めぇリーさん
「もう4時か……早く寝なきゃな」
寝付けない日々が続き、最近はついに2時間睡眠がデフォルト。 ストレスってこんな極端になるもんかね?
水でも飲もうかと、ため息をつきながらベッドから這い出す。 その瞬間、静寂をぶち破る電話の音が部屋中に響き渡った。
「チッ! こんな時間に何だよ~!」
寝れないとはいえ、脳みそは完全に熟睡モードだったらしく、 見覚えのない番号がスマホに光ってても、つい手が勝手に取ってしまった。
スピーカーから聞こえてくるのは、踏切の「カンカンカン」と電車が「ゴォォー!」って通り過ぎる音。
一瞬「イタズラ電話か?」と思ったけど、よく耳を澄ますと、なんか微かに声が混じってる。
《もしもし……私、メリーさん……今、貴方の駅の近くにいます》
「メリーさん? おお、外国人さんですか?」
この時の俺、頭が完全にイカれてた。
だって「メリー」って言ったら、あの出会い厨すらドン引きするリアル凸系お化けしか思い浮かばねぇよ。
こんなスマホ文化も薄いド田舎に外人がいるわけねぇし!
相手は俺の返しに一瞬戸惑ったのか、「まぁすぐ行くから待っててね~」なんて優しく言って、ツーツーって切れちゃった。
「メリーさん、メリーさんねぇ……よし、絶対メイド服着た金髪巨乳美女だ!
寝付けない俺に添い寝サービスってわけか! なら部屋を片付けなきゃ!」
前言撤回。俺、「おかしい」じゃ済まねぇレベルでぶっ飛んでた。
メリーさんが女なのは確かだけど、金髪でも巨乳でもねぇし、 メイドじゃなくて「冥土」に送る方だぞ!
異性との絡みが学生以来だったせいで浮かれまくってる俺に、また電話が鳴る。
「どもども~お姉さん、今どこら辺? 俺、迎えに行っちゃおうか?」
《は? え、お姉さん!? あ~私、今近くのコンビニにいるよ。あともう少しで着くから大丈夫……はい》
「オーケー! 飲み物はあるから気にしないでねっ★」
俺の過剰な好意に、さすがの幽霊も「うわっキモっ!」って引いたのか、何も言わずにガチャ切り。
「フッ! 今日は寝れない夜になりそうだぜ★」
いや、逆に「永眠」コースだろってツッコミは置いといて、また電話が鳴る。 ついに家の前まで来たらしい。
深夜4時なのにテンションMAXでスーツ着て出迎えることにした。
「えーと……どちら様?」
ドア開けたら、金髪どころか髪の毛すらねぇ!真っ白な毛並みで、そもそも人間じゃねぇ!
そこには白い羊がチョコンと立ってて、背中にコンビニ袋まで乗っけてる。
「どもども、こんばんわ~。私、メリーさんの羊でございます!」
声的にメスっぽい。まつ毛も長くて、美女じゃないけど羊界隈じゃモテるタイプなんだろうな。
あ、ごめん、俺でも何言ってるか分かんねぇや。
「メリーさんの羊ぃ!?」
すっとんきょうな叫び声を上げる俺に、羊が「えへへ~、もしかして声聞こえづらかった?電車の音にかき消されちゃってたもんね~テヘッ★」だって。
目を閉じれば声が可愛いから、ドジっ子キャラで脳内補完できるレベル。
ケモナーなら即ベッドイン案件だろ。いや、そっちじゃねぇ! なんで羊が俺ん家に来てんだよ!
「羊さんが何の用で?」
「実は閻魔さんから『寝不足の人間がいるからしばらく面倒見てやれ』って言われて。ご主人様のメリーさんは永眠させる担当なんで、代わりにペットの私が行くことになりました~」
申し訳なさそうに言うけど、俺の目の下見て「うわっ、すげぇクマ……」ってボソッと漏らすのやめろよ! 閻魔大王ってそんな仕事まで請け負ってんのかよ! 寝不足は認めるけど、なら可愛い女の子の一人でも縁結んでくれって!
「まぁ、とりあえず上がってください――」
結論から言おう、マジで爆睡できた。
この羊、枕になって子守唄まで歌ってくれて、 コンビニ袋の中身は俺用のホットアイマスクだったし、至れり尽くせり。
素晴らしい!……けどさ、やっぱり思うわけよ――
――永眠でもいいから、メリーさんの膝枕で寝たかったぜ!!――
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