妙見菩薩の黄金色(みょうけんぼさつのこがねいろ) その4
懐にしがみつこうとすると、
ヒョイ!
身をかわされた。
チッ!!
舌打ちして睨みつけると
「日が暮れてからもう一度ここへ来よう!あの尼が戻ってくるかもしれない!!」
はぁ?
「なぜですか?」
若殿はニヤッと口の端だけで笑い
「まだ目的を達成できてないからさ!」
宇多帝の別邸で日が暮れるまで、姫と遊んだあと、屋敷を去ろうとすると、姫がジトッと上目遣いで睨み付け
「今日はかえるのがはやいわね!竹丸はずっとソワソワしてるし!どうして?おもしろいことがあるなら浄見もつれていってっ!」
若殿の袖を握りしめて駄々をこねるので、イラっとした私が袖から姫の手をもぎ取り
「急がないと尼が亀の上に座ってた理由が分からなくなるじゃないですかっ!!!手を離してくださいっ!!」
ピタっ!!
空気が凍り付き、若殿が困ったように顔をしかめた。
アレ?
やっちまったっ?!
『亀の上に座る尼』
ってパワーワード?
姫は目を輝かせて食いつき
「何ソレっ!!おもしろそうっ!浄見もぜっ~~~たいっいくっ!」
若殿は渋々承知して、姫を一緒に連れて行くことにした。
昼間の現場まで戻ってくると、既に先客がいて、尼が座ってた地面を掘り返していた。
一人はさっきの尼で、もう一人は筒袖・括り袴・萎え烏帽子の見知らぬ中年男性。
尼が上から指示して、中年男性は一生懸命腕を動かして鋤で穴を掘ってる。
さっき掘り返したから土が柔らかくて掘りやすそう。
若殿はその二人から五間(9m)ぐらい離れた場所で立ち止まり、私と姫に
「ここで待ってるように」
と指示して、自分はスタスタと近づいた。
話声は何とか耳をすませば聞こえるぐらいの距離。
せめて大声で話してっ!!
心の中で祈る。
若殿が
「探しているのはこれですか?」
懐から何かを取り出した。
あっ!
さっき拾ってネコババしたやつだっ!!
こっちからもよく見えるよう、わざと高く持ち上げて振り回してくれた。
金色の七寸(21cm)ぐらいの・・・箸?
がなぜ路の真ん中に落ちてるの?
尼がその金色の箸を見て
「そ、そうですの!先ほどここで落としたものですわ!あなたが拾ってくれていたんですね!ありがとうございます!」
手を出して受け取ろうとすると、若殿が懐に戻し
「いいえ。あなたのものじゃありません。このお宅のものです。」
現場の路に面して門を開いていたお屋敷を指さした。
「は?何を仰るの?このお屋敷の方がここに箸を持ってきて落としたと仰るの?」
若殿がウンと頷き、
「貴女の真の目的はこの箸ではなかった。ついでに言わせてもらうと、穴を掘っている御仁?そこに砂金は無いよ。亀はいたけどね。」
穴を掘っている男が焦ったように
「何ぃ?!!お前が横取りしたのかっ!!!こん畜生っっ!!返せっっ!!泥棒めっっ!!オレたちのものだぞっ!!」
唾を飛ばして罵った。
はぁ??!!!
金色の箸の次は砂金??
が出る予定だったの??
どーゆーこと??!!
(その5へつづく)