決戦 ネタギーレン編4
「死ねぃ」
ネタギーレンはんが、ワイの目の前から消える。
「ウルフンさん!!後ろ!!」
ミーネはんの声に反応して、ワイは前方に転がった。
シュン!!
ネタギーレンはんの羽扇の横薙ぎが、さっきまでワイの首があった場所を通り過ぎる。
「迅雷剣!煌めき!!」
ワイに代わって、テツコはんがネタギーレンに迫る。
ガン!!
ガン!!
ガン!!
ガン!!
テツコの剣とネタギーレンの羽扇がぶつかりあう。
「血の鞭!!」
左手から血の鞭を現出させたネタギーレン。
「せいっ!!」
血の鞭がテツコの剣に巻きつく。
「せいっ!!」
血の鞭がテツコの剣を奪い取る。
がら空きになったテツコの首筋に、ネタギーレンの羽扇が迫る。
「テツコさん!!」ミーネとココが叫ぶ!!
咄嗟に右手を差し出して首筋をガードするテツコ。躊躇なく羽扇を叩きつけるネタギーレン。
ガンッ!!
弾き飛ばされるテツコ。
「ウルフン!フンフン拳!!」
倒れたテツコはんに代わって、ワイが飛びだす!!
「アチョチョチョチョーー!!!」
ワイの二本の腕から高速の連続攻撃が放たれる。
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「テツコさん!!」ココが倒れたテツコに駆け寄って
回復呪文の詠唱を始める。
「さすがに魔軍総督ね、強いわ。」
ミーネはテツコとココの前で守るように立っている。
「はい。テツコさんにも、ウルフンさんにも天極攻撃力と天極防御力の10倍を掛けていたのですが……」
回復呪文の詠唱を終えたココが答える。
「アチョチョチョチョーーー!!」
「くっ、力の抜ける掛け声をしおって!!」
「でも、ウルフンさんが互角に戦っているわ」
ミーネは目を輝かせて勝負を見守る。
「うっ……」テツコが目を覚ます。
「テツコさん、大丈夫ですか。」
「はい。ありがとうございます。」
ドーン!!
入口の扉の方から大きな音がする。
「炎龍結界を張ってあるから、扉が無くても大丈夫だけど……長くは持たなくなるわ。」
「アチョチョチョチョー!!」
連続攻撃でネタギーレンを壁際に追い詰めるウルフン。
「アチョー!!」
顔面を狙ったウルフンのパンチを、ネタギーレンが首を捻って避ける。
ドゴーーン!!!
後ろの壁に大きな穴が空く。
「すごいわ!ウルフンさん!!」
ミーネが歓声を上げる。
「異常な破壊力ね。ウルフンさん。どういう事かしら?貴方の攻撃力が上がっているわね」
「はぁ、はぁ」
「あら、あら、お喋りな狼さんがお喋りしてくれないのかしら?」
ウルフンは再び攻撃を開始する。
「アチョ、チョ、チョ、チョーー!!」
「威力は上がっているけれど、動きが遅くなって来たわね。」ネタギーレンはウルフンの攻撃を躱す。躱す。躱す。
「わかったわ。貴方、魔法拳士ね。その不思議な掛け声で魔力を練って攻撃力を上げているのね。ただ、そろそろ喉も体力も限界のようね」
「ワ、ワイは孤高の魔法拳士ウルフン。ワイの役割はここまでや……あとは頼んだでテツコはん……」
ウルフンは力尽きて倒れた……
テツコが立ち上がり、剣を構える。
「ありがとうございます、ウルフンさん。整いました。冥界戦士テツコ 改め 冥界剣姫テツコ、参ります!!」
テツコは真っ直ぐにネタギーレンの元に駆け寄り、ネタギーレンは羽扇の横薙ぎで迎え撃つ。
「テツコさん!!危ない!!」
ミーネが叫ぶ。
テツコは軽やかに高く舞い上がり、攻撃を躱す。
「迅雷剣!歌詠み剣舞!」
何を言っているんだ、とネタギーレンは思う。
テツコはネタギーレンの後ろに着地し、再び高く舞い上がる。
「うつくしきもの、朝のテツコと、白き犬、ウルフンの目玉……」
ネタギーレンは首を上に向けテツコを見つめて、様子をうかがう。
「何なの?」ミーネがココにたずねる。
「テツコさんは古文っぽい歌を読み始めました……何がしたいのかは、私にもわかりません。」
「う、うつくしきものとは、かわいいものという意味や……」倒れ込んだままウルフンが説明する。
「血の鞭」
ネタギーレンが鞭を真っ直ぐにテツコに放つ。
舞うように避けるテツコ。
「あさましきもの、ブービーの尻、キュードラの罠、タウラーの最後……」
「ゴ、ゴホゴホ……あ、あさましきものとは、呆然としてしまうものっちゅー事や……」
無理に解説しなくていいから……ココはそう思った。