糸結びの神様に会う
チュンチュン
美琴「朝…か」
寝ても覚めてもここは忌々しい家。
縁が切れればいいのに。
はぁ。
神様にでも願えればな。
でも、縁切りの神様なんていないし。
残念。
今日は儀式の日。
儀式は、神埜家の長女が巫女として舞を舞いながら神様に祈りをささげるといった、
なんとも簡単そうなものだ。
…でも、舞はめちゃくちゃきつい。
死にそうになるぐらいにきつい。
はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いやだ。
こんな家のためになんて祈りたくない。
舞いたくない。
こっそり不幸を願ってやるか?
でもそれじゃぁ後々、
父「巫女のせいで、災いが起こった」
だの、
母「巫女は悪い奴だ」
だの、
和葉「おねぇちゃんが無能なのよ」
だの言われそうなのでやめておこう。
あぁ、
憂鬱。
家の人1「おい、
儀式の時間だ。」
美琴「はい、ただいま。」
さぁ、地獄の始まりかな。
♪~~~
音楽に合わせて舞う舞は、さっきも言ったとおり、
超がつくほどきつい。
家の人2「下手くそだなぁ」
家の人3「ほんとほんと。
こんなので良いなら、俺の娘でもできるぜ。」
和葉「ほんと、おねぇちゃんへったくそだなぁ。
あたし、恥ずかしいよ」
祐樹「あんな奴が和葉の姉なんて、信じられないな。
和葉のほうが器量よしで賢いもんな♪」
和葉「ふふ、うれしい。
ありがとう祐樹♪」
人が舞ってるときにイチャイチャしないでほしいな。
バカップルが。
「祐樹」というのは、
和葉を花嫁に選んだ鬼。
つまり、世界の王者である。
ちなみにフルネームだと鬼山祐樹だ。
鬼山カンパニーは、世界有数の特大会社である。
あぁ腹が立つ。
神埜家のために舞ってるってのに、
その神埜家の人に罵倒されるとは。
………もういいや。
不幸を願ってやる。
そのあとでこの家にいたら、ひどい待遇を受けることになる。
なら、糸結びの神様に願えば、殺してもらえるし、「あいつら」と「不幸」を、
糸で結んでもらえる。
万々歳じゃないか。
私の舞だって、世界でトップを争うくらいの実力なのに、
こんなこと言われて黙ってられるか。
これまでの虐待と、いままでの罵倒を、
せいぜい後悔するがいい。
パァァァァァァ
?「その命を代償に、
君の願いを叶えてあげよう。
さぁ、どうする?」
美琴「こいつらに災いが降りかかるのなら、
命なんて、惜しくもない!
この願いを、叶えてちょうだい!」
?「本当にいいの?」
美琴「いいの。
これで。」
?「わかった。」
その瞬間、あたり一面が、まばゆい光に包まれた。
?「………君には他の願いも、あっただろうに。
やっぱり君は、≪特別≫な子だね。
僕は好きだな。
君のこと。」