空飛ぶ壺編3
「スキュポスに搭載されたオンリーワン機能、それは魔法 光学迷彩機能と言います」
「魔法 光学迷彩機能?」
ミーネとココが顔を合わせる。
「はい、魔法で周辺の景色に化ける事によって見えないようにするのです」
「カメレオンのような物なんか?」
「はい。空では空の色、森では森の色のように周辺の景色に溶け込む事が出来るのです。これによって気がつかれずに物資の輸送が出来るのです」
「凄い機能やないか、さすがワイのスキュポスや」
「ただし一点だけ問題があるのです」
「何や?」
「スキュポスが荷物を手に持った状態で移動中に透明化しても、荷物は透明化しないのです」
「それはそうやな」
「すると荷物が空を飛んでいるように見えてしまいます。すると敵の注目を余計に集めてしまうのです」
「そうね。敵さんもビックリしちゃうわね」
ミーネが相槌を打つ。
「そこで50倍モースキ君の出番になるのです」
「何やて?」
「光学迷彩機能を使用してもペンキで書かれたモースキ君は当然消えません。するとモースキ君が荷物を運んでいるように見えるのです」
「そうなの?」
テッドが声を上げる。
「はい、頑張り屋さんの巨大な蚊が一生懸命荷物を運んでいるように見えるのです」
「そんな蚊いるんかいな?」
「いるかも知れません……」
「見た事も聞いた事もないで」
「僕も見た事も聞いた事もありません。ただ想像して見て下さい。一生懸命に荷物を運ぶモースキ君の姿を、感動する事間違いなしです」
「そんな奴はおらへん。ワイは断言するで、そんな奴がおるはずが無い。もしいたらモースキ君のデザインのままでええで」
「けっ……健気なモースキ君……」
ドーナン君が腕で顔を隠す。
「か……感動で震えが止まらないのであります……」コーディ君が震えながら膝をつく。
「嘘や!!絶対嘘や!!ドーナンはん、顔を見せるんや!!」
「モ、モースキく〜ん!!」
ドーナン君は顔を隠したまま部屋から走り去った。
ウルフンはキッとコーディ君を睨みつける。
「コーディはんは、いつも震えているやないか!!」
「わ、わ、わ、私は感動で震えが止まりませ〜ん!!」
コーディ君は猛ダッシュで部屋から走り去った。
「ちょ、ちょい待ちなはれ!!」
「ウルフンさん、そんな事より、スキュポスの必殺技を知りたくないですか?」
「なんやて?」
「スキュポス ローリングアタック。二本の剣を装備したスキュポスが回転しながら敵に突撃する技です」
「アイドル戦士テツコの土星突進みたいなもんか」
「アイドル戦士は知りませんが、敵の大群に突撃して真っ二つに切り裂く、スキュポスに乗るウルフンさんの姿が目に浮かぶようです」
「ワイが先頭に立って皆を率いて行くんやな。う〜ん、ワイはカッコええな」
「そして、そこにはモースキ君のデザインが付き従います」
「ま、ええで。ワイはスキュポスの専属パイロットになったるで。エースパイロットはワイや」
「ありがとうございます、ウルフンさん。」
アーダ君とウルフンは固く握手をした。
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「テッド君、ウルフン君、ココ君、ミーネ君。これから君達には、中央大陸セントラルに向けて出発してもらう。テッド君はいつものスタンバイを頼む
ウルフン君達はここで壺に乗ってもらって、テッド君の後に続いてもらう」
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テッドは使い慣れたカタパルトに足を置く。他の3人は初フライトだ。経験者としての責任は重い。
テッドは発進に備えて中腰になる。
前方の扉が開き、進路の誘導光が付く。
「進路確保確認」
「魔力充填80%」
「リミッター解除」
「セントラルに着くまで君が先頭になって、みんなを率いてくれ。頼んだぞ。あと皆が来るまで上空で待機していてくれ」
「魔力充填90%」
「健闘を祈る。」博士がグッドラックの合図をだす。
「魔力充填完了」
「システム オールグリーン!!」
「ファイヤーパンツ 発進します!!」
シュゴゴゴゴーッ!!
ドーン!!!
テッドは大空に飛び出した。
3人は壺に乗ってふわふわ浮いていた。
「よし、ココ君、ミーネ君、ウルフン君の順番で出発だ。出口はあっちだ」
博士は空いたドアを指差す。
3人はふわふわ浮きながら建物の出口についた。博士達も付いて来る。
「それでは博士行って来ます」
「健闘を祈る。皆を頼んだ」
博士はグッドラックの合図を出す。
ココは挨拶をすると空に浮かんで飛んで行った。
「ミッションを果たして必ず帰ってくるわ」
「期待している。健闘を祈る」
博士はグッドラックの合図を出す。
ミーネもグッドラックの合図を返す。
ミーネは助手達にもグッドラックのサインを出すと、空高く浮かんで行った。
「ワイの出番や」
「ウルフン君、君には重要なミッションを頼みたい」
「重要なミッション、ワイにしか出来ない事やな。ワイに任せとき」
「ジョーシュ君、みんな。あれを持ってきてくれ」
「ウルフンさん」アーダ君達が大きな袋をいっぱい持ってくる。
「なんや?その袋達は」
「水や食料等です。輸送艦スキュポスのお仕事です」
アーダ君が笑顔で答える。
「……ワイは輸送中に攻撃を受けたら、どないすればええんや?」
「蚊のようにふぃ〜んと逃げて下さい。これこそモースキ君のデザインが必要な理由なのです」
アーダ君は笑顔で胸を張った。