空飛ぶ壺編1
「よし、話は済んだみたいだな。それでは、今後の計画について説明をしたい」博士は皆を見渡す。
皆が頷く。
「皆も知っていると思うが、王様連盟と同盟勢力は大魔王エタールの支配する中央大陸セントラルへの侵攻を開始した。これは100年ぶりの事だ」
「100年ぶり?」
テッドが呟く。
「そうだ。君達の生まれる遥か昔の話だね。当時のセントラルは、多くの人間や魔族の国が争う群雄割拠の時代だったんだ」
「魔法学院の公開講座で聞いた事があるわ。エタールが急激に力を伸ばして勢力を伸ばしていったって」
「そうなんだ、ミーネ君。エタールは次々と周りの国々を滅ぼして勢力を伸ばしていった。王様連盟は人族の国々を救う為に救援を出した。それが100年前の事だ」
「それで、どうなったんや?」
「王様連盟とセントラルの人族連合軍は、大魔王エタール率いる軍と決戦して敗北した。
大陸に残された人々は西岸の小さな半島に城塞国家を作り、長期間に渡り抵抗を続けているんだ」
「それが何故、今になって再侵攻するんや?」
「使節が来たんだ。100年間半島に結界を張り続けた賢者様と、半島から出て人々を助け続けていた騎士王様の寿命が尽きてしまいそうなんだ……」
「八賢者のリヤ様と、騎士王ナイト様ですね。御二方の物語は、私も大好きですわ。」
ココが話に入る。
「そうだ。ただ魔族に比べて人の寿命は短い。リヤ様もナイト様も、もう百歳を遥かに超えていらっしゃるんだ。特にリヤ様はもう長くないらしい……」
「リヤ様が亡くなられたら、あの規模や強度の結界を張れる者は存在しません。」
「そうだ。大魔王軍に抵抗するのは不可能になってしまう。死ぬか奴隷の2択だ……」
「それで救援に行くのが目的なわけか……じゃあマッドマキシマムってのは何なんだ?」
テッドが博士に質問する。
「我々はリヤ様が亡くなられる前に、城塞国家の人々を我々の国に引き取りたい……しかし大魔王軍が追撃のチャンスを見逃すとは思えない。その為には大魔王軍を引き付ける存在が必要なんだ……」
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「具体的な話は総司令官のメガネ君に聞いて欲しい。総司令官は既にセントラルに到着している頃だ。
それで君達にはここからセントラルに向かってもらうわけだが……格納庫に向かおうか」
ワイ達は格納庫に向かったんや。
「どうしたんや?テッドはん。なんか顔色が悪いで。ワイの口吻の件ならハムギフトで大丈夫やで。」
「うん。マッドマキシマムが心配になったんだ。変な奴らだったけど悪い奴らではなかったからね。」
「シュラオンはん達かい、死兵だったんやな」
「うん」
テッドは頷く。
「死兵とは何なのですか?」
コーディ君が震えながら聞いてくる。
「死兵とは囮なんだけど、一番危険で生き残る可能性が少ない……いや、生き残る可能性がほぼ無いものを指すんだ」
「テッドはん、ワイ達が早く参戦してマッドマキシマムも助けるんや。それしか無いで」
「うん、そうだね。」
テッドは強く頷いた。
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格納庫にて
「ウルフン君、ココ君、ミーネ君。君達のネタギーレン戦の活躍に対して王様連盟より褒美の品を預かっているんだ」博士が3人を見渡す。
「え……俺は?」テッドは自らを指差してアピールする。
「テッド君、君の分は向こうの世界のテツコ君が受け取り人だ」
「……」
「ジョーシュ君、頼む。」
「はい、ポチッとな」
ジョーシュ君がボタンを押すと、床が開いて3つの壺が出て来た。
「これが、王様連盟技術部が総力を挙げて開発した空飛ぶ壺だ」
「おぉーっ!!なんかフワフワ浮いとるで!!」
「それぞれ形やデザインが違うわね!」
ウルフンとミーネは興奮気味に話している。
「実はそれぞれに専用機として開発してあるんだ。ドーナン君から順番に紹介を頼む」
ドーナン君が赤い機体に黒い龍がデザインされた壺の前に立った。
「フライングポット1号機 灼熱の黒龍号ですな。獄龍波による複数対象への自動攻撃機能を搭載し、高速移動に特化した高速戦闘機であります。」
「おぉーっ!!」
ミーネが目を輝かせて聞いている。
「パイロットのミーネさんのイメージカラーの赤に、必殺技の黒龍をデザインした情熱的なマシンでございまする。」
「いいね、いいね。気にいったわ。ありがとうね、ドーナンさん」
「恐悦至極でございまする。」
頰を赤く染めてドーナン君は答えた。
「次は私ですな。」
コーディ君が前に出る、震えが止まった。
「フライングポット2号機 ナイトスノーであります。自動結界機能による強力な防御力と、ビーム攻撃が出来る魔法ミニポットの作製機能を備えた、空母タイプの司令官機でございまする」
「ミニポットはどこにあるんですか?」ココは確認を求める。
「はい、ココさんのイメージカラーの青をベースに白い雪をデザインしてあるのですが、その白い雪から現れる使用になってございまする」
「なかなか可愛いデザインですね。ありがとうございます、コーディさん」
「恐悦至極でございまする」
震えながらコーディ君は答えた。
「次は僕ですね。」
アーダ君が颯爽と出て来る。
「よっ!待ってたで、アーダはん」
「フライングポット3号機 スキュポスです。」
「スキュポスって……何や?」
「スキュポスは遠い異世界の古い時代の、取っ手が2つ付いたワイン用の酒杯です。ワイン通にはたまらないデザインです」
「ワイとの関係は?」
「ありません」
「……」