31 機密交渉
次話は11月21日になります。
「つまりすぐにでも日本を救える自体から目を背け、長い時間を掛け議論をして、
その間に日本を沈没させたいと。総理のご立派な意思、しかと受け止めました。
私とは相容れぬようだ。貴重なお時間を割いていただきありがとうございました。
これにて失礼する」
「「ちょ、ちょっとお待ち下さい!」」
席を立ちかけた私に慌てて呼び止める総理と環境大臣。
「気分を害それたことに深くお詫び申し上げます。私も即返答したい気持ちでいっぱいですが、
行政としての立場がございます。国を預かる身としまして、独裁国家にならぬよう話を広げ、
理解を深めていかなければなりません。
どうか少しだけ私共に、時渡様の大切なお時間をいただけないでしょうか。
どうかこの通りでございます」
長く使ってきたであろう木製のテーブルに、額がつく勢いで、どうかどうかと頭を下げる二人。
ここですぐに反応をせず少し間を置くのが大事だ。
「……ふぅ。つまるところ総理は、私がいくら魔法を使えるからといって、台風を無くすことなど
出来ないとお考えではないですか。だから国の危機にもかかわらず悠長なことを言う。
私からしたら国が滅んだあとに好きに土地を使うという選択もある。
しかしそれをせず、国の一大事に駆けつけた愛国心、忠義を尊重していただきたいものです」
「時渡様のお気持ちはごもっともでございます。危機を救ってくださるその行動に
私共は深く感謝しております。だからこそ! 正当な取引となるように、物事を進めていく
必要がありまして。ここを疎かにしてしまいますと、野党からの追求で、時渡様のご厚意が
白紙になってしまう恐れがあるのです。
副総理は対策本部に入っておりますので、10分のお時間をいただけないでしょうか」
「いいでしょう。ただし5分だけ待ちます。早くしてください」
「!? すぐにッ」
そう言うと総理は内線電話を使い、副総理を急いで部屋に来るよう指示を出した。
環境大臣が重い空気を改善しようと話題を振るが、私は無視をして目を閉じ、ジッと待つことにした。
11分後、扉をノックする音が聞こえ、年老いた副総理が入ってきた。
扉を閉めた瞬間、私は――
「遅い!!!」
カッと目を開けると怒鳴りつけた。
すると今までおとなしく隣りに座っていた岡崎輝が、豪腕を振り上げ、強くテーブルを叩きつけた。
バギャーンッ!
手刀は見事にテーブルを真っ二つに砕く。
湯のみ茶碗が飛び散り書類と環境大臣のスーツを濡らした。
「うわっ! あちっあち!!」
「――ッ!?!?」
突然の暴挙に場は騒然とした。
「何をする貴様!!! 総理大丈夫ですか! お逃げください!!
貴様! 貴様ら!! こんなことをしてどうなるか分かってるのか!!」
状況を知らない副総理は鬼の表情でまくし立てる。
当然の反応だ。これに私は
「うるさい黙れ!」
と返した。立ち上がる輝。巨体に圧倒される副総理の胸ぐらを掴み、壁に設置された
書棚に放り投げた。
「ぎゃあ!」
強く叩きつかれた衝撃でガラスが砕け散り、細かい破片が倒れた副総理に降り注いだ。
相当な痛みに悶絶する副総理。慌て駆け寄る政治家二人。
私はすっくと立ち上がると遅れて副総理に近づいた。
「タイムオーバーに対して少々手荒すぎてしまったようだ。詫びよう。
さあ役者は揃った。話の続きをしましょう」
まるでこの現状を些細なことと言わんばかりに微笑む私に、狂人を見る目で総理は叫ぶ。
「このような乱暴をされて……ッそれよりも救急車を!」
「ああああ! なんてことだなんてことだ! こんなのセクシーじゃない! ああ、ああ」
騒ぐ二人を無視して私は副総理の両脇に手を入れ持ち上げた。
「が、イ、いタイ……ううぅ」
「ん? まだ痛みますか? おかしいですね。健康体に見えますが」
「何を言ってるんだ貴様! 日本ナンバー2であるこの私の全身が悲鳴を上げているではないか!
骨が折れて……折れて? 折れて、いない。痛みもない。それに
肩こりも胸のムカつきスッキリしているぞ!? うおおお! 若い頃を思い出す元気さだ!
見てください総理!! 歳で上がらなくなった肩がこの通り!」
副総理は年甲斐もなくブンブンと肩を回して重石が取れた状態をアピールした。
運動をしなくなり肩の筋肉が衰えると人は肩こりに悩みだす。
ここにいる政治家のトップたちは運動をする時間を作れないため、
鍼灸治療に頼っている情報を事前に得ていた。
交渉相手が分かっていれば調べるのは交渉の初歩だ。
優位な立場になるために大手出版社の幹部を嗅ぎ回らせ、スクープも含め面白い情報が集まった。
武力で従わせることは容易だ。短期的には効果がある。
しかし長期で見ると裏切る確率が高く、また任期終了で代替わりしたときに
引き継がれる内容は好印象のほうが楽だ。取るべき手段は心の支配に限る。
副総理には痛い思いをしてもらったが、それに見合う対価を与えた。
満足の行く反応もしてくれて、顔には出さないが貰ったと心の中でほくそ笑ませてもらう。
「摩訶不思議な……と、とりあえず副総理に大事なく良かったと言っておこう。
うーむ。しかし時渡様。暴力はご遠慮願いたい。
チカラによる交渉はテロです。我が国はテロに屈しません。
私の代では絶対にしないと魂に誓っております。
交渉は対話で成立するから価値があるのです。
待たせてしまったことはお詫びします。
器物の破損、副総理に行った暴力は、副総理に働いた不思議な現象と合わせて
相殺といきませんか」
「こちらの部下の非礼にもかかわらず、寛大なご配慮痛み入ります。
申し出を受け入れます。そうだ。壊してしまったお詫びとしまして代替品をお譲ります」
私は流れるように腕を払いアポート・アスポートの魔法を使ってテーブルと書棚を交換した。
「ハァーーーー!?!?」
「おお!」
魔法を初めて見た副総理は素っ頓狂な声を上げ、他二人は変化を楽しんだ。
「このようなことも可能なのですね。素晴らしい! 大変貴重な体験をさせていただきました。
寄附という形で受け取らせていただきます」
「そそそそ総理! 今のはいったい!?」
「その事について君を呼んだのだ。さあ日本の危機を防ぐぞ」
そう言うと我々は席に着き交渉を再開した。
十分な成果を得るため長い時間を有したが、折り合い付いた結果となった。
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