儀式前日
これは、あやかしと人間の世が別れてはいなかった時代のお話。
昔————————
あやかしと人間の世が、別れてはいなかった時代には、
「花嫁」という存在がいた。
「花嫁」とは、あやかし自身が人間の娘を選び、その、選ばれた娘のことを指し————————
美琴「それはそれは、大切に扱われたのだという、か。
まぁ、実質そうだもんね」
私の妹を見ていればよくわかる。
私の妹は、神埜和葉、14歳。
そして私は、神埜美琴、15歳。
今年で16歳になる。
妹は今年で15歳だ。
そして今日は大事な儀式の前日。
ここ神埜家は、代々長女が毎年舞を踊って、神様に祈りをささげるという風習がある家。
神様にもいろいろな種類があって、
一番危険なのは、≪糸結び≫の神様らしい。
糸を結んだ代償に、命を奪われてしまうからだそうだ。
その神様に気に入られれば、大丈夫らしいけど、実際のところはわからない。
和葉「ねぇ、
なにぼぅっとしてるの?」
私の妹こと和葉は、この世界ではトップといわれている鬼の花嫁だ。
つまりは世界の女王。
逆らってはいけない。
美琴「申し訳ございません、和葉様。
弁明のしようもございません。」
和葉「えぇそうね。
分かればいいのよ。分かれば。
あんたたち下っ端は、私の言う通りにしていればいいんだから。
ふんっ」
世界の王者から溺愛されてるからって、何をしてもいいわけじゃないのに。
ほーんと、単純な子。
和葉は単純で、というか単純すぎて、少し心配だ。
こんな扱いを受けていても、こんなことが言えるんだから、
私の芯は、とてつもなく強いのかもしれない。
………まぁとにかく、この家の家事をしなきゃいけないわけだし、やるか。
母「ここが汚れてるわよ!
みっともない。
簡単な掃除もできないのかしら。」
美琴「申し訳ございません。」
今自分で汚したんじゃないか。
父「部屋を片付けておけといっただろう!
この役立たずめが。」
美琴「弁明のしようもございません。」
何も言われてないし、部屋に入ると怒るくせに。
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といった感じで一日が終わる。
この家には味方がいないし、
明日は舞を舞う儀式の日なので、
やることが終わったらさっさと寝る。
ほんとこれに限る。
おやすみなさい。