糸切の神になる
美琴「んぅ、ここは?」
見たことのないただっぴろい部屋に、勉強机とベッド、大きな姿見が置いてある。
美琴「え?」
姿見に移された私…であるはずの姿は、私の知ってる私じゃない。
漆黒のように真っ黒だった髪は、綺麗な濡れ羽色に、
光すらともさなかった目は、美しい真紅に。
おまけに、スタイルがとてもよくなっている。
………誰かに自慢してやりたい。
?「あ、目が覚めた?」
美琴「あなたは…糸結びの神様。
ねぇ、私はどうなってるの?
本来なら、願いを叶えてもらった時点で死んでいるはず…でも…」
?「でもどうして、自分が生きているのかって?
それはね、ギリギリでつなぎとめているからなんだ」
美琴「ギリギリでつなぎとめる?」
?「そう。二つの願いを叶える間は、ここ≪天界≫に居続けられるようにね」
美琴「二つ?一つのはずじゃ…」
?「君が願ったんじゃないか。
≪あわよくば、自分を見てくれる人に出会えたなら…≫って」
美琴「っ!」
?「だから君を、僕の花嫁として迎えようと思ったんだ」
美琴「は、花嫁っ?」
花嫁とは、女子の誰もが望む称号。
私も小さい頃は望んでたけど、和葉の背中を見て、あきらめちゃったからなぁ。
美琴「…渋々迎えなくてもいいんだよ?
私、命二つもないから代償は払えないし…
それに、神様にも花嫁ってあるの?」
?「あぁあるさ。
ちなみに、二つ目の願いは、美琴を、命と読んで叶えたんだ。
実質今のお前は名無しだな。
それに、渋々なんて心外だ。
俺はお前が好きだから、花嫁にしようと思ってるのに」ムスッ
あれ、拗ねた?
美琴「わ、分かったから。
ていうか、名無しなんだ、今の私…なんかショック…」
?「名前は今から考えるんだ。
神の嫁は神って決まってるから、何の神になるのかも決めろよ。」
美琴(仮)「そんな決まりが…
ていうか、神様って、なれるものなの?
こんなに簡単に…」
?「それは、今のお前が特別な状態だからだ。
言ってしまえば、魂だけの状態だな。」
魂だけの状態は特別なんだ…
?「で、何の神になるんだ?
あと名前と。
さっさと婚約がしたい。
早くしてくれ」
何こいつ…
美琴(仮)「あなたの名前は?」
?「俺…僕は伊織だけど…」
美琴(仮)「今更取り繕ったって遅いよ。
俺だの僕だの、どっちかに決めたら?
あ、私詩織にするね。
なんか似てて、特別な感じがするから」
伊織「特別………
分かった。
で?何の神になるの?」
これが素なんだ…
なんかかわいい…
詩織「そーだなー。
っあ、≪糸切の神≫‼
私、≪糸切の神≫になる‼」
パァァァァァァァァァァァァァァァァ
何これ…
手に、印?
伊織「その印が、神である証拠だよ。
自分の勢力印的な感じの」
詩織「へぇ、で、私これからどうしたらいいの?」
伊織「とりあえず………………婚約書を出しに行こう‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」
詩織「え、えええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」