100年前の大戦編24 作戦会議
儂達がフロンテ城にたどり着いてから半日、使い魔のフー君から魔法連絡が届いた。フー君の目と儂の目をリンクさせると、再び川を渡り西進する大蛇。
儂は騎士王殿の元に向かった。騎士王殿は謁見の間に居るはずじゃ。
謁見の間ではエイドや四天王が何か話し合っていた。
「騎士王殿、大蛇が動き出しましたぞ 」
「ナレジン殿 」
「真っ直ぐこちらに向かって来ている様子。恐らくは3〜4時間程度で辿り着くでしょう 」
「遂に動き出したか……」
「この調子で行くと約2日ここで食い止めれば、当初の予定を超える事が出来ますな 」
エイドが書類を見ながら答える。
「しかし、大蛇め。なぜ、こちらに向かって来る。あの場所からは30km以上離れているのに 」
騎士王四天王の一人が疑問を呈す。
「わからぬ。異界の大蛇の能力も思考もな。しかし、あと2日間耐えれば良いのであれば希望はあるじゃろう。騎士王殿、作戦会議じゃな 」
「うむ、エイド。皆を集めてくれ 」
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フロンテ城の大広間では主要メンバーが集まっていた。儂は周りを見渡す。騎士王殿はエイドと打ち合わせをしている。皆はそれぞれ話込んでいるようじゃ。
「ナイト、体調は大丈夫? 」
「大丈夫だ。修練場の後はゆっくり寝たからな。リヤの方はどうだ? 」
「私も大丈夫よ。この城には防衛結界用の魔道具があるから、さっきよりも結界は維持しやすくなるわ 」
ガタッ
騎士王殿が立ち上がった。
皆が静まり返る。
「皆の者、良く集まってくれた。既に知っている者も居るとは思うが、あと3時間ほどで大蛇がやって来る予定じゃ。ついては最終的な作戦を決定したい。
忌憚ない意見を聞かせて欲しい 」
騎士王殿は隣のエイドを見る。
「それでは、私、エイドから話を進めさせて頂きます。まず我々の第1目標の人族領内の人々の一時避難ですが、大蛇の進行速度を考慮すると、あと2日間ここで食い止めますと、当初の予定を超える事が出来ます 」
「2日間か……大蛇が化け物なのに変わりは無いが、城と防衛結界用の魔道具があるのはデカイな 」
バリアズ殿の大きな声が響く。
ランティがバリアズ殿に続く。
「確かに城があるし、城の人員や援軍で人数も増えた。2日間と言えど交代で休む事も可能だろう。気になるのは結界だな。ティーダさん、どうだ?」
「魔族との境界防衛の城として、優れた防衛結界用の魔道具が設置されています。強度が大幅に上がると思いますわ。リヤさん、どうです? 」
「はい、強度は少なくとも倍。魔力のある方々が大幅に増えたので魔力供給面でも不安が消えました。油断は出来ませんが、後衛に関しては前回の戦いより大幅に優位になります 」
「すると、後は前衛ですな 」
エイドがナイトを見る。
「皆さんに繰り返し攻撃して頂いたピット器官に、最後に放った震天の擲穿は手答えがありました。傷を付ける事が出来たかまではわかりませんが ……」
イルス殿が勢い良く立ち上がる。
「僕の使い魔に確認させた所、傷は付いていないが皮膚がかなり赤くなっている。恐らくは内出血しているんだと思う 」
「儂もイルス殿と同じ見解じゃ。左目もそうじゃが表面上は効いてなさそうでも内部にダメージが積み重なって来ておる。倒すのは不可能でも時間を稼ぐ事なら出来そうじゃ 」
「ナレジン殿の紅炎から舌による捕食が減ったのは大きいな、ナイト 」
ランティが興奮気味に話す。
「あぁ、口が開けないのなら体当たりに注意するだけだ。毒液は脅威だが、これも口を開かねば放ちようが無い 」
「最初は絶望感しかありませんでしたが、やっと希望が見えて来ましたな。大きな作戦としては継続で宜しいでしょうか?騎士王様 」
騎士王殿を見るニコニコしたエイド。
「うむ。戦略目標は変わらぬ。細かい部分については各班で調整を頼む。
大蛇が城から30分以内の距離に到達したら鐘を鳴らす。戦闘準備を整え終わった者は、それまでは自由時間にしてもらって構わぬ 」
騎士王殿がエイドを見る。
「それでは会議を終了します。解散して下さい 」
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皆が戦闘準備に戻る中で儂は騎士王殿の元に向かった。エイドや四天王もそこに居る。
「騎士王殿……」
「うむ、エイド、四天王。ナレジン殿と話がある。席を外してくれぬか 」
「はっ! 」
部屋を出て行く5人。広い部屋には儂と騎士王殿のみが残った。
「ナレジン殿、話を聞こう……」
「うむ 」