暇な魔王は痔になりたくない。(旧:魔王は暇だった。そして痔にはなりたくなかった。)
本日もよろしくおねがいします。短いです。
私は魔王。私を倒しにやってくるものを待っている。
・・・
待ってるんだ。
・・・
来ない・・・。このまま座り続ければ痔になってしまう!!
ここは一つ、城の周りをキレイにしよう。
「あー、ちょっと城の外に行ってくる。その間頼む」
と私は動く石像ガーゴイル宰相に言い残し、城を出た。
城の外に出るのは久しぶりだなぁ。
相変わらずといった感じだ。私の見た目は人間に角が生えて、サタンって感じの羽が生えているくらいるものだが?
なんか城の外には私のファンクラブなるものがあるらしい。
そんなものに心血を注ぐならば、より精進して欲しい。
ああ、同志の白骨死体が散らかっている・・・。
同志を悼み、墓を作って弔おうという思いはないのがろうか?
私はその白骨死体を集め、共同墓地という名の白骨死体の山を築いた。
「流石は魔王様だな。俺達にはできない。あんな恐ろしい感じのデコレーション!」
違う!‘共同墓地’だ。
私は進む。魔界というのは散らかっているなぁ。ちょっと整理整頓をしながら歩こう。
こうして、行く先々で‘共同墓地’という名の恐怖の白骨死体の山を築いた。
途中で珍しい、人間に会った。
「魔界に何用で?」
「うーん、自分‘勇者’みたいなので、‘魔王’を倒しにきました」
ほう、この前途ある若者が私がずっと待ち望んでいた若者か!!
喜び、もてなさねばなるまい!
「ここであったのも、何かの縁だ。共に飲もう!」
そうして、‘魔王’と‘勇者’が魔界の飲み屋で酒を飲み交わした。
「いやね、自分だっていきなり『君は勇者だから、魔界に行って魔王を倒してこい』とか言われるんですよ?わけわかんないですよね。俺だってそのとき一介の農民ですよ?収穫をひかえた農作物が待っているのに、命懸けて戦ってこいって無茶ぶり、酷くないですか?」
「あー、わかる。私もずっと魔王だからって玉座に座らされて勇者待ち。殺され待ち?それなくない?ずっと座ってるってお尻に悪いでしょ?痔になるのは嫌だよ。だから、ブラブラしてたんだけどさぁ」
「あ、お兄さんが‘魔王’ですか?嫌だなぁ。酒を酌み交わした人を殺すのって」
「お兄さん・・・。私はこれでも見た目よりずっと年取ってる。えーと、2000才くらい?数が大きくなってから数えるのが面倒になってなぁ。お兄さんかぁ」
「そこ、多分ツッコムとこじゃないですよ。おじいさん?」
「おじいさんは嫌だなぁ。お兄さんで。魔界ではこれでもファンクラブあるぞ」
「あー、イケメンですよねー」
「イケメン?」
「面がイイとかイケてるメンズ、みたいな?」
「なるほどな。勉強になった。あ、殺す?あー、君にはまだまだ無理だろう(笑)経験の差がどうしてもでるなぁ」
「くそぅ。これじゃ、何しに魔界に来たのかわからないじゃないか!農作物はもうちょっとで収穫できそうだったし、地味に幼馴染とイイ感じだったのに!」
「若いなぁ。幼馴染と恋仲?いいねぇ。でも魔界に行けって言われちゃったんだ?」
「そうですよ!」
「‘勇者’殿もイケメンだし、すぐに魔界でファンクラブが出来るだろう?魔界で暮らさない?『魔界』って言われてるけど、人間界であぶれた種族がいろいろ揃ってるだけで、害はない。それでも、私を殺したかったら私のファンクラブの会員をまずは相手にしないとな。彼女らはなかなか手強いぞ?」
「そうですねー。今戻っても、『魔王を殺せなかった勇者』と烙印が押されてみじめな生活を送ることになりそうですし」
「うわっ、人間コエ―っ」
「魔界で生活するのもありですね。日光当たる土地あります?そこで細々とでも農業します」
「収穫期の農作物に未練があるのか・・・。まぁ、土地はあるから、頑張れよ。お前が作った農作物を食べてみたい」
「めちゃくちゃウマイですよ?」
「楽しみにしてる」
こうして若者と別れた。待ち望んでいた‘勇者’にも事情があったんだなぁ。と思う。
土地とか、宰相に手配するように頼もう。
あー、純粋に私を倒しにくるものはいないかなぁ?
読了ありがとうございました!!
魔王もたいへんなんですね。