異世界転移 帰還編1
「なんや、なんや。この機械でどうすれば帰れるんや?」
「ふふ、君に左の水槽に入ってもらって、スイッチを押すと右の水槽に吸い込まれる。右の水槽から外に出ると元の世界というわけだ」
「こんな細いパイプを通れるのかしら?」ミーネが博士に質問する。
「簡単に言えば、このパイプの入口がブラックホールで、出口がホワイトホールなんだ。
吸い込まれたウルフン君は素粒子レベルまで分解されて、出口で魔法で再構成されるんだ」
「こちらの世界のウルフンさんがあちらの世界に戻るとして、あちらの世界のウルフンさんはどうなるのですか?」ココが首を傾げながら尋ねる。
あちらの世界のウルフン君も同時刻に反対側の水槽に入る予定だ。それによって2人のウルフン君がお互いに元の世界に戻るんだ」
ふぃ〜ん
「わかったで。ほんなら、ワイは戻るで。」
「ありがとうございました。ウルフンさん。」
テツコはんが涙を凝らえながら手を出してくる。
「テツコはんとホワイティには、戻っても会えへんからな。それだけが残念や」
「またいつか、遊びに来て下さいね」
「約束するで。ワイは必ず戻って来るで」
ワイとテツコはんは再び固く握手をしたんや。
「そうだ、大事な事を忘れていた」
感動の場面に博士はんが割り込んできたで。
「ウルフン君、君の死に戻りの能力は、向こうの世界に戻ったら無くなると考えられるんだ」
「え、そうなんか?」
「ああ。異常は、通常に収束する。星屑の巫女様からの伝言だ。くれぐれも命を軽んずる事の無いようにして欲しい」
「わかったんや、命を大事にするで。」
「ウルフンさん、お元気で」
「ウルフンさん、頑張ってね」
ココはんとミーネはんも涙ぐんでいるんや。
「ありがとうなんや。戻って来たワイとも仲良くしてやって欲しいんやで」
「はい」
「うん」
ココはんとミーネはんとも固く握手を交わしたんや。
「それではワイは戻るんやで、さいならや」
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ワイはみんなが見守る中で水槽の中に入ったんや。水槽と言っても中に水は入ってないんやで。
ガタンとフタが閉まる。
博士が右手を高く掲げる。
ふぃ〜ん
変な音がする。
「さよならだ、ウルフン君。ポチッとな」
ワイは光になってパイプに吸い込まれる時に、確かに見たんや。
???……蚊が飛んでる……
「ちょ、ちょ、ちょっと待つんや〜」
ワイは意識を失った……
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ガタン……シュー
異世界転移機の扉が開くと、モウモウとした煙が溢れ出した。ワイも飛び出す。
あれ、ワ、ワイは?
ブィィ〜ン
ブィィ〜ン
ブィィ〜ン
ワイは巨大な青い蚊になってしもうたんや……
前を見るとテッドはんが駆け込んで来る。
「迅雷剣!!」
マンネリ技を放ってくる。
ワイはふぃんと避ける。
「〒<%$☆々^」
「くっ、音声攻撃ね……」
ミーネはん、どうしたんや。ワイは助けて欲しいんや。
「#×*○〒々€*」
「え〜い!うるさい!!」
テッドはんが片足立ちして両腕を高く掲げた。
あれは、まさか迅雷剣 雅。あんな恥ずかしい技を食らって死ぬわけにはいかないんや。
「天極結界 縛り」
ココはんがワイの動きを封じ込めてきた。
身体が、ま、まったく動かないんや。
「♪○☆%♪」
テッドはんが手首をキュッと内側にまとめた。
「迅雷剣!雅」
テッドは片足で飛び上がった。
「♪○☆%♪」
「☆¥÷○%=^々」
「やめて下さい!!!」
博士の助手の一人がワイの前に立った。
「アーダ君!」博士が飛び出した助手の名を呼ぶ。
テッドはんは着地して剣を収める。
「博士……この蚊は、この蚊は、僕の放し飼いにしていたモースキ君です。逃げられたと思っていたのですが、帰ってきてくれました。」
「#☆♪*」
「モ、モースキ君、こんなに大きくなって……」
アーダ君は涙を流しながらワイを抱きしめてきたんや。
こ、こいつのせいでワイはこんな酷い目に……血を吸ったれ。
ブスッ
「ぎゃああぁあぁ!!!」