オススメの武器屋編1
今日は休日。先日の魔獣退治の任務の報酬が出た俺とアライブは、街へと買い物に向かった。装備していた鉄の剣が折れてしまった為、新しい武器を買うのである。
「う〜ん、この街は初めてだけど武器屋が多くてビックリだな 」
「近くに良質な鉱山があるからね。鍛冶屋もいっぱいあるみたいだしね 」
「ところでブービーとモビーはどこに行ったんだ 」
「なんか、用事があるみたいで、先に家に帰ったみたいだよ 」
「仕事の時以外は、本当にすぐ消えるよな 」
「まぁいいじゃない。実際に魔獣コカトリスを倒したのは、ブービーとモビーだし。僕たち、ほとんど石になってただけで大金ゲットだよ。おかげで新しい武器を買えるんだから 」
「う〜ん、パーティとして間違っている気がするけど…… 」
「おっ、あったよ。ブービーがオススメの店。武器屋オススメって看板に書いてある 」
「う〜ん、あんまり気が進まないけど…… 」
「まぁ、実力は確かだから大丈夫じゃない 」
俺達はブービーのオススメの武器屋に入って行った。
店内は乱雑で、あまり見た事のない武器がたくさん置いてあった。俺とアライブは端から順に、一つずつ吟味していく事にした。
「なんか……あまり見た事がない武器だらけだね 」
「竹槍、ヒノキの棒、ヌンチャク、三節棍、ハリセン、羽扇、蛇矛、刺又…… 」
「普通の剣とかは無いのかな 」
「うふふ、いらっしゃいませ。武器屋オススメにようこそ 」
若い女性の店員が現れた。サラサラの金髪に薄い緑の目の美人さんだ。名札にグリンティアと書いてある。
「あなたが欲しいのは、この金の竹槍ですか?それともヒノキの棒EXですか? 」
店員さんは左手に金の竹槍、右手にゴツいヒノキの棒を持っている。それぞれ値札に30万Gと書いてある。
*1Gは1円換算。
「はい? 」
「あなたが欲しいのは、この金の竹槍ですか?それともヒノキの棒EXですか? 」
「いや、俺は、剣が欲しいんだけど 」
「あなたは本当に剣が欲しいのですか?剣が壊れたから、新しい剣が欲しいと安易に考えているだけでは無いのですか? 」
「え? 」
「私には武器と人の相性が見えるのです。この2つの武器があなたとの相性が抜群なのです 」
「そうなの? 」
「この金の竹槍は、ただの薄い金箔の貼られた竹槍ではありません 」
金の竹槍を高く掲げるグリンティア。
「金箔なの? 30万Gもするのに 」
やばい、ぼったくりの店だと思うテッドとアライブ。
「うふふ、この金の竹槍には、オンリーワンの特殊スキルが3つもついているのです 」
グリンティアさんはえへんと胸を張る。
「まず、一つ目は必ずほとんどの敵から逃げられるのです 」
「必ず? ほとんど?」
「はい、ピンチになった時に、金の竹槍の放り出して逃げると、ほとんどの敵は必ず金の竹槍に目がくらんで、持ち主を逃してしまうのです 」
「それって貧乏な敵だけじゃない 」
アライブのツッコミが入る。
「うふふ、カラスとか光る物が好きな敵も大丈夫だと思いますよ 」
「うふふじゃないから、ほとんどの敵には通用しないから!!」
「2つ目 」
「聞いてない……」
「戦争が起きた時に、敵陣に最初に攻撃したら、真の一番槍、いや、真の一番竹槍を名乗れますよ 」
「はい? 」
「うふふ、広い戦場では本当の一番槍が誰かを知るのは非常に難しい問題です。しかし、この金の竹槍があれば、『おまえは一番槍なんかじゃない。剣士は黙っていろ!!』と圧をかけて功績を独り占めできるのです 」
「……槍使いが相手だったら、どうするんだ 」
「俺はゴールド竹槍使いだ。銀や銅は黙っていろ!!と圧をかけてください。私の知る限り、ゴールド竹槍以上の豪華な槍はありません 」
「いや、黙ってないから、色々と揉めるから。この竹槍野郎とか言われちゃうから 」
「3つ目、今の世の中で竹槍使いの勇者は一人もいません。ライバルが一人もいないのです。無人の野をかけるがこどく勇名が広がるでしょう。『金の竹槍のテッド』と…… 」
「テッド……どうする? 」
神妙な顔のアライブ。
「どうするじゃないから、いらないから 」
「ならば、ヒノキの棒EXですね 」
「いや、なんでヒノキの棒なのに30万Gもするの?ひどいぼったくりじゃないの 」
「うふふ、このヒノキの棒EXは、ただのヒノキの棒ではありません。昔、魔王を何人も倒した伝説の勇者の武器なのです 」
「伝説の勇者? 」
「はい、伝承によると、ヒノキの棒に油断した魔王達を次々と一撃で屠っていたようです。愚かな魔王達はオリハルコンの棒にヒノキの柄のシールを貼っていた事に気がつかなかったのです 」
「え? 」
「愚かなり、ヒノキの棒で魔王に挑むとは。情けじゃ。最初の一撃は避けずに食らってやる、と言った魔王達が次々と餌食に 」
「ついた二つ名はペテン師勇者。後世の評価は別れますが、多くの魔王を倒して平和な一時代を築いたのも事実ですよ 」
「テッド、これはありかも知れないよ 」
「いや、そんなお馬鹿な魔王だらけの時代じゃないから。ばれて袋叩きにあうから 」
「あら、よくご存知ですね。12人の魔王を倒した後にばれて、袋叩きにあって亡くなられた事を 」