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平安貴族の侍従・竹丸の日記  作者: RiePnyoNaro


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秘匿の流言飛語(ひとくのりゅうげんひご) その3

若殿が


「おそらく、仲間内では指定日が分かっていて指定日のその時間にその場所に行けば、何かがあるんだろう。」


「仲間内の秘密の会合がそこで行われるという事ですか?路の真ん中に人が集まるんですか?(うし)(1~3時)、(とら)(3~5時)、()(21~23時)って夜中ですよね。」


若殿(わかとの)はう~~んと悩んだ。


そして


「貼り紙が貼られる日がおそらくその会合日だろうから、貼り紙が貼られた日の指定時刻に指定場所にいってみる以外に方法はないのかも。」


となった。


私は今まで分かったことを親切にも風聞丸(かぜききまる)に教えてやった。


風聞丸(かぜききまる)は嬉しそうに


「じゃあその日がきたらオレも誘ってくれよな!その秘密の会合に参加したいから!」


と目を輝かせていた。


・・・のに、数日後、風聞丸(かぜききまる)に会うと風聞丸(かぜききまる)は急に態度を変えて


「あぁ!竹丸。この前の話な、オレはもう抜けるよ。興味がなくなったからな。お前たちだけで行ってくれ。」


風聞丸(かぜききまる)らしくない。


私は何かあったのかな?と不思議に思った。


それに引きかえ私は益々興味が湧いて、『絶対秘密の会合に出席してやる!』と路を通るときはいつも新しい貼り紙が増えてないかをキョロキョロと屋敷の壁を見まわして歩くのが癖になった。


そして何回も同じ貼り紙を見ているうちにおかしなことに気づいた。


前は気にしなかったが、全ての貼り紙の端の方に朱墨で『印』と印字してあることに気づいた。


『印』という印字?って何を表してるの?と疑問がわいた。


その秘密の会合の主催者が『印』という名前なの?組織名なの?


 そして数日後、・・・ついにその日が来た。


私がある屋敷の壁に今までなかった貼り紙


『虎三黒三』


を見つけた!キタ~~~~!!とテンションが上がり若殿(わかとの)早速(さっそく)解読して目的地へ行こう!と決まった。


『虎三黒三』が示すのは『西三北三』のことだから、「三条大路」と「道祖大路」なのでそこへ行くと次の文『ll二青二』があった。


『ll二青二』が示すのは『南二東二』のことだから、「八条大路」と「木辻大路」なのでそこへ行くと次の文『鳥四白五子』があった。


『鳥四白五子』が示すのは『南四西五』のことだから、「六条大路」と「朱雀大路」なのでそこへ行ってみると・・・・


今はまだ()の刻(23~1時)じゃないので、何の変哲(へんてつ)もなくいつもとおなじ風景。


若殿(わかとの)()の刻にもう一度来てみよう!という事になった。



 その夜、藤原邸から半刻(はんこく)(1時間)もあれば十分つく距離だが、私は一刻(いっこく)(2時間)も前からソワソワして若殿(わかとの)()かして早めに藤原邸を出た。


途中、風聞丸(かぜききまる)がせっかくのチャンスに参加しないことと、貼り紙に朱色の『印』の印字がしてあることを若殿(わかとの)に話すと、若殿(わかとの)が考え込んで


「わかったぞ!そういうことか」


と何か思いついたようだが、もうすぐその場所につけばわかることなので私はツンとして


「もうすぐわかるので、何も言わなくてもいいです!」


とソッポを向いた。


ワクワクして「六条大路」と「朱雀大路」の交差点につくと、そこには一人の男が立っていて、手には紙の束を持っていた。


周りをキョロキョロしても誰もおらず、私がキョトンとしてると、若殿(わかとの)五十文(ごじゅうもん)を手渡し、


「この銭で一部買ってこい。」


と言うので訳が分からないがその男に近づいて五十文(ごじゅうもん)を出し


「一部ください」


というと、その男は


「一部、十文(じゅうもん)だよ」


と、文字が書いてある紙一枚と十文(じゅうもん)を引き換えた。


私はそれを読みながら若殿(わかとの)に近づくと、


「これを買うための暗号だったんですか?」


とその紙を見せた。


その紙には等間隔に文字が並んで


『ちゅうなごん しゅしょくにふけり こいびとのにょうぼうとまちがえて xxのにょうごとかんけいをもつ・・・・』


などひらがなで中納言の流言飛語(ゴシップ)が書いてあった。


私はもしかして大殿(おおとの)が言ってた流言飛語(ゴシップ)出所(でどころ)はこの秘密(ひみつ)流言飛語(ゴシップ)紙の発信なの?と合点して、


「そういうことですかぁ~~~!」


と言うと若殿(わかとの)がヒソヒソと


「あいつを捕まえて何を企んでいるか話を聞こう」


流言飛語(ゴシップ)紙の売り子をチラリとみるとその男はこちらを見てヤバいと思ったのか、慌てて逃げ出した。


「あっ!待てっ!」


若殿(わかとの)と私が急いで追いかけたのだが、その男が角をちょこまかと曲がりくねって走るので(つい)には見失ってしまった。


「どうするんですか?流言飛語(ゴシップ)の発信元がまたわからなくなったじゃないですか!」

(その4へつづく)


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