表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
219/367

難波津の怪異(なにわつのかいい) その7

 数日後、若殿(わかとの)波男(なみお)から『アレを入手できた』との文を受け取り、使いの者をやって波男(なみお)浪花(なにわ)を関白家に招いた。

同時に温子(よしこ)様に文を出して里帰りさせ、ついでに伊勢(いせ)も関白家に招待した。

次郎様はまだ病床に()していたので、伊勢(いせ)が見舞った後、若殿(わかとの)は東の(たい)()に一同を集めた。


いよいよ次郎様毒殺未遂事件と海の妖怪憑依事件の解決を教えてくれる!!

興奮でドキドキが止まらない!


東の(たい)()では若殿(わかとの)一人に対し、左側に温子(よしこ)様と伊勢(いせ)が並び、それに向かい合って浪花(なにわ)波男(なみお)が並んで座った。

私は(たい)()の廊下ギリギリの端に若殿(わかとの)の横顔を見て座った。


若殿(わかとの)は揉み手しながら瞳をキラキラさせて

「では、まず次郎毒殺未遂の犯人をお知らせしましょう。

伊勢(いせ)から次郎へあてた文箱に真栄蔦(まさきづら)と文を入れたのは・・・・」

一同を一人ずつ見つめ、温子(よしこ)様のところでぴたりと止まった。


「私?そうですわね。

確かに絡み合った真栄蔦(まさきづら)に文を結び付けたものを文使いに渡し、伊勢(いせ)からの文だと言って次郎に渡せと命令しましたわ!

文箱?には入れてないわよ!

それがどうしたの?」

温子(よしこ)様がキョトンとして言い放った。


若殿(わかとの)は呆れたようにため息をつき

「お前の文使いは、めんどくさがって伊勢(いせ)からの文も一緒にしてしまえと同じ文箱に入れて次郎に届けたんだよ。

お前が余計な事をしたせいで次郎は毒の(つる)(くず)の根と一緒に煎じて飲んでしまったんだ。」


温子(よしこ)様は思わずアッと大きく口を開き、急いで扇で隠し

「まさか!えぇっっ?!次郎は真栄蔦(まさきづら)の毒にあたって寝込んでいるの?!!まぁ!何てことでしょう!」

焦って心配そうにしてたが

「でも死ぬほどの量を飲まなくて良かったわ!大丈夫なんでしょ?兄上?」

すぐにケロッとして若殿(わかとの)に確認してた。


若殿(わかとの)がギロっと睨みつけ

「お前が伊勢(いせ)の肩を持ち恋文と真栄蔦(まさきづら)を届けようとしなければ次郎は何事もなかったがな。」


でも・・・・まぁ・・・・温子(よしこ)様は良かれと思ってしたことだし・・・・

次郎様も口に入れるものが何かぐらいちゃんと確認してから煎じなきゃ!!!


「では次に、浪花(なにわ)()りついた海の妖怪についてですが・・・」

若殿(わかとの)が話しながら波男(なみお)に目で合図すると、波男(なみお)が立ち上がって、どこかから一抱えもある水瓶(みずがめ)を持って入ってきた。


皆の中央に置き、若殿(わかとの)

「一人ずつ中を確認してみてください。」


波男(なみお)以外の女性陣が困惑しながらも順番に(かめ)の中を覗きこみ

「まぁっ!!」

「えぇっ!!」

「イヤっっ!!」

口を扇で隠しながらも感嘆の声を上げた。

温子(よしこ)様は背筋がゾクゾクしたときみたいに気味悪そうにブルっと身体を震わせてた。

伊勢(いせ)は案外平気な顔で、浪花(なにわ)は目を袖で隠しながらチラ見してた。


いよいよ私の番だ!!

期待と恐怖でドキドキしつつ意気込んで水瓶(みずがめ)を覗き込む。


そこには黒い、遠目で見ればまさにかもじ()(くく)った部分を持ってひっくり返した時のようなものがあった。

一寸(3cm)ぐらいの短い黒い毛のようなものがびっしり生えた数本の黒い脚(?)が放射状に広がり、上下にうねうねと動きながら漂っていた。

一本の黒い脚の長さは一尺(30cm)ぐらい。


何コレっっ!!キモっっ!!

(その8へつづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ