十七話 クランを選ぶということは 選ばなかったものを失うということ
夏のしめった夜風を感じながら 自転車を漕ぐ
どこまでも行けそうな気がしてくる
ゲームの世界のみんな 元気かなぁ
日常のふとした瞬間に思い出す
このままペダルを漕ぎ続けて
MMORPGの世界に入っていけるわけではないんだけれど
会いに行きたくなる 今なにしてるって聞きたくなるんだ
いつまでも一緒にいられるなんて保障はない
それはこの世界でもそう
クランが実装されたなんて些細なことで一緒にいられなくなることもあるんだ
そんな時にね「あの時、ああしとけば良かった」じゃ遅いんだよ
一緒にいる時だからこそできることがあるんだ
離れてしまう前に 悔いを残さないで
うちのグループはクランを作らなかったというのもあって
クランが始まってから大きく人間関係が変わっていった
この先、あまりみんなに会えなくても わたしにはわたしのログレスが続いていて
みんなにはみんなのログレスが きっと滞る事なく続いてゆくのだろうと思う
それがときどき堪らなく寂しい
クランとグループで 上手くいかなくなったことがたくさんあった
PVPで関係が崩れていってしまったり 活動時間がかぶって自然と離れていってしまったり
だけどね そんな中でもずっと変わらずにいて 名前を呼んでくれる人もいて
上手くいかないって嘆くより 自分の周りにいる人に感謝したい
他のキャラを羨まない 僻まない 卑屈にならない
みんなにできることが私にできなくても
みんなに行けるところが私に行けなくても
みんなにあるものが私になくったって 私は私にできることを楽しむ
楽しみの在り様は一面的ではないし 諦めるよりも
私は私の心に従ってMMORPGを楽しみたい
クランを選ぶということは 選ばなかったものを失うということ
大切なものに気付くのはいつも
失ってからだった




