに目を通しているのだ。城からも何人か文官が出入りしている。

 アルフレッドによると、城の人事はまだ動かされているという。

 ラコルデール公爵家に嫌疑がかけられたのを理由に、さらに第一王子派閥の重用が続いているのだとか。

 シャルからの連絡によると、それは文官だけではなく武官にも言えることらしい。

 先日近衛の長官が第一王子派閥の人間になり、マルセルによると、騎士団にも大勢の第一王子派閥の人間が入ったという。

 もともと騎士団は、第一王子の専属と第二王子の専属で隊が分かれていたので大きく、第二王子専属の隊には大きな変化はみられていないというが、第一王子専属の騎士団はここにきて入れ替えが激しくなっているのだとか。


(それも妙なのよね。もともと第一王子専属の騎士団の多くは第一王子派閥の人だったわけだし)


 入れ替える理由がわからない。

 ロクサーヌが『不老不死の秘薬』の情報を持ってきて三日。

 妙に彼女が去り際に言った言葉が気になっていた。


 ――この件、まだ何か裏があるわ。それは、わたくしたちが考えも及ばないような何かのような気がして……正直、不安よ。


『何か』とは、なんだろうか。

 サーラもなんとなく、裏に何かがある気がしているが、その『何か』が何なのかはわからなかった。

 人事表や貴族名鑑も取り出して、サーラはライティングデスクの上に並べていく。


(こっちが、移動される前の去年までの人事表。そしてこれが、移動がかかった後の人事表……)


 第一王子派閥の第二王子派閥の貴族の名前は覚えた。

 新しい人事表では、第一王子派閥の名前が特に目立つが、気になるのは、もともと去年まで役職についていた第一王子派閥の人間も移動させられている人がちらほらいることである。

 第一王子派閥の中でも、何かの区別や差があるのだろう。

 この区別や差がわかれば、何かにたどり着けるような気がしている。

 試しに、閑職に追いやられた第一王子派閥の伯爵の名前を貴族名鑑で調べてみる。

 けれども、これと言って何か気になることが書かれているわけではない。


(なんでこの人は、同じ第一王子派閥なのに閑職に追いやられたの……?)


 サーラはぐしゃりと、前髪をかき上げた。




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