100年前の大戦編10 残り1%
「拙者の残り1%が何か……勇者達に説明するでごさるよ。ドーシャ殿」
「え? ドーシャが説明するでござ〜るか? 」
びっくりするドーシャ。
「拙者とドーシャ殿は『ござる仲間』でござる。ドーシャ殿なら大丈夫でござる。安心して説明するでごさるよ」
「ケンマロちゃんの残り1%は……無責任でござ〜る」
皆がケンマロに注目する。
ケンマロは残念そうに首を振る。
「ドーシャ殿、まだまだでござるな。不正解でござる。誰か名探偵はおらぬでござるか?
皆を見渡すケンマロ。
ガタッ
立ち上がるエタール。
「……わかったぞ、余の目はごまかせぬ……」
皆が黙って注目する。ケンマロの空虚な視線も突き刺さる。
「……いや、まて、もしかすると……罠か……」
ブツブツ言いながら座るエタール。
「わかったわ」
リヤが手を上げる。
「どうぞ、美しい賢者殿」
リヤが前に出る。
「1%と言えば、ほんのわずか。肉とか筋とかついているのだと思うわ」
皆がケンマロに注目する。
ナレジンはスッと後ろに下がる。
「カッカッカ」
ケンマロが高笑いをする。
「拙者は、毎日お風呂に入ってござるよ。念入りに身体を洗っているでござる。見てくだされ、この美しい身体。お風呂の後は、ワックスで磨き上げてござる。我が肉体に一片の筋無しでござるよ」
「わかったわ」
ネタギーレンが手を上げる。
「さすが、魔王軍随一の美女 ネタギーレン殿でござる。拙者とも長い付き合い。キュードラ殿が獅子王殿とバディを組む事が多いので、我ら2人もタッグを組む事が多いでござる」
「獅子王が可哀想だな」
「そうね」
ナイトとリヤが呟く。
「さぁ!ネタギーレン殿、拙者の残り1%を世界に知らしめるでござるよ!!」
「そんな、たいした物では無いと思うのだけど……」
「不正解でござる」
「ちょ、ちょっとお待ちなさいよ。まだ答えを言ってないわよ」
「達人とは、瞬時に全てを悟る事が出来るのでござる。そうでごさるな、エタール様」
「う、うむ……」
「ちょっと待ってくれ」
ナイトが前に出る。
「何でござるかな?勇者殿」
「確かに達人は、見切りが早い。しかし早すぎて見誤る事もあるだろう。ネタギーレンさんも四天王の1人。答えを聞くのも一興ではないかな?」
「確かに……それもまた一興でござるな。わかり申した。ネタギーレン殿、たいした答えを期待しているでござるよ」
「……まぁ、いいわ。ケンマロちゃんの体重をみんな
知っているかしら?」
「知らないでござ〜る」
「実はかなり軽いのよね。ねぇ、ケンマロちゃん」
「さすが通でござるな。拙者の体重は15kgほどでござる。スリム&セクシーのケンマロでござる」
「軽いわね」
「というか骨だけだからな」
「拙者の軽やかな舞を見るでござる!!」
ケンマロは軽やかな踊りを始めた。
ナレジンとニトラルは後方でヒソヒソと話していた。
「事情は大体掴めたわい。エタールは設定した時間まで、時を巻き戻す事が出来ると……倒しても、倒す前に引き戻されると」
「そうじゃ、儂らは何度も奴を倒したが、その都度、引き戻された。首を跳ね飛ばして、即座に氷漬けしても無駄じゃった……奴は詠唱を破棄できる」
「……エタールの側近供がふざけ過ぎじゃと思ったが、絶対に負けは無い事からの余裕じゃったんじゃな」
「最悪、死んでも時を戻してもらえると信じておるんじゃろう」
「それだけ強力な魔法じゃ、制約条件とかは無いのかの? ヒントは無いのか?ニトラルよ」
「この城は巨大な魔法陣じゃ。儂らとの戦闘で発せられる巨大な魔力を吸収し、そのエネルギーを使って時を巻き戻す魔法を唱えておるのじゃ」
「ということは、無限に使えるわけではないのう」
「その通りじゃ、とは言えガチャ失敗で何回もやり直しておったみたいじゃから、エネルギー切れを期待し過ぎるのも危険じゃわい」
「エタールとミズガルノズの大蛇。両方同時に対処するのは不可能じゃな。まずはナイトとリヤとお主を騎士王様の所に送るのが先決じゃ」
「ナレジン殿、このまま行けば儂らはエタールには絶対に勝てんじゃろう。何回戦っても同じじゃ」
「だからこそ、ミズガルノズの大蛇の被害を食い止めるのを優先するのじゃ。守るべき人々が死に絶えてしまったら意味は無いのでな」
「儂に作戦がある。協力をしてくれぬか……」
ニトラルが小さな声で呟いた。