魔界列車編2
「タウラーは見事な指揮で魔牛を操って、ブービーさんをやっつけてしまったの。」ミーネは端的に語る。
「ちょい待ち、ざっくり過ぎや。ブービーはんはメチャクチャ強いでっせ。尻とか口から火を吐いて、圧勝するイメージしかないんやが。」
「前日の夜にアイスを食べ過ぎて、お腹の調子が悪くて、口からも尻からも火が出せなかったみたいね。
『くっ、お腹の調子さえ良ければ…』って言っていたわ。」
「トイレに行っときや!!」
「それでテツコさんがやって来て、迅雷剣 煌めきで攻めるんだけど、タウラーは全ての攻撃を2本の指揮棒を使って受け流してしまったの」
「どこの世界でもネーミングセンスは変わらんのやな……」
「迅雷剣シリーズを鋭意開発中です。」テツコはんが急に話に入ってきた。
「それでどうなったんや?」ワイはミーネはんに続きを促した。
「迅雷剣AからZまで開発済みです。」
「そっちやない!!」
「テツコさんは奮戦するんだけど、多勢に無勢でボロボロになってしまうの。それでテツコさんは最後の力を振り絞って最終奥義 迅雷剣Zを放つわ」
「ゼ、Zが出てくるんか?」
「Zは最後を表わす文字です。私はタウラーに向けて、全ての魔力を放出して攻撃したのです。」テツコがドヤ顔で語りだした。
「そうなの。テツコさんはZを放つんだけど、タウラーは耐え切ってしまうの。」
「えらい、強いな。タウラーはんは。ワイの世界では聞いた事がないで。おそらく焼け死んどるで。」
「Zを放ったテツコさんは力尽きて、うつ伏せに倒れてしまうの。そんなテツコさんの後ろから忍びよるタウラー。」
「2本の指揮棒をお付きのミノタウルスに渡して、代わりに斧を貰ったタウラーは、斧を振り上げてトドメをさす体制に入ったわ」
「『死ね、テツコ。地獄に落ちろ!!』タウラーが斧を振り下ろそうとした瞬間。テツコさんの頭上に冥界門が現れたの。」
「はい??」
「テツコさんの頭上に現れた冥界門がゆっくりと開くと、真っ白い手が大量に出て来て、魔牛の大群を次々と飲み込んでいったの。」
「タ、タウラーはんは?」
「逸早く逃げ出したタウラーなんだけど、慌てすぎて転んでしまって……白い手に捕まって引きずり込まれていったの。「うわー何だ、これはーっ!」とか言っていたわ。」
「お、お前も知らんのかい!!」
ワイはこの話しを聞いて重大な事に気がつく。
「ちょい待ち!じゃあこの手はテツコはんの魔力で操っているんじゃないんかい!」
「はい。私の魔力ではありません。おそらくタウラーが間違えて召喚したのではないのかと。」
「そんなヤバイ怪物を放置したらあかんやな……」
「ぐえっ!!」
白い手がワイの首を強く絞める。
「ホワイティ!!やめなさい!!」
テツコはんがホワイティ?を注意すると、ワイを絞める手が緩くなった。
「ゲホ、ゲホ。」
「大丈夫ですか?ウルフンさん。」ココはんが心配そうに聞いてくる。
「ダメよ!!ホワイティ。ウルフンさんをイジメちゃぁ」ミーネはんもホワイティを叱ってくれる。
「つーか、ホワイティって誰やねん!!」
「ウルフンさん、すみません。テツコさんは、白い手からホワイトの手、ホワイティと名付けたんです。」
ココはん、ワイも実はわかってたで。
「はい。その後でずっと付いてくるものですから、博士に相談したんです。そうしたら色々と実験してくれまして……」
「そうなんか。博士はんも科学者やからな。しかしホワイティはんで実験するっちゅーのは凄いわな。」
「結果、冥府の底的な感じからして地獄の番犬的な何かではないのかと。それで犬用のカリカリを与えたら懐いてしまいまして。」
「なんやて!!」
「どうしたんですか?ウルフンさん。」ココはんが不思議そうな顔で聞いてくる。
「ワ、ワイと一緒や。ワイもカリカリが大好きなんや。」
「そうなのね。ウルフンさんとホワイティはお友達になれるわね。」ミーネはんが嬉しそうに言ってくる。
「そうやな。ばぁやと猫とは友達にはなれへんが、ホワイティはん、あんさんとは仲良く出来そうや。」
ニョキっと白い手がもう1本、ウルフンの前に現れる。
ガシッ!!
ワイとホワイティはんは堅く握手をしたんや。
「さぁ、ホワイティはん。一緒に、ばぁやと猫を倒しに行こか!!」
「……」
「冗談や、冗談。新コンビ、ウルフン&ホワイティの爆誕や。誰にも止められへんで。待っておれ。ネタギーレンはん。ワイ達のコンビネーションプレーをじっくり拝ませてやるで!!」
パチパチパチパチ…
ココはんとミーネはんが拍手する。
テツコはんは仏頂面や。
「すまへん、すまへん。ウルフン&ホワイティ&テツコや。最強トリオの爆誕や。」
「ココさんやミーネさんも…」テツコはんが気を使う。さすが女の子や。空気の読めへんテッドはんとは違いまっせ。
「ほな、ウルフン&ホワイティ&テツコ&ココ…」
「いえ、私達は……」
「結構です。」
丁重にお断りされた。
「ま、まもなく〜、ネタギーレン城駅〜。お、降りのお客様は〜、忘れ物など〜、無いように〜、お願いします〜。」
車内放送が流れて目的地への到着を告げた。