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【書籍化】すべてを奪われた少女は隣国にて返り咲く  作者: 狭山ひびき
第二部 すべてを奪われた少女は隣国にて返り咲く

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婚約 1

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 城での生活は単調に思えてそうでもない。

 何故なら一年を通していろいろな行事があるからだ。


(明後日は生誕祭、っと)


 二月一日は第一王子セザールの誕生日である。

 明後日で二十一歳になる外見だけは穏やかそうな王子とは、あれから会っていない。

 ジャンヌから、サーラがセザールに連れ出されたと報告を受けたウォレスがやたらと警戒しているからである。

 セザール本人にも、うちの侍女にちょっかいを出すなと文句をつけたらしい。


(セザール殿下は笑ってかわしたらしいけどね……)


 とはいえ、セザール本人からは「見逃してあげる」と言われている。つまり辞職に追いやろうと圧力をかけてくることはないだろうから、それほど気にしなくともいい気がしていた。

 セザールが何を考えているのかはいまだ謎の部分が多いが、弟が可愛くて仕方がないあの第一王子が、本当の意味でウォレスの敵に回ることはないと思う。


(セザール殿下がウォレス様を溺愛しているなんて聞いたら、ウォレス様嫌がりそうだけどね)


 サーラの勘では、セザールの目的はウォレスを蹴落とすことではない。

 それとなく協力してウォレスにとって都合のいい結果になるように調整をかけている気がした。

 そう考えると、以前の沼池が燃えたという一件も、面倒ごとを押し付けたのではなく、ウォレスの評価を上げるために一役買ったということになる。


(ま、真意はわからず仕舞いだから、わたしがそう思いたいってだけかもしれないけど)


 セザールを敵に回すと厄介だ。あんな一癖も二癖もあるような男とはやりあいたくない。

 ウォレスが執務室に行っている間にジャンヌとともに彼の部屋の掃除をしていたサーラは、ふと、窓の外にセザールの姿を見つけた。

 セザールの隣には、柔らかく波打つ銀髪の女性が歩いている。


(……レナエル?)


 着ているドレスの豪華さと、数名の侍女を連れて堂々とセザールの隣を歩けることから考えるに、あの後ろ姿はレナエルに間違いないだろう。

 城に来て、サーラははじめてその姿を見た。

 どくりと心臓が大きく脈を打つ。

 滅多に自室から出ないと噂の第一王子妃だ。普段の彼女が何をしているのかの情報は、ウォレスの陣営にいれば特に入ってこない。


「あら、珍しいわね」


 サーラが急に動作を止めたのが気になったのか、ジャンヌがサーラの隣で窓外を見下ろした。


「セザール殿下は歩き回るのがお好きだけど、お妃様がお庭に出ているなんて。……雪の日なのに」


 ジャンヌの言う通り、庭は白く彩られている。

 二日ほど雪が降ったりやんだりを続けていたせいで、十五センチ程度は降り積もっていそうだ。


(足場が悪くて寒い庭に、妃を連れだすなんて、本当に何を考えているかわからない王子ね)


 嫁いで来た以上、レナエルはいつ妊娠してもおかしくない。

 兆候がなくとも、一応気を使うものではないだろうか。

 あきれつつも、レナエルをこうして見られたのは僥倖だった。接点を持つどころか姿を見ることすらできない日々が続いていたので気をもんでいたのだ。小さな一歩だが、ちょっとだけ前進したきがする。

 とはいえ、レナエルやフィリベール・シャミナードの近辺を探る手立てを得ない限り、目的には程遠いのであるが。


 じっと見下ろしていると、ふと、セザールが上を振り仰いだ。

 視線が絡んで、サーラはぎくりとする。

 セザールはふっと笑って、また視線を前に戻した。


(……なんだったの、あの顔)


 まるでサーラを挑発したような、不思議な笑顔だった。あの王子は本当にわからない。


(見ていたところで仕方ないわね)


 いつまでも掃除をサボって窓の外を見ているとジャンヌに叱られる。

 サーラは窓から離れて掃除を再開した。

 掃除が終われば、二日後の生誕祭に向けて、ウォレスの着る盛装を準備しなくてはならない。汚れやほつれなどがないかチェックするのだ。


(でも、生誕祭か。……パーティーには、また、ラコルデール公爵令嬢と出席するのかな)




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