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狐狸の香木(こりのこうぼく) その7

若殿(わかとの)がニヤリと口をゆがめて笑った。

「あれは東国の東海道・東山道へ警備強化のために配置した押領使(おうりょうし)に兵を率いる他、指揮官として戦闘に参加させる権限を与え、その数を増やし中央からも派遣するという政策だ。

つまり予算に多額の税が動く。

それを嫌がった父上は帝が議定で審議させる予定だったその政策を握りつぶそうと、公卿(くぎょう)達を抱き込もうとした。

文での明言は避け『どちらにつくかの判断は匂いをよく嗅ぎとるよう』という意味で香木を贈った。

お前が誘惑された狐、つまり泉丸は帝の手先だ。

帝の政策を父上に握りつぶされないように、お前の届け先に配下の者を先回りさせて受け取らせた。

そのせいで参議たち四人に父上の意向が伝わらなかった。

政策は否決とならず賛否半分に分かれた結果、決定が先送りにされたんだ。」


う~~~ん、つまり大殿(おおとの)公卿(くぎょう)八人に届け物をして『オレの意見に迎合しろよ!』と圧をかけるつもりが、私が参議四人に届け物を届けそこなったせいで、東国の警備強化政策の決定が延期になったということか。

関白である大殿は帝とともに裁定者側なので審議には加わらず四人 対 四人で賛否が半分になったのね。

ハッキリ言わずに香木を贈って『匂いを嗅ぎ取れ』なんて大殿(おおとの)はなかなかの古狸(ふるだぬき)


泉丸は帝の手先で文箱の中身を見たことで内容を理解し、参議たちの屋敷に手下を先回りさせて文箱を奪ったのね。


じゃあ結局、私は帝の手助けをしたのであって、朝廷の敵!はどちらかというと大殿(おおとの)じゃないの?

とモヤモヤしたが、結局世の中は権力があるほうが勝つのよね~~!

帝も一人では何もできず、大殿(おおとの)がちゃんと根回しすれば、数の論理で勝つのね!


(vs) 大殿(おおとの)のこの戦いは引き分けだったけどまだまだ続くのかしら?


公卿(くぎょう)達の過半数が帝につくということにはならないのかな?大殿(おおとの)がいる限り。


それにしても、私がそれぞれの家人に確認して文箱を届けなかったのは事実だし、クビになっても仕方がないのかぁと情けない失敗に(へこ)

「泉丸は帝の手下ということはわかりました。

藤原利仁(ふじわらとしひと)に近づき剛腕な武人を確保し東国の警備を強化しようと動いてるんですよね?

帝とはどういう関係なんでしょう?

信頼の厚い、身分の高い貴族の子息でしょうか?

それとも帝の隠し子・・・・?にしては歳は若殿(わかとの)より少し上に見えましたし、宇多帝は若殿(わかとの)より四つ上なだけですし・・・。」


「あの方は光孝天皇の十六皇子、源香泉様だ。つまり宇多帝の弟君だ。歳は私よりいくつか下のハズだが大人びているな。」


へぇ~~~なるほどっ!

どうりで帝と目元が似てると思った!

あの大胆不敵なところや肝が据わった感じはそっくり。

楽しそうに悪行しそうなところがまた魅力的なんだよねぇ~~。

悪の華!って感じ?


泉丸の、正しくは『源香泉』さまの頽廃的な美しさを思い出しウットリ夢見心地になった。

「香木にしても狐狸にしてもなぜあんなに魅力的なんでしょうねぇ~~?」


若殿(わかとの)は冷ややかな横目で私を見てフッと頬を緩め

「どちらも理性より本能を刺激するからじゃないか?」

ポツリと呟いた。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

脳幹にダイレクトに(?)刺激が入る香木(匂い)や動物のかわいらしさにはやっぱり理屈じゃなく本能的に惹かれますよね~~!

時平と浄見の物語は「少女・浄見 (しょうじょ・きよみ)」に書いております。

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