決戦 ネタギーレン編5
「えーい!妾を謀るか!!」
ネタギーレンは血の鞭で横薙ぎする。
後方に舞うようにジャンプして躱すテツコ。
着地したテツコは剣を高く横向きに掲げて、クルンクルンと回転を始める。
「心許なきもの、勇者語大賞、勇者ランドのオープン、ホワイティの目覚め……」
「こ、心許なきっちゃー、待ち遠しいって事や……」役割はしっかりと果たすウルフン。
「ほざけ!!血の鞭」
ネタギーレンの鞭が、テツコの心臓目掛けて放たれる。
ズガッ!!!
鞭はクルンクルンと夢中になって回転するテツコの鎧を突き破り、心臓に突き刺さる。
「テツコさん!!」ミーネとココが叫ぶ。
「大丈夫や、よく見てみい……」
「ホ、ホワイティ!!」ミーネは目を凝らして確認する。
割れた鎧の間から小さな白い手が見える。
「巻き込めホワイティ!!」
テツコの指示に合わせて、血の鞭を巻きながら引っ張るホワイティ。
一気に引っ張られて体制を崩すネタギーレン。咄嗟に鞭から手を離すが……
「妾の負けのようね……」
既に両手をホワイティに捕まれており、冥府の入り口に向けて引っ張られる。
「さよならね……」
ネタギーレンは、冥界の門に引きずり込まれた……
「まだや!!」
ウルフンが冥界の門に手を突っ込む。ゆっくりと手を出していくと、ネタギーレンの赤いハイヒールを履いた足が出てきた。
「降伏するんや、ネタギーレンはん。」
「ちょ、ちょっと、全身を引き出してから言いなさいよ!!」
「降伏して下さい、ネタギーレンさん!」
無視するココ。
「降伏した方がいいわよ、ネタギーレンさん。」
完全に無視するミーネ。
「さぁ、ワイとホワイティはんにカリカリ風呂を用意するんや!!」
それは違う……ココとミーネは顔を合わせる
「さぁ!さぁ!!」ウルフンはヨダレを垂らしながらネタギーレンに迫る。
スカポーン!!!
ミーネが落ちていた羽扇を拾って、ウルフンの頭を叩く。
「いてて……痛いやないか、ミーネはん。」
「ウルフンさん、ヨダレ、ヨダレ。カリカリ風呂の亡者みたいになってるわよ。」
「ワ、ワイともあろう者が……」フラフラしたウルフンの手が緩み、ネタギーレンを手放しそうになった。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと、こ、降伏するから引き出しなさいよ」
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ワイ達はネタギーレンはんを降伏させたんや。契約呪文によってネタギーレンはんが裏切る事はできない。少なくとも1年間は契約破棄は出来ないんや。
ワイのミッションは完了や。寂しくはあるんやけど、元の世界に帰らんとあかん。
テツコはんとホワイティはんとは2度会えないと考えると、少し寂しくなるんやで……
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「よく来たね、ウルフン君。」
ワイはノーミズ博士の研究所にやって来たんや。テツコはんも、ミーネはんも、ココはんも来ておる。
アライブはん達はセントラル進行に参加しているんで、こっちには来ておらへん。まぁ、向こうで直ぐに会うんでOKなんやで。
ホワイティはんはワイが帰ると聞いてから、テツコはんのポケットに隠れて出てこないんや……
「それで博士はん、ワイはどうすればええんや?またウルフン行商記の新作を投稿すればええんか?」
「残念だが……ウルフン行商記は打ち切りだ。」
「な、何やて!!今度こそはワイの昼ドラチックな恋愛劇が始まるんと違うんかい」
「ウルフン君、君がネタギーレン退治に行っている間にウルフン行商記のデータを調べたんだ。ジョーシュ君頼む」
「はい。ウルフン行商記は初日アクセス13pv 本日現在で38pvです。
そして、その前日に投稿された『勇者は魔王のご意見番〜約束はキッチリ守って頂きます〜は初日アクセス53pv 本日現在で89pvです」
「な……何ちゅー事なんや……ワイの完敗や」
「まぁ仕方がない、ウルフン君。君はボケと共にあって強く輝くのだよ。ソロ活動向きではないんだ。そうだ『伝記 ノーミズ博士』に特別出演するかい? 」
「……」
「落ち込まないで下さい、ウルフンさん。株式勇者本編のアクセスは上がりましたし、ネタギーレンさんを降伏させてミッションを成功させたのですから」ココはんがワイを励ましてくれる。
「そうね。ウルフンさんがいなかったら、ネタギーレンには勝てなかったわ」ミーネはんも笑顔で励ましてくれる。
ふぃ〜〜ん
パチン!!
なんや、まだ春先なのに蚊が飛んでおるで。
「ウルフンさん。私達を助けてくれて、ありがとうござました。」ワイとテツコはんは堅く握手を交わしたんや。
「ありがとうやで、みんな。それでワイはどうすればええんや?」
「ジョーシュ君、みんな。頼む。」
博士は助手達に指示を出す。
ジョーシュ君達が壁際にあった機械に掛けられていた
布を外す。すると密閉された縦長の2つの水槽が、パイプによって繋がった機械が現れた。
「これこそ、我々の開発した異世界転移マシーンだ」
博士がドヤ顔で紹介した。