骨董品屋から始まる異次元生活 1
束の間の休日、テッドは一人で街に買い物に来ていた。冒険で使う薬草などを買いに来たのだ。
「うーん。だいたい必要な物は揃ったかな 」
「ニャア 」
「お、猫がいる 」
「ニャア」
猫は何か言いたげにテッドを見ている。
「どうした?」
猫はテッドを確認すると歩き出した。
テッドは釣られるように歩きだす…
猫に案内されるように迷路のような路地裏を進んで行くと、古びた骨董品屋があり、猫は店内に入って行った。
店の前で立ち止まるテッド。
すると、店内から「ニャア」の声。
「ちょっと見てみるか……」
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薄暗い店内には、古びた骨董品が山のように積まれていた。ボロボロになった魔術書、複雑な文様の刻まれた盾、錆びついた真紅の槍、巨大なクロスボウ……
俺は見た事の無い武器や防具に目を奪われていた。
「ニャア」
「お、そこに居たのか。どうした。何か買って欲しいのか?」
俺は猫の方に向かった。
俺は猫の前の棚にある物を見て目を奪われた。
「こ……こんな所で売っていたの。これ 」
そこには、宿敵マッドマキシマムのモヒー・カーンのモヒカン付きの覆面があった。
「ニャア 」
「これを買えって言うのか?」
「ニャア 」
「イヤイヤ、こんな物要らないから、誰も必要としていないから 」
「ニャア!!」
「え?どうしても欲しいって 」
「ニャア」
「えーっと、値段は・・・100万G!!」
「ニャア 」
「ニャアじゃないよ。サンマ10000尾分だぜ。サンマにしようぜ。サンマ 」
「サンマをお求めですかな……」店員らしい老婆があらわれた。
「いや、この猫がモヒカン付きの覆面が欲しいって 」
「ありがとうございます。100万Gになりますじゃ 」
「違う違う。覆面買うならサンマにしようぜって話をしてたんだ 」
「ありがとうございます。サンマ10000尾で100万Gになりますじゃ 」
「えっ、売っているの?」
「はいですじゃ。グループ企業の魚屋からお届けするんですじゃ 」
「ニャア」
「おまけを付けろと……了解ですじゃ。特別に新鮮なブリを1尾つけますのじゃ 」
「イヤイヤ勝手に話を進めないで。ブリなんて要らないから 」
「了解ですじゃ。ブリ無しで100万Gですじゃ 」
「イヤイヤ、サンマも要らないから。100万Gも持っていないから 」
「ニャア」
「うーむ、貧乏人でも大丈夫な方法・・・1日レンタルはいかがですじゃ?」
「別に貧乏人じゃないから 」
「覆面1日レンタルは5000Gですじゃ 」
「ニャア」
「ハイハイ。初回なので、特別サービスでバァバが付けてあげますのじゃ 」
「イヤイヤ、付けなくて大丈夫だから。特別サービスは要らないから 」
「遠慮は不要ですじゃ。バァバに全てお任せするのじゃ 」
にじり寄るバァバ。ビビって引き下がる俺。
「ニャア!!」
後ろにいた猫が強く鳴いた瞬間。俺は猫に目が行ってしまう。その隙にバァバは目にも止まらぬスピードで俺に覆面をつけてしまう。
「ニャア 」
満足したかのように猫は去って行った。
「あれ、外れないぞ。どうやって取ればいいんだ?」
「髪の毛を後ろにズラしてから、上に引っ張り上げれば取れるんですじゃ 」
そうか、俺は髪の毛を後ろにズラして、上に引っ張り上げてモヒカンを取った。
「ちがーう!!!」
「俺は覆面、覆面が取りたいの。モヒカンじゃないの 」
「覆面レスラーに取って覆面は命ですじゃ。簡単に取れないように魔法がかかっていますのですじゃ 」
「魔法???」
「誰かに自分の名前を言ってもらうんですじゃ。でも自分から教えては駄目なんですじゃ 」
「教えたらどうなるの?」
「爆発すると伝えられておるのですじゃ 」
「ちょっと待って!魔法じゃ無くて呪いだよね。これ間違いなく呪いの覆面だよね 」
「そうそう。延長料金は1時間で1000Gですじゃ。」
「聞いてない??」
「バァバは、暴れん坊?皇帝を見なくちゃならないので、今日は店しまいですじゃ 」
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俺は店を追い出された……