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100年前の大戦編15 最終決戦会議

 本営にて最終決戦会議が始まろうとしていた。参加者はおよそ50名ほど、Aランク以上の者、各部隊の隊長などが揃っていた。


「ナイト達は間に合わぬか……仕方ない、始めることにしよう 」

 騎士王が顔を上げた。


 メガネの従者が頷く。

「はっ、それでは、司会進行は私、エイドが務めさせて頂きます。今回の作戦の主目的は、人々を避難させる時間を稼ぐ事にあります。

 ミズガルノズの大蛇は魔力やエネルギーが切れると、元の世界に戻る可能性がありますので 」


「避難させる時間を稼ぐか……」

 義勇兵のリーダーの勇者ランティが呟く。


「はい、残念ながらミズガルノズの大蛇には、有効なダメージを与える事が誰にも出来ておりません。

 亡くなられた八賢者ソラン殿達のSランク魔法すら一切通用しなかったのです 」


「確かに、あの巨大な蛇にダメージが与えられるイメージは一切ないな ……」

 モンク長のバリダスが嘆息した。


「それで人々の避難とはどうなさるのですか? 」

 聖女ティーダが手を上げて発言する。


 エイドと騎士王は顔を見合わせる。


「女性や子供達を優先的に、人族領内の地下迷宮や鉱山などへの一時避難を進めております。

 ただ時間がかかりますので大蛇の進行を食い止める必要があるのです。皆様には申し訳ありませぬが……」


「いや、俺の家族も避難中だろう。小さなガキ達もいるんだ。まだ死なすわけにはいかない。少しでも可能性のある方に賭けたい。

 義勇兵で残っている連中は俺と似たような理由だろう。あの蛇を家族に近づけるわけにはいかない 」

 ランティの語気が強まる。



「王様連盟の援軍の勇者の方々にお願いがある 」

 騎士王が向きを変え、王様連盟の援軍の幹部と向き合う。


「なんでしょうか?騎士王様 」

 勇者プロキスが死亡した援軍の将に代わって応える。


「王様連盟に帰国して状況を報告して頂きたい。そして帰国の際には、少しでも多くの我が国の者達を連れて行って欲しいんじゃ……」


「しかし……この人数では厳しくありませんか? 」


「先に撤退した同盟国の一部が、この場所に向かって来ているとの連絡が来たのだ 」


「おぉーっ!! 」

「我々は見捨てられたわけでは無かったのですね 」


「わかりました。我々は離脱して、少しでも多くの者達を連れて帰国しましょう 」


「感謝する。本当に感謝しますぞ 」

 騎士王は深く頭を下げた。






「あともう一つ疑問があるのですが 」

 ティーダが手を上げる。


「どうぞ 」


「あの蛇をこの場所にどう引き込むのでしょう? 」


「八賢者イルス殿、お願いします 」


 イルスがティーダに向いて答える。

「私の幻影魔法で、蛇を誘導するブラックドラゴン達の飛行ルートをこちらに向けています。使い魔達の報告だと、今のところ順調ですね。あと1時間くらいで、ここに来ますよ 」


「それで、どうやって食い止めるのだ? 」

 身体中が古傷だらけの大柄な戦士が聞いてくる。


 騎士王がエイドを抑えて、自ら答える。

「正攻法じゃ。イルス殿に幻影魔法を試してもらったが大蛇自体には効果が無かった。罠を仕掛けるにしても、時間が無い上に、あの規模の大きさの敵に対しては効果が期待できぬ 」


 騎士王は皆を見渡す。


「それで、モンク長のバリアズ殿と聖女ティーダ殿に邪悪な力を通さぬ結界を張ってもらう。

 長距離戦に適した魔法使いとエルフは結界の内側から遠距離攻撃をしてもらう。回復役は……」


 騎士王は回復役の幹部達の方を見る。

「原則は結界内じゃが、場合によっては結界から出て回復などに向かってもらう。その場合は護衛を……」


 モンク長のバリアズが立ち上がる。

「騎士王様、護衛は回復も出来るモンク団の者達で承りましょう 」


「バリアズ殿、頼む 」


「そして近接戦闘系の者達じゃが、複数の組に分かれて戦ってもらう 」


「複数の組みですか? 」

 ランティが問う。


「そうじゃ、大蛇の武器は、巨大な身体を活かした打撃、巨大な舌を活かした捕食、毒液を吐き飛ばすの3つが確認されておる。これらは通常の蛇と変わらぬものじゃ 」


「巨大、余りに巨大すぎる蛇というわけですな 」

 バリアズが頷く。


「私の幻影魔法も、余りに、余りに巨大過ぎて脳にまで影響を及ぼせ無かった可能性があります 」

 イルスが悔しそうに補足する。


「ダメージが与えられないのは、大蛇に(あり)の攻撃が効かないみたいな物か……」

 ランティが考えながら呟いた。


「ミズガルノズの大蛇の持つ膨大な魔力に、我々人間の魔力が小さ過ぎて、魔法が効かないように見えるという事かしら? 」


「恐らくはそういう事じゃろう 」



「それで組に分かれるとは? 」

 勇者ランティが話を戻す。


「検討の結果、結界を守る都合上と、蛇の弱点の都合上、一番危険な顔の正面を常に攻撃せざるを得ないと判断したのだ。組に分かれて交代で正面を攻撃するんじゃ 」


「危険ですな……」

 バリアズが呟く。


「危険なのは皆変わらん。あの巨大な蛇の打撃に結界はどれだけ保つ事が出来る ? 」

 騎士王はティーダを見た。


「一撃は必ず持たせます。しかし何度も耐えるのは、私達だけでは不可能でしょう 」

 聖女ティーダが暗い顔で答える。


「せめて騎士王国の城壁地域のように、巨大な防御魔方陣やら魔法具が組み込んである場所なら、我々の結界魔法の効果の桁も上がるのだが……」

 モンク長のバリアズが続く。


「それも考えたのだが、それでは最初から多くの人々を見捨てる事になってしまう。

 城壁地域は最終防衛ラインとして準備はさせておるが、大蛇の攻撃を耐えうる保証は無い。故に人々を地下迷宮や鉱山などに避難させておるのだ 」


「守るべきは『人』ですな 」

 バリアズが騎士王を見る。


「その通りじゃ、故に我らは時間稼ぎの捨て石にならざるをえんのじゃ 」


「せめてリヤさんが居れば……彼女は聖なる加護を受けております。魔族領内では強力な結界は難しいでしょうが、人族領内であれば人々の思いが彼女の結界に力を貸すのですが……」



「リヤ、ナイト、ニトラルの3人を連れ戻す為に、知の賢者ナレジン殿が向かっておる。必ず戻って来てくれると儂は信じておる 」



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