100年前の大戦編2 天運召喚門
「……また駄目か……やはり捧げ物無しでは無理か……しかし余のお宝は既に……」
エタールはナイトと剣をぶつけ合いながらも、独り言が止められない。
「……どれだけスケルトンが好きなのだ……この世界は……」
エタールとナイトが撃ち合う間に、リヤとニトラルは呪文の詠唱を始める。
「結ぶと離つは裏表、世界の果てと果てを繋ぎ、そして分けよ。断界剣!!」
リヤが魔法で剣を作り出す。
「……人生で一番の当たりがビッグスケルトンって……酷くないか……ナイトよ……」
「知らんわ!!」
ガチーン!!
二人の剣がぶつかり合う。
リヤがエタールの背後から音も無く迫り行く。心臓を一撃、その瞬間。
「えた〜る様〜」
エタールの影から女性っぽい吸血鬼が飛び出した。
「大魔王軍 特務部隊 隊長 ドーシャ参上でございます〜る!!」
ドーシャはリヤの剣を短剣で受け止める。
「ブラドラさんがお宝をいっぱい貯め込んでござ〜る!!」
「なに!!国の財産は儂の財産、ブラドラの財産は国の財産という事か!!」普段のゆっくりとした語りが異様に早くなるエタール。
「はい〜!!」
「舐めるな!!」
「トドメじゃ!!轟雷」
ナイトの剣がエタールの体を切り裂いて、ニトラルの雷魔法がエタールの心臓を貫いた。
「え、えた〜る様〜!!」
静かに倒れゆくエタール。その顔は笑顔だった。
「……ロード……」
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セントラル中央平原 南端部
ライオンの頭に、山羊の胴体、熊の腕、蛇の尻尾、コーギーの足を持つキメラ伯爵が、爆炎の中から姿を現した。
「残念だったな。エタール様から拝領した、この鎧には一切の魔法が効かぬ」
キメラ伯爵は禍々しいオーラを纏った剣を高く掲げる。
「腐敗剣。エタール様から拝領した『全てを腐らせるこの剣』で、あの世に旅立つがよい」
魔法使いの一団が命を散らした。
「伯爵様!!」
キメラ伯爵の前に部下が駆け寄って来る。
「どうした?」
「あれを!!」
部下は上空を指差す。
セントラル中央平原の上空に10個の不気味な召喚門が現れつつあった。
「エタール様の天運召喚門か!!しかし10個同時展開とは……」
「ス、スケルトンが!!」
10個の門からスケルトンの頭が出てくる。
キメラ伯爵と部下は顔を見合わせる。
「総員、上空からの落下物に注意!!」
キメラ伯爵は部下達に指示を注意を促すと、敵陣の厚い部分に突撃して行った。
「騎士王様!!」
混戦の中を伝令が駆け寄っで来る。
騎士王は手で伝令を制する。
「上じゃな。スケルトンだな」
「はい!!」
「総員、上空からの落下物に注意。かれこれ20回近く召喚門からスケルトンが降って来ておるからの。皆、わかっているとは思うがな」
騎士王は上空を見上げる。
「とは言え、確率的にはそろそろ危なさそうじゃな……皆に注意を促してくれ」
「はっ」
伝令は駈け去って行った。
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大魔王城にて
「……世界は理不尽とは思わぬか、ナイトよ……」
エタールが横薙ぎの剣を放つ。
ガンッ!!
ナイトは剣で受け止める。
「……余はこの理不尽に腐った世の中を正す……ブラドラのお宝は使い果たした……ドーシャよ。誰かお宝を隠し持っておらんのか……」
ドーシャはリヤと剣で撃ち合っていた。
「え、え〜っと……」
動きが落ちたドーシャに、ニトラルの轟雷が迫る。
とぅっ!!
ドーシャは高くジャンプして轟雷を躱す。
「ドーシャよ!!」
目を血走らせてエタールが詰める。
リヤが断界剣を振ると、世界が割れてドーシャの片腕を切り飛ばした。
「ドーシャ!無いのか!!」
「く〜っ、エタール様はガチャりだすと他に目が無くなるから〜」
ドーシャに注意が向いたエタールの背後から、ナイトが横薙ぎの剣を放つが、エタールは背を向けたまま剣で防ぐ。
「そ、そうだ。キメラ伯爵ちゃんに授けたご褒美。腐敗剣と魔法無効の鎧はいかがですか〜」
「……そんなSSランクの装備を……授けた記憶はないぞ……」
「雷鞭」
ニトラルの電撃の鞭の横薙ぎがドーシャに直撃する。
ビガガガガッ!!
「宝物庫の好きなお宝……持っていけと言ったじゃないですか……」
ドーシャは黒こげになって力尽きて倒れた。
「……まだ死なれては困るな……」
エタールはドーシャの元に向かう。
「行かせん!!」
ナイトが剣で襲いかかるが、エタールは右手の剣で受け止めて、左手で連続爆炎魔法を放つ。
ドガガガガーン!!!
ナイトが爆炎に吹き飛ばされ、リヤが回復に向かった。
「エタールよ。貴様の謎は解けたぞい」
ニトラルがエタールの前に立ちはだかった。