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無限迷宮編1

 俺は真っ暗な迷宮の中で何日も彷徨い続けていた。

 命綱の光はファイヤーパンツを常夜灯モードにして、最低限の魔力で蛍のように薄っすらと光らせる。

 もしも魔力切れを起こしたら2度と地上に戻れなくなるだろう。


「お腹が減ったな……」俺は座ってチョコを食べる事にした。水はダンジョン内に複数の水場があるのでなんとかなりそうだが、食料は残り僅かだ。このままいくと虫系モンスターを食べざる得なくなる……


「少し休むか、ブリーフワン。警戒モードで頼む。俺は少し寝る 」


「了解。マスター」


 俺は壁を背に座りこんで目を閉じた。そして、いつの間にか眠り込んでいた。


 ・

 ・

 ・

「ブービーどうだ?左の通路にはいたか?」アライブが鬼気迫る表情で問いただす。


「いえ、左は行き止まりでした。このフロアの残りは右を探索に行ったモビーしだいです 」


「くそっ!リーダーはどこまで飛ばされたんだ?もう地下30階だぞ 」


「無限迷宮と呼ばれる広大なダンジョンです。一つずつフロアをしらみつぶしに調べていくしか手はありません 」


「リーダーが飛ばされてから、もう10日も立っているんだぞ! 水や食料はこのダンジョンなら自炊出来るけど、ファイヤーパンツのエネルギーだってそろそろ尽きてしまう!!基本が真っ暗なダンジョンで光を失ったら助かる道は無い!!」


「落ち着いて下さい。アライブさん。心配してるのは、私も同じです 」


「すまない……テッドとはずっと一緒にやって来たんだ。まさかこんな所で……」


「ブービー先生、アライブさん!」


「モビー!どうだった?」


「駄目です。ただ下に降りる階段がありました 」


「仕方ない。降りよう!!」


 ・

 ・

 ・


「臭い…」俺は自分の匂いで目が覚めた。もう2週間近くパンツを変えていない。毎日、香水を振りかけているのだが、効果が感じられない。


「あぁ、こんな事なら修羅の国に行くんだった……」駄目だ。ポジティブシンキングしなくちゃ。とりあえず水場に行って水分補給をしてこよう……


 ・

 ・

 ・

 地下32階。アライブは2つの階段の前で苦悶の表情を浮かべていた。一つは地下33階への階段。もう一つは地下45階への階段。それぞれの階段の前の案内板に書いてある。


「アライブさん!!」


「ブービー、そっちはどうだった?」


「水場があったくらいで、他には何もありません。アライブさん。顔色が悪いですよ。どうしました?」


「こ、これを……」アライブは看板を指差した。


「な!!」


「そうなんだ。今まではフロアからフロアへの階段は一つだけだった。だからフロアを一つずつしらみつぶしに調べていけば良かった。でも、こうやって枝分かれして行ったらキリが無い……」



「仕方ありません。最大級の緊急事態です。私が単独行動します。アライブさんはモビー君と組んで下さい 」


「しかし、いくらブービーとはいえダンジョンでの単独行動は危険すぎる 」


「私は口からも尻からも火が出せます。単独行動でならドラゴニカル ストームも使えます。リスクは承知の上です。他に手はありません 」


「しかし……」苦悶するアライブ。


「ブービー先生!アライブさん!」別ルートを探索していたモビーが戻ってくる。隣に誰かいる。


「モビー、彼は?」モビーの隣には青い毛をしたワーウルフ(狼男)がいた。


「ワイか?ワイは行商人のウルフンっちゅーもんや。そこの彼がどーしても力を貸してくれっちゅーから来たんや 」


「先生の授業で犬の嗅覚は凄いって、刺激臭なら人間の一億倍だっていうのを思い出したんだ。だから戦うのを止めて連れて来たんだ 」


「そうか!リーダーの刺激臭なら、たとえ何処にいても辿りつける 」


「モビー君、見事です。知識を実践で活かす。それが正しい学問の使い方です 」



「ちょ、ちょっと待とうや。ワイは刺激臭には弱いんや。お鼻がツーンとなるんや。ワイのお鼻はデリケートなんや。そんな危険物を嗅がせたらアカン 」


「ウルフン君。君は僕達の大切なリーダーの香りを危険物と言うのかい?」アライブの顔が険しくなる。


「いやいや、あんさんらがそう言ってたんやないか 」


「なんたる侮辱。決闘を申し込む!!」アライブは真っ白なハンカチをウルフンに叩きつける。


「何をするんや!!」


「ウルフンさん。アライブさんはリーダーが行方不明になって気が立っているんです。お礼はたっぷりしますから、どうか力を貸して下さい 」


アライブは新必殺技の構えでウルフンを睨みつける。


「わーった。わかったから剣をしまいや。ワイも商売人や。天下のテッドorアライブがスゲーお宝をくれるんちゅうやったら、協力するのも(やぶさ)かでは無いで 」


「わかった。王様連盟公認の僕達しか持っていないお宝を進呈しよう 」アライブが即決する。


ブービーとモビーは顔を合わせて頷きあう。


「よっしゃ。契約成立や。後からやっぱ止めや、とか言うても遅いで 」


アライブは共用のリュックからテッドのタオルを取り出して、ウルフンの鼻元に近づける。


クンクンクン…


クンクンクン…


「こっちや、こっちの階段から、微かな刺激臭がするで 」


「行こう!!」


必ずテッドを助けだす。3人は意を決して階段を降りて行った。




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