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33 秘密の大穴

「はぁ~~~、怖かったぁ~~~」


一人貴賓室兼会議室に戻ってきた岡崎輝は、すぐに変身を解き、

身体をテーブルにべったりとつけて大きく息を吐いた。

一世一代の大舞台に急遽連れ出され、指示されたとおり行動してみたら

自分のチカラを見誤り、日本でものすごく偉い政治家に大ケガをさせてしまった。

心も全身もブルブルと震えだし、頭が真っ白になってしまい、話がまったく頭に入ってこなかった。

疲労困憊だ。胃から吐きそうまである。


「お疲れ様なのじゃ。顔が真っ青じゃないか、水を飲んでスッキリするといいぞ」


ぜえぜえと横になっている輝に敷童幸恵が優しく声をかける。

薄っすらと目を開けると美味しそうな水が入ったグラスが見え、ありがたく頂戴する。


「コクコクコク。ふぅ、楽になったぁ。さっちゃんありがとう」

「うむ。してどうだったのじゃ。上手くいったのか?」

「結果的にはね……私がポンしちゃったときは終わったって絶望したけど、

時渡さんが軌道修正してくれて、いい感じになったってところかな」


イスの背に深くもたれながら話す輝。


「あー、失敗して落ち込んでおるのか。理想通りいくことがないのが現実じゃから

気に病むことはないぞ。終わりよければ全てよしと言うじゃろ?

キラリが見たように、父ちゃんがやった軌道修正(フォロー)が交渉での一番の勝負場面になりえる。

聞いてみないと分からんが、キラリの失敗は場を作った功績でもあるかもしれん。

父ちゃんが戻ってきたらアフターフォローがあると思うから、そのときに反省会するといいぞ」

「うーん、でもね、普通だったらもう大事件! 逮捕されちゃって牢屋行きだったぐらいの

ことをしちゃったの! 少しチカラを込めたらテーブルが壊れるは人が吹っ飛んじゃうはで。

他人に暴力を振ったことがなくて――すごく怖かった」


輝の声は徐々に弱くなり最後には泣き出しそうに震えていた。


(ああ、なるほど)


幸恵も人に危害を加えないように生きてきたので気持ちが理解できた。


「キラリ、その気持ち分かるぞ。わしも同じじゃった。

殴って相手を傷つけるのに躊躇した。拳が当たると肉と骨の感触が返ってきて痛かった。

でも父ちゃんは厳しく修行を辞めなかった。

それはなぜか。簡単じゃ。わしらの未来のためだからじゃ。

これから先、わしらはモンスターを使いダンジョンを経営していくことになる。

多くの人間が訪れ血を流すだろう。わしらはこの場所を守るために全力で敵対する。

抗うチカラが必要なのじゃ。甘えるなとは言わん。怖かった経験は大切だからじゃ。

だから今日だけ思いっきり噛み締めて心の整理をするといい。

そして明日前を向いて歩きだそう。未来のために」

「未来……うん、そうだよね。私だってファンタジー小説をいっぱい読んできた。

ダンジョンがどんなものなのか理解してる、つもり。うん。なんとか、がんばる」

「そうじゃな、がんばろう」


幸恵はそう言うと輝の肩をポンポンと叩き、少し離れた場所に歩いていった。

そこには輝が総理執務室で破壊したテーブルと本棚があった。

幸恵は身体から触手を数本出すと、それらを持ち上げ、どこかに運び出すようだ。


「あ、片付けるの? 私がやったことだし自分でやるよ」

「ふむ、そうか。なら二人でやろう。こっちじゃ」


輝はもう一度トラに変身しようとトラが描かれているヘアピンを付ける。だが、


「――あれ? 変身できない。なんでなんで?」


取って付けてを何度やっても身体が光らず元の姿のままだ。


「つまり、なんらかの制限がある、ってコトォ?

体力かな。それとも一日一回とか。他のヘアピンを付けるとどうなるんだろう」


特殊能力に制限が設けられることは多々ある。それが物語のスパイスになり

読者の妄想が膨らみ楽しませてくれる。

自分の身にもそれが訪れるとは。輝は少し楽しくなり、先程までの落ち込んだ気持ちが

和らいだ。

彼女はヘアピンポーチから猫のヘアピンを取り出して髪にセットした。

すると身体が光り、ゴシックコーデにピンクのベネチアンマスクを付けた猫モードに

変身することができた。


「ニャー! 成功ニャー!」

「おお! やっぱりかわいいの」


輝は改めてまじまじと猫モードを調べてみた。猫耳をピクピクと動かし、しっぽをフリフリ。

ひっかき動作に高いジャンプ。やはりトラモードと同じく身体能力が上がっていることが分かった。


「ニャー! 爪をガリガリするの気持ちぃい~」


壊れた本棚をさらに分解する勢いでひっかく輝。


「楽しんでるところじゃが部屋が汚れるからほどほどにするのじゃぞ」

「! つい夢中に……」


輝は照れ笑いをしながら片付け、幸恵に付いて運んでいった。

部屋から出たのは初めてで、しばらく歩いた先にはアニメやゲームで

見知った洞窟の風景に変化した。


「薄暗いから注意するのじゃぞ」

「に? 明るいけどニャ。にゃにゃ! これが猫目ってやつかニャ!

便利だニャ~」


またひとつ良いところが見つかった輝は上機嫌になり、高低差がある

岩並も軽々と音も立てずに進んでいく。


「よし、着いたぞ~。ここに放り投げて終わりじゃ」


幸恵が示した場所にはぽっかりと大穴が空いており、輝の目をしても底を確認することが

できなかった。落ちたら二度と生きて帰ってこれない。輝はそんな印象を受けた。


「うニャ~こわいニャ~すごいニャ~さっさとここにポイして撤退ニャ~」


言うやいなや二人は運んできたゴミを大穴に落とした。


「これでよし。キラリ、この穴は特別でな。落ちたモノは分解されいずれは

モンスターに生まれ変わるのじゃ。歴代総理が使ってきたテーブルと本棚。

これは期待できるのぉ。お主の功績じゃぞ」

「そ、それで壊せと指示されたのかニャ。脅しだと思ってたニャ」


二人は落ちた先を見つめる。

暗闇の向こうには大口を開けて鋭い歯で噛み砕いている生物がいるのだろうか。

想像するとゾゾゾと身震いした。


「言うまでもないが口外禁止じゃからな」

「にゃ」


ダンジョンの秘密を知った輝はもう戻れない。





『はは。初めて入ってみたけど台風の目の中心ってちょっと温かいのかな。

こっちは準備オッケーだよ! そっちはどう?』


本から声が聞こえた。

先に向かった風来坊小町から上空の指定ポイントに待機した報告だ。


「海上の熱が水蒸気となって吸い上げられてるからな。その熱を感じたのかもしれん。

私も海面に着いた。波が高く海面が上昇している。

君がいる場所から考えてもここで合っているだろう。

さあ始めるぞ! カウント3・2・1・GO!」



読んでいただきありがとうございます!

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