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平安貴族の侍従・竹丸の日記  作者: RiePnyoNaro


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供犠の雨乞い(くぎのあまごい) その2~幼女誘拐犯候補の一人目に会う~

『笛』といっても、細長い竹の筒じゃなく、私は過去に見た事もない独特の形をしてる。


陶器でできてて、握りこぶしぐらいの大きさで、鳥の形。


円筒形の長い尾の先に穴が開いてるので、そこから息を吹き込んで音を鳴らす『笛』だろうという判断。


よく見ると鳥の背中にも穴が開いてる。


色は土色で、赤い塗料で蛇?ミミズ?のようなニョロニョロが側面に一匹ずつ描いてある。


ニョロニョロの先は口を開けてるように見える頭に羽が三枚はえてるように見えるから、蛇じゃないかもしれない。


若殿(わかとの)怪訝(けげん)な顔で


「不思議な模様だな。

浄見の持ち物の中で、これは見たことがないな。

いつ手に入れたんだろう?」


呟くので、


『え?この人、姫の持ち物を全部記憶してるのっ?!キモッ!筋金入りの粘着不審者(ストーカー)??!!』


と思ったが声には出さず


「帝か誰かにもらったんでしょ?

さ、早く弾正台(だんじょうだい)に行きましょっ!」


 その後、弾正台(だんじょうだい)を訪れ、巌谷(いわや)に話をつけ、『声かけ事案』(*作者注1)として訴えがあった犯人男性三人分の情報を入手(ゲット)した。


『宇多帝の姫の誘拐!』を疑い、興奮しきって血走った目で歯ぎしりしてる若殿(わかとの)と私は、一人目の晴蕪(はれむ)の屋敷へ、馬で駆け付けた。


晴蕪(はれむ)はさる公卿の八男坊で、陰陽寮で陰陽道に基づく呪術を学ぶ陰陽生(おんようのしょう)で、本人曰く


「幼いころから(あやかし)や物の()が見える(たち)だった。

少し訓練をつめば呪力でそれらの妖怪を(はら)うことができた。」


らしい。


容姿はというと、顔の造作(ぞうさく)美男子(びだんし)といえなくもないが、締まりのないだらしなくゆるんだ口元は、細い弓形に剃り整えられた眉と違って緊張感が無く、下品な印象を受けた。


主殿で対面した若殿(わかとの)に向かって、小ばかにしたような愛想笑いを浮かべ晴蕪(はれむ)


「あなただけに真実をお話しましょう。

実はオレの前世はさえない庶民だったんだ。

『会社』という大きな組織のちっぽけな歯車として、奴婢(ぬひ)のように死ぬまでこき使われて『過労死』したんだよ。

あの世にいくと天の神様が憐れんでくれてね、この平安世界の裕福な公卿の八男坊に転生させてくれたんだ!」


常にニヤけてるのでホントなのかウソついてるのか見分けがつかない。


からかってるようにも見える。


若殿(わかとの)がこめかみに青筋を立ててギロっ!と睨み付け


「なぜ東市で幼い少女に声をかけたんだ?!」


晴蕪(はれむ)が肩をすくめ


「ああ、それは・・・・・」


と言いかけると、丁度そこに現れた菓子と白湯を給仕しにきた侍女と思われる美少女が


「ご主人さまは常日頃から人助けをなさっているのです。」


美少女が白湯と菓子を若殿(わかとの)に配りながら微笑みかけて続ける。


「私も元々は貧しい農家の娘でした。

班田(はんでん)(口分田)は利稲が払えず地主に取り上げられてしまい、両親は他人の田畑を耕す小作人として生計を立てておりましたが、私がまだ幼いころ、育てるのに困った両親は私を市で売りに出しました。

ご主人さまは両親の『言い値』の米や銭を支払い、私を引き取ってくれたのです。

市では困窮した親が子供らを裕福な商人や貴族に売ることなど日常茶飯事です。」


若殿(わかとの)がピクッ!と口の端を痙攣(けいれん)させ


「で、そうやって引き取られた少女たちは将来どうなるんだ?」


美少女は頬を染め、照れたように首を(かし)げて晴蕪(はれむ)を見つめると、晴蕪(はれむ)が満面の笑みで


「もちろん!引き取った少女は全員、オレの『妻』にして可愛がってるよ!

財力と愛情があれば側室は何人いてもいいでしょう?

まだ学生だがオレは将来有能な陰陽師になる!

これは確実だ!

ここ最近の日照りだって、帝がオレに頼んでくれば、いつでも原因の妖怪『(ばつ)』をすぐに倒してやるさ!

何たってオレには天賦の才能と家柄という立派な後ろ盾があるんだから!」


あまりも大口(ビッグマウス)をたたくので思わずポロっと


「だからって大勢の少女を買って全員『妻』にするなんて、不道徳じゃないんですか?」


晴蕪(はれむ)は私をチラ見して、全然悪びれてない様子で肩をすくめ


「もしオレが買ってやらなければ、女子(おなご)たちはいまだに惨めな労働をしなくちゃならない農民のままだった。

彼女らにとってオレの妻の方がよっぽどましな境遇だろ?!

雲泥の差だよ!」


自慢げに声高に主張する。


そうかもしれないが・・・・・何かキモいっ!!


『妻』って買うもの?


馬か牛と同じなのっっ??!!


若殿(わかとの)がこめかみの血管をピクピクさせ、晴蕪(はれむ)を睨み付けたまま


「妻は何人だ?

確かめたいことがある。

会わせてくれないか?」


あっ!宇多帝の姫が混じってないか探すのっ??!!


でも無理っぽくない?


妻を他の男に簡単に会わせるかな?


晴蕪(はれむ)はギョッ!と驚いたように目を丸くして


「は?全員に会いたいのか?

十二人・・・いや十三人だったかな?

全員となると、今、外出してる者もいるので・・・・」


若殿(わかとの)は苛立ったようにチッ!と舌打ちして


「じゃ十歳以下の少女はそのうち何人だ?」


晴蕪(はれむ)は記憶をたどるような()をとり


「歳は本人の言う事を信じてるけど、十歳以下は今はたしか・・・三人だったかな。

玲子(れいこ)、三人を連れてきてくれ!」


美少女に命じた。


アレ?


でも、直接会わなくても晴蕪(はれむ)の妻になったのが最近じゃなければ宇多帝の姫の可能性は除外できるのでは?


と思ったが、焦りで血眼(ちまなこ)かつ錯乱状態(パニック)になってる若殿(わかとの)には言っても無駄?


玲子(れいこ)と呼ばれた美少女が連れてきた三人の幼女を見て、若殿(わかとの)はホッと安堵し、


「ご苦労だった。

倫理的にどうかと思うが、お前のしていることは違法ではない。

善悪の区別がつかない幼い少女を騙したとしても、現状、お前を罰する法律はない。

だが、東市でお前に声をかけられた少女の親は弾正台(だんじょうだい)に通報していた。

この先、少女にいかがわしい行為を少しでも強要すれば捕まえて罰してやるから覚悟していろ!」


最後は厳しい口調で睨み付けながら言い放った。

(その3へつづく)


(*作者注1:主に18歳以下の子供や女性に対し、誘拐や性犯罪の前兆となり得る「話しかける」「手を引く」「つきまとう」といった不審な行動のこと)


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