100年前の大戦編12 一緒に来い!!
ケンマロに続き、ネタギーレンも扉の前に現れる。
「……ケンマロ、ネタギーレン。そやつらを抑えておけ……」
エタールがキュードラの元に向かう。
「キュードラを蘇らせる気よ!! 」
「させるか!!」
エタールに向かおうとするナイトの肩をニトラルが掴んだ。
「待つんじゃ!! ナイトとリヤは扉の前の二人を頼む!!チャンスがあったら、そのまま飛び込め 」
「いくわよ!! 」
リヤがネタギーレンの元に駆け寄って断界剣を振る。
グイーン
ネタギーレンの血の鞭が、リヤの剣を伸びながら受け止める。
ケンマロがリヤの背後に迫り、ナイトが迎え撃つ。
ガンッ
ガンッ
ガンッ
「良い剣でござる、勇者殿。しかし双剣の達人を一本の剣で防ぐのは至難でごさるよ 」
ケンマロの目が光る。
「高速剣舞!無限刃!! 」
ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!
「チィッ!!」
ケンマロの剣速に押されるナイト。
「紅炎」
轟々とした極熱の炎が意識の無いキュードラに迫る。
「……そうはさせぬ……」
キュードラの前で立ち塞がり、右手で紅炎を掴むエタール。右手が即座に燃え上がる。
エタールは表情を変えずに、左手で右手を切り落とした。
「惜しかったの、そのまま燃え尽きて欲しかったんじゃが ……」
「……余は最高位魔族。多少の傷などすぐに回復する……」
そして左手で自らの腹の肉をつまみ取り、血塗れの肉をキュードラに向けて落とす。
「……蘇れ。我が眷属、キュードラよ……」
「化け物め……」
ナレジンの額から一筋の汗が落ちた。
「死んでもらうでござ〜る!! 」
影の中から現れたドーシャが、ニトラルの背中から短剣を突きつきけようとする。
「雷鞭」
振り向きざまに魔法の鞭を放つニトラル。
慌てて飛びよけるドーシャ。
「その技は間合いが読みにくいので苦手でござ〜る 」
「轟雷!! 」
鞭を持つ右手の反対、左手から幾重にも重なり合った雷が出てドーシャを襲う。
「チィーッでござ〜る!!」
斜め後方に大きくジャンプして距離を取るドーシャ。
「どうしたんじゃ?逃げるのかの 」
「キュードラさんと獅子王ちゃんが復活するまで、付かず離れずでござ〜る 」
「ムフフ、ムフフフフ……」
大魔王の間に嫌らしい笑い声が響き渡る。
「……立ち上がれ、我が片腕、キュードラよ……」
エタールが厳かに告げる 。
「ムフフ、ムフフフフ……」
嫌らしい笑い声が再び響き渡り、フラフラしながら立ち上がるキュードラ。
「今じゃ!!紅炎」
キュードラに向けて灼熱の炎が巻き起こる。炎に巻き込まれるキュードラ。
「ぐわぁあああ……」
灼熱の炎に焼かれながら一歩二歩と前に進み、膝から崩れ落ちる。
バタン
キュードラは力尽き倒れた。
「ビックリさせおって……」
安堵の息を洩らすナレジン。
「ムフフ、ムフフフフ……」
黒焦げになったキュードラの身体から、嫌らしい笑い声が響く。
「な、なんじゃと!! 」
パキッ!!
黒焦げになったキュードラの身体が割れ、真っ白なキュードラが現れる。
「ムフフ……吾輩に同じ技は二度と通用しないのです。血の衣。
吾輩は天ぷらの様に、饅頭の様に、血の衣の中に隠れておったのですよ 」
「フッフッフ、キュードラさんが復活したでござ〜る。貴方達にもう勝ち目は無いので〜す 」
ニトラルは全体を見渡した。ナイトとリヤは扉の近くでケンマロやネタギーレンと戦っている。
ナレジン殿は少し離れて、キュードラやエタールと向き合っている。
「ふっふっふ 」
ニトラルが笑い声を上げる。
「頭がおかしくなったでござ〜るか? 」
「儂の目的は勝つ事では無いわい!!
ナイト!! リヤを連れてケンマロごと扉に突っ込むんじゃ!!」
「ネタギーレンは!! 」
リヤが叫ぶ。
「リヤ!! 」
ナイトは黙ってリヤを脇に抱えて、ケンマロに向かって走る。
ネタギーレンは血の鞭をふりかざす。
「馬鹿な人達ね、私に背中を見せるなんて。死になさい! 」
血の鞭がナイトの背中に迫る。
ズガッ!!
ネタギーレンの背中を雷鞭が切り裂く。
「なっ……」
倒れるネタギーレン。
ドーシャに背を向けて雷鞭を決めたニトラル。その隙にドーシャが駆け寄る。「愚かでござ〜る!! 死ね!! 」
グサッ!!
無防備になったニトラルの背中をドーシャの短剣が貫いた。
「ぐふっ……」
身体を貫かれて口からも血を吐くニトラル。
「ニトラル!!」
「ニトラルさん!!」
ナレジンとリヤの悲痛な叫びが響くが、ナイトの足は止まらない。
ナイトはリヤに向かう剣のみを剣で弾き、全身の力を込めてケンマロに体当たりをぶちかます。
ドーン!!
軽いケンマロは扉に向かって弾き飛ばされる。
「一緒に来い!! 」
ナイトは再びケンマロに体当たりをぶちかまし、そのまま扉に飛び込んだ。