表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
271/367

妙見菩薩の黄金色(みょうけんぼさつのこがねいろ) その3

尼は振り向いて差し出されたものを確認すると慌てて両手で受け取り


「あらっ!まぁ!大事なお道具を落とすなんてっ!!仏に仕える身ですのにっ!!なんてお恥ずかしいことかしら!」


若殿(わかとの)が受け取る腕をチラッと見て、何かに気づいたのか眉を上げ面白そうに、


金剛鈴(こんごうれい)と、宝珠鈴(ほうじゅれい)を二本も持ち歩いてらっしゃるので?今日はどこかで法会などに出席されたんですか?数珠や経典・・・は(たもと)に入れてらっしゃる?」


尼の(たもと)は重そうに垂れ下がってて、まだ重い何かが入ってそう。

焦ったように引きつった笑みを浮かべ


「そ、そうなんですっ!!ある貴族のお屋敷の法事でお経を読みましてね、数珠?経典?はそうです。(たもと)に入れておりますわ!オホホッ!では先を急ぎますので、失礼します!!」


さっきまでジッと座り込んでたのが嘘みたいに小走りで立ち去った。


若殿(わかとの)はその後姿(うしろすがた)を見て、ふむっ!と唸ると、尼が突っ伏していた地面の表面を少し手で()で土をよけて、キラっと光る何かを掴んで取り出し、(ふところ)にしまった。


何っ?

何か拾ってネコババしたっ??!!


周囲を見渡し、まだその場に(たむろ)ってた人々に


「誰か!近くで(すき)(くわ)を借りてきてくれ!この下を掘り起こしたいんだ!手伝ってくれるとありがたい!」


すぐに近くの農家から(すき)(くわ)を持ってきてくれた人たちと穴掘りをはじめると、三尺(90cm)も堀ったあたりで


「あっ!これかっ!!なぜだっ??!!なぜこんなところに?」


ある奇妙なものが土の中から出てきた。


若殿(わかとの)も想像してないものだったらしく、手が土だらけなのを忘れて、腕を組み、あごに指を当てて


「う~~~~ん。なぜこんなものがあるんだ??!!!てっきりアレが出てくると思ったんだが。」


首を捻った。


私も穴を覗き込み


「えぇっっ!!!なぜこんなものがここにいるんですか?!!あの尼さんは知ってたんですか??!!知ってて上に座ってたんですか?それとも彼女が埋めたんですか??でも何のために??!」


はぁ??

意味がわからないっ!!

全く(もっ)て謎だらけっ!!


尼が座ってた土の下から出てきたのは、半尺(15cm)より少し大きいぐらいの


一匹の(イシガメ)だった。


「可愛い~~~~!なぜ土の中にいたんでしょう?」


若殿(わかとの)は肩をすくめ、何でもないという風に


「冬眠するためだろう。この辺の側溝は幅が広いし水もあるから泳いできて土の柔らかいここで冬眠することにしたんだろう。それは不思議でも何でもない。不思議なのはあの尼がなぜここに座っていたのか?だ。」


確かに~~~!!

尼は亀がこの土中にいることを知ってたの?

知ってたとして、なぜ上に座ってたの?

何の目的で?

亀が出てくるのを待ってた?

じゃないなぁ。

だって秋に冬眠して春に出てくるから!


偶然亀の上に座ってたのならなぜ?

お告げ?

亀が助けてって訴えた?


確か、妙見菩薩(みょうけんぼさつ)って、甲冑を着けた武将形で玄武(亀と蛇の合体した想像上の動物で北方の守り神)に乗る像があったよね?

あの尼ってもしかして妙見菩薩(みょうけんぼさつ)並みにすごい人??

神通力(じんつうりき)バリバリ?!!


もう一回あの尼に話を聞きたいっ!!


結局、若殿(わかとの)は亀を埋めることはせず、側溝に放した。


「取っとかなくて大丈夫ですか?!大事な亀かもしれませんよ!」


「見たところ普通のイシガメだ。狭い場所に閉じ込めておくのは可哀想だし、路の真ん中だと踏み固められて出られなくなるかもしれない。放してやれば、別のところに穴を掘ってもぐるだろう。」


亀の立場になってみると、冬眠中を邪魔され掘り起こされてまた寒い娑婆(シャバ)に放り出されるなんて、迷惑千万っ!

でもまだ気温は高いしきっと今から冬眠し直しても大丈夫!

ガンバレっ!!亀っっ!


「でも、あの尼は一体何のために座ってたんでしょうね?発作っていってましたけど、ちょうど亀の上で?そういえば、若殿(わかとの)はなぜここを掘る気になったんですか?あっ!!光るものをここから拾って(ふところ)に入れたのを見てましたよっ!!アレのせいですねっ!!何ですかっ!!見せてくださいっ!!」

(その4へつづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ