100年前の大戦編7 血の大鎚
「仕方ない、ナイト、リヤ。撤退じゃ 」
「しかし……」
「私達がエタールを倒さないと……」
「無理じゃ、完全に詰んでおる。騎士王様達と合流して次の手を打つしか無いわい。それにナンチャラの大蛇とやらも気になるわい 」
「上手くいっても千日手か……」
ナイトは小さく呟いた。
「仕方がないわね」
リヤがナイトに顔を向ける。
「逃すかよ!!」
獅子王がナイトに駆け寄って、大きな爪で引き裂こうとする。
ガチン!!
剣と爪がぶつかり合う。
「拙者も仲間に入れるでござる!!」
ケンマロが大きくジャンプして、ナイトの後ろから襲いかかった。
「させない!!」
リヤがナイトの背後に回り込んで迎え打つ。
ガンッ
ガンッ
ガンッ
「やるでござるな!!」
「あなたこそ!!」
「うふふ、妾の相手はおじいさんかしら 」
「儂しかおらん見たいじゃのう……」
睨み合うニトラルとネタギーレン。
「わ、吾輩は……」
オロオロとするキュードラ伯爵。
「テメェは黙って見てやがれ!!」
獅子王がナイトと戦いながら咆哮する。
「そうでござる!! いつもいつも一発芸でご褒美って……ズルイでござる!! 」 リヤの攻撃をかわしながら、合いの手を入れるケンマロ。
「そうね。キュードラちゃんは出番無しね。お座り!! 」
「くっ……」
座りそうになりながら耐えるキュードラ伯爵。
「ムムム、皆で吾輩に嫉妬している……嫉妬されるのは強者の宿命……」
キュードラはゆっくりと皆を見渡して、徐に宣言する。
「わかりました。吾輩の新必殺の準備が整うまで、皆さんにお任せしましょう 」
「なんだと!!」
ガシュ!!
よそ見した獅子王にナイトの横薙ぎの剣が決まる。
「また変な技を思いついたでござるか!!」
ズガッ!!
リヤの一撃がケンマロの右肩を破壊する。
ニトラルとネタギーレンは睨み合いを続けている。
「お主は動揺せんのかの 」
「妾は慣れているの。キュードラ伯父さんのボケに耐性があるのよ 」
「……くくく、今度は何を見せてくれるのだ……キュードラよ……」
ムフフ、吾輩に皆の熱い視線が集まっておる。それでは新必殺技を披露するか……
キュードラは左手で右手に傷を付ける。
「血の大鎚」
キュードラの右手から血が溢れ出して、巨大なハンマーが形作られていく……そして大量の血を失い顔が青ざめていくキュードラ。
「おぉーっ、自分自身と同じくらいの大きさのハンマー。流石キュードラさんでごさ〜る!!」ドーシャが歓喜の声を上げる。
フラフラになりながら血の大鎚を持ち上げるキュードラ。
貧血とハンマーの重さでフラフラになりながら、一歩ずつナイトに近づいていって……ハンマーを振り下ろす!!
サッと避けるナイトと獅子王。
ドガーン!!
床が砕け散った。
「馬鹿野郎!!俺に当たったらどうするんだ!!」
ブチ切れる獅子王。
「ハァハァ、なんたる重量……当たれば一撃必殺は間違い無し……」
聞いてないキュードラ。
「……見事だ、キュードラ。決めてみせよ…… 」
無責任な事を言うエタール。
「ムムム……ムムム……ムムム、ふんっ!!」
またもフラフラになりながら、血の大鎚を持ち上げるキュードラ。フラフラしながらナイトと獅子王に近づいて行く。
「フラフラしながら近寄って来るんじゃねーよ!!」
キュードラに視線を向ける獅子王。
ナイトは注意がそれた獅子王の背中に抱きつく。
「俺もろとも打てーっ」
獅子王の声色を真似て叫ぶナイト。
「はい??」唖然とする獅子王。
あれ?捕まってるのが獅子王だよね、これは一体?と目の色を白黒させるキュードラ。
「今よ!!キュードラちゃん!!」
ネタギーレンの声真似をしたリヤが叫ぶ。
「はっ、死ね、ナイト!!」
ネタギーレンっぽい声に反応して、反射的にハンマーを振り下ろすキュードラ。
その瞬間、ナイトは獅子王から離れる。
ドガーン!!!
獅子王の頭にブラッディハンマーが炸裂した。
「テンパるなら……一度立ち止まれや……」
獅子王は力尽きて倒れた。