緊急特番 英雄テッド 仕事の作法2
「それでは次の話題に進めましょう。テッドさんが捕縛したキュードラ男爵、彼は実は元大魔王軍の最高幹部で、大魔王エタールの側近だったと言う情報が出ております 」
「えーっ!! 」
「さすがテッドさん!!
「すごいわ、テッドさん!!」
「どうでした、テッドさん? 」
「そうですね、強敵でした。罠を仕掛けるのが得意な奴で、我々以前にも多くのパーティが挑んで失敗していたんです。
我々も、モビーが罠にはまって人質となって、アライブとブービーが脅迫されて捕まって、大変な事になる所でした。 」
「土下座させられたんですよね ?」
「そうなんですよ、奴らは人質を取って土下座しろと脅迫して来たのです 」
「うーん、見てみたいですね 」
「はい? 」
「その、勇者の危険な現場を見てみたいのです。あ、火を出すのは止めてくださいね。皆さ〜ん、見てみたいですか〜!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
増え続ける謎の歓声。モヒカン集団から始まった謎の歓声は若い男の子や、女の子にまで広がっていた。
そして……勇気あるモヒカンの一人が先陣を切る。
「テーッド! ド・ゲ・ザ!!」
モヒカン達が後に続く。
「テーッド! ド・ゲ・ザ!!」
「テーッド! ド・ゲ・ザ!!」
「テーッド! ド・ゲ・ザ!!」
「テーッド! ド・ゲ・ザ!!」
あのモヒカン達、俺のファンじゃ無かったのかよ……
そして感染は拡大する。群衆は土下座コールを開始した。
「テーッド! ド・ゲ・ザ!!」
「テーッド! ド・ゲ・ザ!!」
「テーッド! ド・ゲ・ザ!!」
「テーッド! ド・ゲ・ザ!!」
「テーッド! ド・ゲ・ザ!!」
「テーッド! ド・ゲ・ザ!!」
「テーッド! ド・ゲ・ザ!!」
「テーッド! ド・ゲ・ザ!!」
「テーッド! ド・ゲ・ザ!!」
「テーッド! ド・ゲ・ザ!!」
「テーッド! ド・ゲ・ザ!!」
「テーッド! ド・ゲ・ザ!!」
なんなんだこいつらは……仕方がない。テッドは両膝をつき、両手をついて土下座をした。
「おぉーっ、何と美しい土下座でしょう、それでは私が実況しますので、そこから始まった奇跡の反撃の朗読劇を開始します。そこのおばあさん、セリフをお願いします 」
スタッフがおばあさんにセリフのボードを見せる。
「ハッハッハッ!!遂に、遂に!魔王軍の宿敵を破ったぞ!!これで私も伯爵だ!!」
おばあさん、迫真の演技。
「土下座から攻撃出来ぬと思ったか!! 」
おばあさんに釣られて迫真の演技をするテッド。
「ピュン、ピューン、テッドの尻から出た、極炎の矢が敵に……突き刺さる 」
棒読みの司会者タブロイ。
「な、なぜ?」
指名された、お姉さんがボードを読む。
「土下座からロックオン出来ぬと思ったか!!」
テッド魂の叫び。
「ブービーが血の鎖を引きちぎり、アライブを救出する。慌ててモビーに吸血鬼が攻撃しようとするが、その前に獄炎の矢が突き刺さる。すかさずアライブとブービーがモビーの救出に向かう 」
説明文を読むタブロイ。
「頭から、足を退けてくれるかな 」
テッドはモヒカンを睨みつける。
「ひぃっ」
モヒカンがボードを読む。
「貴様の敗因は、どんな時でも諦めない俺達、テッドorアライブを敵に回した事だ!!」
テッドは満足気に決めゼリフを決めた。
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!
会場から拍手の渦が巻き起こる。
最初は不満気だったテッドも笑顔で手を振る。参加したおばあさん、お姉さん、モヒカンも手を振る。
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!
更なる拍手が会場を包み込んだ。
「いやー、素晴らしい朗読劇でしたね 」
「土下座から始まったので、どうなる事かと思いましたが、素晴らしい出来でしたね 」
「それではテッドさん、今年の勇者語大賞の事前審査が始まっているのをご存知ですか? 」
「そうなんですか、初耳です」
「王国スポーツでは、毎年、勇者語大賞の特集や特報をしている関係で、情報が入ってくるんですよ。知りたいですか? 」
「それは勿論知りたいです。でも公開しても大丈夫なんですか? 」
「大丈夫です。この番組の為に審査委員長の許可を得ているんです 」
審査委員長……俺は少し不安になった。
「な、な、なんとテッドさんは一人で3つもエントリーされております 」
「ウッヒーッ!! 」
「ウッヒーッ!! 」
「ウッヒーッ!! 」
「ウッヒーッ!! 」
「ウッヒーッ!! 」
「ウッヒーッ!! 」
「ウッヒーッ!! 」
「ウッヒーッ!! 」
「ウッヒーッ!! 」
異様に盛り上がる観客席。
「1つ目は、やはり、俺TUEEE系の最上級の発言。誰かわかる方はいらっしゃいますか 」
「土下座から攻撃出来ぬと思ったかーっ!! 」
若い男女から声が上がる。
ダダダダダン!!
「ピンポーン!! 」
「正解です。さも土下座からの攻撃が当たり前かのような発言。敵もさぞ、びっくりしたでしょう。
2つ目は、関連した発言ですね。じゃあ、さっきのおばあさん、どうぞ!! 」
「土下座から、ロックオン出来ぬと思ったか!! 」
「ピンポーン!! 」
「いゃー、正解な上に見事な演技です。皆さん、拍手で応えましょう 」
パチパチパチパチパチパチ!!
「じゃあテッドさん、最後を決めて頂きましょう。この3つ目が勇者語大賞の大本命であります。では、どうぞ!! 」
テッドはタブロイに向けて剣を抜き、高らかに告げる。
「貴様の敗因は、どんな時でも諦めない俺達、テッドorアライブを敵に回した事だ!!」
ダダダダダン!!
「ブッブーッ!! 」
「えっ!違うの?」
「残念、ノミネートされておりません。誰かわかる方はいらっしゃいますか? 」
「ハイッ!! 」
「はい、そこの赤い髪のモヒカンの貴方、お願いします 」
赤い髪のモヒカンが前に出る。
「身体は戦士、頭は軍師とは俺の事だ!!」
スッと現れた青い髪のモヒカンが横に出る。
「聞いた事が無いが、あんまり頭は良さそうでは無いな!!」
ダダダダダン!!
「ピンポーン!! 」
「正解です。英雄テッドと宿敵キュードラ男爵の魂の掛け合いが本年の大本命であります 」
「ちょ、ちょっと待って。俺のセリフもよく聞くとカッコ悪いし、な、なんでキュードラの返しがついてるの? 」
「勇者語大賞審査委員会では、勇者の理想像として、頭脳は賢者、肉体は戦士の優秀な人材を求めています。しかし、敵ながらキュードラ男爵の発言にも一理あると判断しました 」
皆が理解に苦しむ顔をする。
「残念ながら、あまり頭が良さそうでは無いと言うことです……」
「ウッヒーッ!! 」
「ウッヒーッ!! 」
「ウッヒーッ!! 」
「ウッヒーッ!! 」
「ウッヒーッ!! 」
「ウッヒーッ!! 」
「ウッヒーッ!! 」
「ウッヒーッ!! 」
「ウッヒーッ!! 」
「ウッヒーッ!! 」
「ウッヒーッ!! 」
「皆さん、理解して頂けた様ですね。理想ではあるがカッコ悪い。しかし、それも良いと言う事です 」
お前らに言われたく無いよ……と思うテッド。
「おっ、残念ながら、そろそろお時間ですね。それではテッドさん、締めに勇者語大賞 大本命のセリフでお願い致します 」
「えっ……」
「お願いします!! 」
「か、身体は戦士、頭は軍師とは俺の事だ!! 」
「聞いた事が無いが、あんまり頭は良さそうでは無いな !!」
ズバッと決め台詞を決めるタブロイ!!
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「ヒャッハー!! 」
「それでは、またいつか、お会いしましょう。さようなら 」