全ての想いは山札(デッキ)から
初めての作品ですので、誤字脱字、意味不明な言い回しは目を瞑っていただけると幸いです。
とある会場はとてつもない熱気に包まれていた。
飛び交う歓声と、熱い眼差し。その中心では2人の冒険者が戦いの火蓋が切られるのをじっと待っていた。
1人は長く赤い髪を後ろで束ね、武道着を見に纏い精神を統一させている。名前はラン、冒険者の中でもトップに君臨する女性だ。
対するは、どこにでも売っていそうなTシャツと動きやすそうなスウェットをきた白髪の男、リベラ。
リベラとしてはどうしてこうなったのか、見当もつかない。だがトップの冒険者と手合わせできるとなれば心躍るものがあるのも頷ける。
「どうして、僕と戦ってくれるんですか?」
リベラはランに問いかけた。だがランからの返答は味気ないものだった。
「どうしてか、理由は自分で考えてみて」
腑に落ちないが、やれることをやるしかないと気合を入れた。
会場にはトップ冒険者ランの動きを見たいと駆けつけた多くの人が試合の開始を待っていた。対戦相手のリベラにはブーイングと疑念の声が届く。
試合開始時間になり、ジャッジから準備の合図が鳴り響く。
ランはおもむろに腰のホルスターからカードを5枚取り、空高く投げる。すると空中のカードは煌めくと同時にランの手足と体に取り込まれていった。
「あなたも早くして」
ランからの叱責にリベラは焦り、ホルスターからカードを地面に落としてしまう。
「あ、あぁ、散らかっちゃった。」
あたふたする姿に観客からは笑いと嘲の声が飛ぶ、しかしランはじっとリベラを見つめている。
「解放」
と一言だけ発したリベラは準備が整ったことを示すように構えた。
ジャッジから開始の合図が飛ぶと同時に、ランはリベラとの距離を縮め、拳を腹部へ叩き込む。続けざまに怒涛の乱舞を常人を超えたスピードで繰り出す。準備中に体に取り込まれたカードの能力だ。
ランの攻撃に盛り上がる観客、しかしランは焦っていた。
(どうして、準備では何もしてなかったのに、私の攻撃に対応しているの)
そう、リベラはランの攻撃に対し、全て対応していた。
「もういいですかね。」
リベラの発言に寒気がしたランは距離をとった。が、それが運の尽きだった。急に背後に現れたリベラから一発もらい地に伏したのだった。
会場は静まり、聞こえてくるのはジャッジからのリベラの勝利宣言。
試合終了後、ランとリベラは居酒屋で語り合っていた。
「どうして、カードを使ってないのに私の攻撃に対処できていたの?しかも最後は背後に突然現れたし」
「いや、ちゃんとカードの効果ですよ。一枚準備の時使いましたし」
「ふーん、どういう効果なの?」
「こればかりは言えませんね」
「どうしても?」「どうしてもです」
「じゃあ、自分で探るから一緒に冒険しよう!」
「え、いやぁ、、そのぉ、」
「決まりね!」
半ば無理矢理に結成された2人のパーティー。今後様々な活躍と名声を世界中に響かせ、多くの冒険者たちを虜にしていくのであった。