閑話4
志願者の選抜は、大学の中教室くらいの会場で始まる。各自の出身はバラバラで、一問終わるごとに、配布されたタグによって別々の新しい教室に案内される。
そして、最後の部屋で突然、君たちは最終選考通過者だと告げられる。部屋が変わる毎に、ランダムに混ぜた訳ではなく、振り落として、誰が合格したか、他の志願者・落選者に分からないようにしているのだった。
選抜に残った候補生たちから男性試験官への質問が幾つかあるが、他は別室なのかという問いには、今回は、全国で、この6人だけだと言われる。
アレックス少佐の軍における先輩たちに当たる初代と二代の部隊も現存するが、実用的な戦闘能力は獲得できていないため、その経験を活かして、その大多数は教官となっている。
そして、教官の中には、魔力の暴走で肢体に影響(石化やひずみ、リュウマチ?)を受けたものもいる。それらの障害を起こさないため、治すための研究班が活動している。
『ここまでの説明で志願を取り消すも良し、研修生として参加するも各人の判断に任せる。どちらにしても、外部から圧力は加わる事は無いから、じっくり考えると良い』
そう言われて解散して、帰宅した。
回答期限の1ヶ月を半分ほど残して、全員が参加を決めたようで、集合場所には、前回以来の6人が集まった。
6人とも魔力があり微弱な発現が見られるのが、共通点と言える。
全員寄宿舎に引っ越して研修を受ける事にした。
研修は、座学と実技に分かれている。
座学演習の中でライニングの説明に、慣性を維持する能力で、これが無いと前線は難しい、逆に言えば、これがあると優先的に前衛だと言われる。振り回された時に、鎧は体表を守ってくれるが、内臓が中でシェイクされると死んでしまうぞ。それを防ぐ能力だ、と言って、水の入ったコップを傾けて、中の水を少し零し、それから、おもむろに全力で振り始める。
あり得ないくらい速く振っているが、水は静止状態から変わらずに、コップに留まっている。
『その腕の振りも慣性の維持なんですか。』
『その通り。筋肉だけでこんなに振ったら千切れてしまうよ』
実技演習の前に、魔女が教えに来てくれる事になっている。
今回、素顔を晒して教えに来ているのは、ジェニー1人だけだ。
短銃を吊っただけの基地内通常制服で部隊の構成や魔術と魔法の違いの概要を説明する。
質問にあった、TVで見る特徴的な仮面は、仮面ではなく、戦闘用フェイスガードにかけたシールドの一種だと言うこと、デザインが異なるのは、魔力による加護の反射によるもので発動時の心理状態、変性意識状態の入り方、意識の持ち方が各自違うからであるし、それぞれの妄想を身に纏っているからと、笑いながら言われる。
和気藹々とした雰囲気で講義は進むが、最後に、『悪いけど、実技はこうはいかないからね』と言われて終わる。