終局の双六(しゅうきょくのすごろく) その3
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<(盤)双六の規則>
・一マスに六個以上の石は置けない
・敵石が二個以上ある『一荷』の状態のマスに自石を置けない。自石が一個~四個あるマスにはおける
・敵石が一個あるマスに自石を置くと敵石は『ふりだし』(双六盤中央のマス目のない場所で、石がスタートするマス付近)に出すことができる(『石を切る』という)
・二つの賽の出目により一つまたは二つの石を動かすことができる。(一つを動かす場合、出目の通りに二回にわけて動かすこと)
・全ての自石を一荷の状態で内地に格納できれば勝ち
・後戻りはできない
<*この問題に共通の規則>
・自石は白石〇である。この回で白石を全て一荷状態で内地に格納できるとする。
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答えを書いた紙を姫から受け取り、宇多帝の別邸の東門を出てすぐ、答えの紙を『悪者』に渡して、じゃなく、自分の袂に入れ、次の紙を懐から取り出し、さも今帰ってきたかのように、東門を入り、姫のいる北の対の屋へ行く。
姫に問題を書いた紙を手渡し
「この問題が最後らしいです。これを解けば、悪者は若殿をすぐに返してくれるそうです。」
若殿もう仕事終わったかなぁ~~~?
大内裏の右近衛府で仕事してるはずだから、そこへこの解答を持っていけば私の役目は終わりのハズだが。
姫に今日の午後、ここで一緒に遊ぶ約束をしてたのに、急な仕事でこれなくなったからって、わざわざこんな時間つぶしを考えるなんて!
よっぽど姫に
「嘘つき!!」
って思われたくないんだろうなぁ。
でも仕事だし、その聞きわけがないほどワガママじゃないけどなぁ。
若殿が
「浄見が約束してたことを忘れてしまうほど私を心配して、問題に没頭してくれればいいんだが・・・」
顎をさすりながら、困った顔で呟いてた。
それにしても約束をすっぽかすという失態を、何とか謎解きのワクワクで穴埋めしようと気を使って、若殿は慌ててこの『詰め双六』の問題を作った。
っってどんだけビビってるの?
たかが六歳の小さい女の子に??!!!
上手く嘘ついてごまかせばいいじゃん!!
『悪者に誘拐された』は上手いウソとは到底思えないけど、大丈夫?
全く!・・・・今からこの調子じゃ先が思いやられる。
大人になった姫にあごでこき使われる若殿なんて見たくないっ!!
威厳もへったくれもあったもんじゃない!
ま、とにかくこれで最後の問題だし、これを右近衛府に届ければ私の仕事は終わりっ!!
関白邸に帰って、収穫したばかりの甜瓜をつまみながらゴロゴロしよっ!!
姫が最後の問題に集中してる。
『
詰め双六その四
〇ィ |
――――――――|
◎ |
――――――――|
◎◎ |
――――――――|↑ 〇を動かす方向
〇ㇿ |この中に白石〇を全て
――――――――|二個以上の状態で
◎ |格納すれば上がり
――――――――|
〇〇〇ㇵ〇ニ |
――――――――*ここから上が
|白の内地。
――――――――|
〇ㇹ |
――――――――|
もんだい・・・・二つのサイコロの出目が『二』と『三』のとき、うごかす石〇はどれとどれ?
』
あれ?
これは一番簡単じゃない?
まずコレを動かした後、コレを動かせばいいし。
何?姫まだ思いついてないの?
ニヤニヤしながら姫に
「もしかして、まだわからないんですかぁ~~?答えを教えてあげましょうかぁ~~?」
姫がイラついた声で
「ダメッ!自分で思いつくからっ!!だまっててっ!!」
あごに指を当てて考え込んでる。
しめしめ。
若殿の狙い通り、問題に没頭して時間が過ぎてるので、姫が退屈する隙がないっ!!
私はこの間に白湯でも飲んでまったり過ごそう。
乳母やが持ってきてくれた白湯をすすり、扇を開いて自分を扇ぎ、ゆったりとくつろぎ、姫がひらめくのを待ってた。
姫はその辺を行ったり来たり、紙を持ち睨みながらウロウロしてる。
「もう教えてあげましょうかぁ~~~?このままじゃ若殿が殺されちゃいますよぉ~~~!」
無駄に圧力をかけてみる。
「うるさいっ!!しずかにしてよっ!!」
イライラがピークの姫は顔を真っ赤にして怒ってる。
「えぇ~~~?どうしてこれができるの?ぜったいムリだよね?どうしても白石がないちにぜんぶ入っていっかにならないよね?」
ブツブツ呟く。
あぁ、きっと、若殿が仕組んだ誤誘導に引っかかってるのね?
よ~~~~く注意して見るとすぐにわかりますよ!!
最初の三問と同じとみせかけて同じじゃないところがありますよっ!!
姫が真っ赤な顔で半泣きになりながら、下唇を噛み締めてるのを見て思わず
「姫、あのね、白石が五こあると思っている場所は・・・・」
言いかけると姫が、
「あっ!!そうかっ!!わかったわ!〇ㇹを二つすすめてもいいのよね?〇ㇵ〇ニのあるばしょは、白石が四つしかないもの!!
ここを五こあるってかんちがいしてたわっ!そのあと、〇ㇿを三つすすめて〇ィといっかにすればできあがりっ!!」
私はパチパチと拍手して正解を祝った。
姫が書いた正解
『〇ㇹと〇ㇿ』
の紙を持ち、早速、右近衛府に向かった。
(その4へつづく)