魔界列車編1
馬車がたどりついたのは、大森林の端にある寂れた村やった。
「この村でええんか?」
「はい。この村には大森林の向こう側にある魔族領に繋がる列車が走っているんです。」手帳を見ながらココはんが答える。
「それで、【ネタギーレン城 】駅で降りて徒歩1分だそうです。」
「ま、まさか列車に乗って敵の本拠地に乗り込むんかいな?」
「はい。」
「だったら勇者をドンドン送り込めば、あっという間に制圧出来るやないか!!」
「ウルフンさん、ウルフンさん。」
ミーネはんがワイの肩を叩いてくる。
「あれを見て。」
ミーネはんが指差す方向を見ると、列車があって何か看板がついておった。ワイは目を凝らして見てみる。
【女性専用列車】
「じょ、女性専用の列車なんか?」
「そうなんです。魔族と王様連盟が停戦して、平和条約を締結した時に作られた路線なのですが、戦争が再開された今も使われているんです。
ただしお互いにリスクを減らす為に、女性専用という条件付きになったのです。」ココはんが説明してくれる。
「そうなんか、ネタギーレンはんは女性やから自由に乗れるメリットがある。我々も交易や外交なんかで利用価値がある。だから女性専用列車になったんか。」
「はい。お互いに大森林を越えるのは大変なので、そこが妥協ラインになったようです。」ココはんが解説してくれる。このパーティの解説役やな。
「この列車に乗る為に、テッドはんでは無くてテツコはんが必要やったんやな。」
「はい。男性は魔法の改札を通る事ができないんです。」
はっ!!ワイは重大な事に気がついた!!
この計画はワイも女体化しないと成り立たへん。
ワイはキュートやけどガールでは無い。ワイはセクシーやけどレディでは無い。みんなはワイに魅力されて、ワイが女性やと思っているんや。
「み、みんなに聞いて欲しいんや。ワ、ワイはキュートやけどガールではないんや。」
みんながワイに注目する。
「ワイはセクシーやけどレディではないんや。ワ、ワ、ワイは男なんや。」
「ウルフンさん、ウルフンさん。」
ミーネはんがワイの肩を叩いてくる。
「すまへん…ミーネはん。ワイがキュート過ぎたばっかりに…」
「あれを見て。」
ミーネはんが指差す方向を見ると、列車があって何か看板がついておった。ワイは目を凝らして見てみる。
【ペット同伴可】
「ワイはペットかい!!」
「まぁまぁ、行きましょう。」ココはんが皆を促す。
ワイ達は改札を通ってホームに着いた。
ピーッ!!
スケルトンの駅員が警笛を鳴らしてワイ達の所へやって来た。
「すみません。ペットの放し飼いは禁止されていますんで」
「な…なんやて!ワイをペット扱いした上に、鎖につなげと言うんかい!ワイの堪忍袋の尾が…」
「ぐえっ!!」ワイの首を後ろから何かが絞める。
「ありがとうございます。列車を降りるまで、そのままでお願いします。」スケルトンの駅員は去って行った。
「な、何なんや?」
ワ、ワイは何か生暖かいものに首を絞められている。
「ウルフンさん、ウルフンさん。あれを見て」
ミーネはんが列車の窓を指差す。
「尻から出た白い手やないか!!」
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ガタンガタン……
列車は真っ暗な大森林の中を走り続けていた。ワイは白い手に首を絞められたまま、駅弁を食べていた。
「なぁ、テツコはん。教えて欲しい事があるんや。前方に冥界門を開けばええやないか。そうすれば尻から手が出たなんて言われへん。」
ワイはテツコはんをしっかり見つめる。言いにくい事を隠さずに忠告するんが親友や。
「ワイも尻から出た手に首を絞められている、なんて言われへん。その方がええやないか。」
テツコはんは窓を見つめたまま、こちらを見ない。
「ウルフンさん。テツコさんが後ろに冥界門を出すのには理由があるの。」ミーネはんが話に入ってくる。
「そうですね。私達はチームなので、ウルフンさんも知っておいた方がいいですね。」ココはんがミーネはんに続きを促した。
「あれは城塞都市防衛戦の時の事ね。私達 パーフェクトオーダーは魔牛の群れに囲まれてしまって大ピンチに陥ってしまったわ」
「ワイの世界でもそうや。テッドはんが助けにきたんやろ?」
「違うの、最初はブービーさんが来たの」
「ん?ワイの世界の話とは違うんか?」
「ブービーさんは魔牛を圧倒していたんだけど、そこに恐ろしい敵が現れたの。」
「恐ろしい敵?」
「魔牛指揮者タウラー。2本の指揮棒で魔牛を自在に操るミノタウルスなの。」