魔法カードゲーム編1
ウォレン少年は「絶対に負けられない戦い」の会場に向かっていた。
話は少し遡る。
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ウォレン少年は秘密プロジェクト、勇者チップス販売会議の最終決定会合に参加していた。
勇者チップスとは、マイナー村の特産品である芋類を薄くスライスして揚げたチップスに、勇者のプロマイドの写真がおまけについてくる逸品である。
加工製造は、農業法人マイナー村農業製造組合で、流通販売は天下のドラゴンラブ商会である。またプロマイドは王様連盟の許可を得ている。
完璧なプランじゃないか。ウォレン少年は笑みが浮かぶのを止められない。
プロマイドについては、前回の会合で、企画立案者の権利として割合を調整させてもらった。
基本は勇者1人につき1枚だが、
テッドorアライブはマイナー村の英雄なので、テッドとアライブは50種類ずつ、モビーとブービーも30種類ずつ、テッドorアライブの4人が揃ったレアカードは40種類の豪華さだ。
特に4人が流星のごとく空を飛ぶプロマイドはスーパーレアである。
株式勇者市場に上場している約500人の勇者の中で、たった4人のテッドorアライブのプロマイドの種類が占める割合は約30%。
それでは「ファンのみんなが、コンプリートするのに大変だぞ 」と言う事で枚数比では更に増やしてもらって、おおよそ半分がテッドorアライブだ。
しかし、最終決定会合で物言いが入ったのである。
村長が「ウォレン、さすがにテッドorアライブが多すぎるんじゃないかの?」と聞いてくるが、
「新人パーティ賞と勇者パーティ大賞に、悔しいけど勇者語大賞の史上初の3冠パーティだよ。みんな買う事間違いないさ 」
ドラゴンラブ商会の会長補佐とかいう人も、
「ウォレン君。商売で大事なのは需要を見極める事だ。テッドorアライブが大人気なのは事実だが、金を出してプロマイドのコンプリートを目指すファンは、そこまではいないだろう 」
「いや、真のファンなら必ずコンプリートします。いずれ大魔王を倒す英雄テッドorアライブのプロマイドの価値は計り知れません 」
「うーん。私としては個人としての人気の高いミーネ君や、ココ君……メガネ様。パーティとして高い不撓不屈やパーフェクトオーダーをもう少し増やすべきだと思うが 」
「投資の基本は集中投資です。テッドorアライブに賭けてこそ、道は開かれるでしょう 」
「時と場合にはよるがね。では勝負をしてみないかね?」
「勝負?」
「あぁ、勝った方がプロマイドの割合の調節の権利を持つんだ 」
「僕にとってメリットが無いですよ 」
「うん。そうだな。君が勝ったら我が社の新規プロジェクト 勇者ランドのプレオープンへの参加チケットを提供しよう 」
「勇者ランド?」
「そうだ。ドラゴン ラブ グループの総力を結集した新規プロジェクト 夢の国 勇者ランドに御招待しよう 」
「わかりました。では勝負の内容はどうしましょう?」
「ウォレン君、君はカードゲームは出来るかね 」
「ふふふ、僕は株と同じくらいカードゲームが得意なんですよ 」
「そうか、では我が社の販売する大人気の魔法カードゲーム 勇者王で勝負しないかね 」
「バージョンはどうします?」
「もちろん、最新バージョンの流星の4人組だ 」
「僕が20歳以下の部のチャンピオンと言う事はご存知ですか?」
「知っているよ。ただ、そうだな。さすがにチャンピオンとの一騎打ちは分が悪いな…」
「戦う前から降参ですか?」
「いや、どうだろう。2対2のタッグマッチ戦は?」
「面白いですね。では日時はいつにします?」
手帳を確認するピスタチオ。
「そうだね。勝負は2週間後の日曜日でどうだね 」
「わかりました。最強の手札を揃えてお待ちしてますよ 」
「こちらは最強のパートナーを用意して来るよ。楽しみにしていてくれ 」
ウォレン少年vsピスタチオ ナッツのプライドをかけた勝負の開催が決まった。