狐狸の香木(こりのこうぼく) その5
若殿が顔を赤らめながら
「いい遊び相手になると思ったんだっ!き、浄見の!!」
一気に吐き捨てた。
はぁ?
何ソレ?
また宇多帝の姫?!
テンションダダ下がり~~~!
まだ照れながら頬をポリポリと掻き
「私が主上と会合している間、浄見が退屈だろ?相手をしてくれる歳の近い童がいれば好都合だと思ったんだよ。文使いにも出せるしな。大人にそんなことをさせれば何か勘繰られて利用されかねないからな。帝の別邸と浄見の存在は世間に公表すべきではない。お前なら単純、いや純粋だから私の命令通りにしてくれるし警戒されず目立たないと思ったんだ。」
ハイハイ~~~。
そうですよね~~~。
私みたいな平凡な童がウロウロしてても誰も気にしませんもんね~~~。
でもこの仕事は楽だし給金もいいしありがたいよね~~。
そう考えると弟妹の世話をしてて良かったなぁ。
ってことは、・・・・小さい子の相手が上手ければ誰でもいいってことで、後釜が見つかれば速攻クビになるかも?
また冷や汗をかいた。
若殿は真面目な顔に戻ってて
「だから、お前を解雇にしてもいいんだが、そうなると浄見のことを一生黙っててもらわなければならない。
ということは、どういう事かわかるか?」
眉根を寄せ、見たこともない真剣な顔でジッと見つめる。
ひぇ~~~~!
も、もしかして・・・・口封じ?ってこと?
「ま、まさか・・・?お安くしときますよ~~!一生分の口止め料!ね、だから物騒な事は言わないでくださいよぉ!!」
目をつぶり首を横に振り
「いいや。口止め料など一文も払わずに済む方法がある。事故に見せかけて・・・・」
そ、そんなっ!!
そんな冷酷なことっ!する人じゃないと思ってたのにっ!!
見た目は冷酷無比だけど、心はあったか~~~い、優しい人だと思ってたのにっっ!!ひどいっ!!
半べそをかきながらブルブル震えている。
若殿が真剣に見つめつつ
「じゃあ四月x日、届け物の配達途中に何があったのかを、ちゃんと話せ。」
ゆっくりと問い詰めた。
(その6へつづく)