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100年前の大戦編29 暗雲

 ナイトとナレジンは大蛇から離れて着地した。


「ナレジン様。大蛇の奴……」


「うむ、粘着性の唾液を溜め込んで舌を保護しておったな……熱さに弱い舌が弱点じゃったのじゃが……」


紅炎(プロミネンス)が効かないとなると……」


震天(しんてん)擲穿(てきせん)が使えなくなるわい。下手に使うと飲み込まれるぞ 」


 ナイトに万一があると取り返しが付かぬ。不必要な危険に晒させるわけにはいかんのじゃ。




 城壁の上ではシャードと幕僚達が前衛の戦いの分析を進めていた。


「厄介な蛇ですな。弱点だった口内への極炎魔法と震天(しんてん)擲穿(てきせん)が封じられるとは……」


「川辺での戦いの反省をしてきたわけだな。知恵があるとなると何を仕掛けてくるかわからぬな 」


「シャード様!大蛇が動き出しましたぞ。こちらに向かって来ます 」幕僚の動きが慌ただしくなる。


「前衛はどうしている? 」


「前進する大蛇から離れています 」


 シャードは少し考えて指示を出す。

「魔導砲撃部隊に攻撃させよ 」


「魔導砲撃部隊、撃てーっ!! 」


 ドンドンと百を超える砲門から魔力を帯びた砲弾が発射された。大蛇に命中し次々と爆炎を上げる。しかしスピードを緩めずに前進する大蛇。


「第3魔法部隊に攻撃させよ 」


「第3魔法部隊、前に 」

 第3魔法部隊が前に出る。


「第3魔法部隊撃てーっ!! 」

 200人を超える魔法使いから一斉に炎魔法が放たれて、熱気が辺りに充満する。


 爆炎と熱気の渦の中で大蛇の動きが止まる。もう城は目前である。大蛇はゆっくりと鎌首を持ち上げて顔を天に向ける。


 シャード達から少し離れた城壁の上では、リヤやティーダ達、結界魔法の使い手が結界魔法を発動させていた。


「毒液が来るわ。衝撃に備えて 」

 リヤが注意の声を上げる。


 そして大蛇の口から巨大な毒液が発射された。毒液は結界に降りかかり、ジュージューと焦げるような音が発せられる。


 しかし城を半円状に覆った結界は、大蛇の毒液を通さない。結界上をゆっくりと滑り落ちる毒液。





 大蛇から離れたランティ班の面々は、大蛇の様子を伺っていた。


「ランティ、オイラたち助けに行かなくていいのかな? 」フィフが心配そうに尋ねる。


「結界が破れそうになるまでは無理はしない作戦なんだ。毒液は結界の表面を焦がしているように見えるが、ヒビすら入って無い。問題は無い 」


「しかし近づき過ぎると危険だし、離れ過ぎると戦え無いし面倒だな 」


「そう言うな、ヴァルグ。微妙な距離感こそが大蛇とのお付き合いの秘訣だぞ 」


「ランティ殿!!大蛇が震えて!! 」

 黙って大蛇を見ていたエルフのサーバンツが叫んだ。


「身震いか!!総員、全力で離脱するぞ!! 」

 ランティ達は全速で蛇から離れるように駆け出した。


 大蛇は最初はゆっくりと胴体を震わせ始めて……一気に大きく震わせた。大蛇から100m以上離れていたランティ達にも一気に巨大な胴体が迫る。


 快足で皆を突き放したフィフが走りながら後方を確認すると、ヴァルグが一人で遅れている。


「ヴァルグーっ!!急いでーっ!! 駄目だ!!間に合わない!!ヴァルグーっ!! 」


「はぁ、はぁ、そんな事言われてもよ……」

 ヴァルグが押し潰されるかに見えた瞬間。


 強風がヴァルグ達を巻き上げる。風の八賢者ブリーズは4人を大蛇の胴体の上に着地させた。


「助かりましたな、皆さん 」

 魔導士デクストがホッとして見上げると、大蛇が顔を向けて目の前に迫って来ていた。


 動けずに大蛇を見上げる4人の目に、大蛇の頭上から猛スピードで急降下するナレジンとナイトが映った。


「秘剣!震天(しんてん)擲穿(てきせん)!!」


 ドガガガガガガーン!!


 ナイトが大蛇の頭に激突して、大蛇の頭が地面に叩きつけられる。大きく弾かれたナイトはナレジンがキャッチして飛び去って行った。


「目の前で見ると凄いですな ……」

 デクストが唖然とした感じで呟いた。


「そうだな。大蛇が学習して来たなら、俺たちも学習すれば良い。ナレジン殿はナイトを食わせない為にギリギリでナイトを打ち出したんだ 」

 ランティが嬉しそうに答える。


「ギリギリってどういう事だい? 」

 大蛇の背を駆け上がって来たフィフが近づいて来る。


「口を開くのが間に合わないギリギリって事だ。ナレジン殿にとってもかなり危険ではあるが ……」





城から7km離れた上空でイルスの使い魔の空クラゲのクー君がゆらゆらと揺れている。万が一に備えて城の監視警戒区域外を監視していたのだ。


ジュッ!!


遠くから伸びた光が一瞬でクー君を蒸発させた。




「騎士王様!! 」

 城内の控えの間に待機中の騎士王達の元に八賢者イルスがやって来た。


「どうした、イルス殿? 」

 椅子から立ち上がり、出迎える騎士王。


「後方を監視させていた僕の使い魔が、一瞬で消えてしまいました 」


「どういう事じゃ? 」


「城の警戒範囲が5kmと聞いていたので、万が一に備えて更に離れた7km地点の上空で監視させていたのですが……」


「エタールかの……」

 騎士王は暗い顔で考え込む。


「最悪の可能性があるか。わかった。儂はシャード殿の元に参る。イルス殿も付いて来てくれ。

 伝令兵はリアム殿への伝令を頼む。シャード殿の元に集合じゃ 」


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