矛盾編2
ポン吉との決戦当日。俺とアライブは1時間も早く決戦の場に来ていた。
「アライブ、なんでこんなに早く来たんだ?」
「ちょっと準備する事があるからね 」
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ワイワイ
決戦の時間、中央公園には多くの見物人が来ていた。
俺に化けたポン吉がやって来る。
「さぁ、決着をつけようか!!偽物よ!!」
ポン吉がふざけた事を言ってくる。
「俺がテッドだ!!」俺は高らかに告げる。
「テッドは俺だ!!」ポン吉が言い返す。
「俺がテッドだ 」
「テッドは俺だ 」
「俺こそテッドだ 」
「俺がテッドだ。」
「テッドは俺だ 」
「俺がテッドだ 」
「ハイハイ!今回テッドを決めるのは君達じゃないんだ 」
「何?」
「何?」
「ギャラリーの皆さんに決めてもらうよ。ではテッドAは左の席に、テッドBは右の席に座ってね 」
俺とポン吉は、それぞれの席に座った。
「じゃあ、ギャラリーの皆さん。順番にテッドを選んで行って下さいね 」
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酒場の女将さんが俺達の前に出てきた。
「うーん、なんだい。左のテッドは妙にイケメンだね。本物は右ね 」
何?本物の俺は1時間早く来てアライブに化粧されていたのに。というか俺は何で化粧されたんだ。
「ふっふっふ。その通り、本物は俺だ 」ポン吉が高らかに告げる。
「じゃあ、出世払いのつけ20万Gを返してもらおうかね 」
「はい?」
「あんたがテッドなんだろう?」
「おう!」
「だったら20万Gを返しておくれ 」
ポン吉は悩んだ。俺は借りてない・・・借りてないのに返したくはない。
「わかったよ。あんたは偽物だね。だから返せないんだ 」
「俺が本物だから・・・返す。」ポン吉はシブシブ20万Gを女将に渡す。おぉなんて太っ腹なんだポン吉。
「次の人、お願いします 」アライブが次の人を促す。
場違いなガタイの良い戦士と、覆面をしたモヒカン拳士の二人組が現れた。
唖然とする俺とポン吉。
「俺の名前を言ってみろ……」初対面のはずのモヒカンがわけのわからない事を言ってくる。
「はい?」うかつにもポン吉が相手にする。
「俺の名前を言ってみろと言っているんだ!!」少し苛立ったモヒカンが怒鳴りつける。
「いや、知らないから 」ポン吉が思わず本音を漏らす。
パーン!!モヒカンの指から豆粒大の魔法の球が飛び出して、ポン吉のおでこにデコピンする。
「いたた・・・何をするんだ!!」さすがに怒るポン吉。
「俺の名前を言ってみろ……」無視して質問を繰り返すモヒカン。
「えっ?」
「俺の名前を言ってみろと言っているんだ!!」
パパパパパパパパパーン!!
モヒカンが豆粒大の魔法の球を連射してポン吉を攻撃する。
「イタタタタタタタタ」頭を抱えるポン吉。
「フハハハハハハーっ」笑いながらデコピン魔法を連射するモヒカン。
「ぷははっ」
コントのような出来事に、思わず俺の笑いが漏れてしまった。するとモヒカンがこちらを向いて来る。
しまった!!
「俺の名前を言ってみろ……」モヒカンが俺に質問して来た。
ヤバイ、うかつな事を言うと撃たれる。
「俺の名前を言ってみろと言っているんだ!!」
魔法の球を連射する準備動作に入るモヒカン。
「も、も、モヒカンさん?」
「おぅ、わかっているじゃねーか。俺の名はモヒー・カーン。今日新規上場した勇者パーティ マッドマキシマムの鉄砲玉よ!!」
知らねーよ!!俺とポン吉の内心がリンクする。
「そして、こちらのお方が、マッドマキシマムのリーダーのシュラオン様だ 」
シュラオンが前に出て来て、俺を見る。
「うぬがテッドorアライブのテッドか?」
「はい 」なんか怖いので慎重に返事をする。
「いい目をしておる 」
おぉ、なんか褒められたぞ。実はいい人達なのか?ヤバイ人達だと思ったが。
「俺達、マッドマキシマムは魔族領奥深くに進行し、種族では無く力で全てが決まる弱肉強食の修羅の国を興す。名高き英雄テッドよ。うぬの力を貸してくれ。副帝の地位を与えるぞ 」
「はい?」ちょっと展開が早すぎてついて行けないと俺が思っていると、
俺の姿をしたポン吉が前に出る。
「国には、年老いたジィちゃんやバァちゃんもいるんだ。小さな子供達もいる。お前達みたいなヤバイ奴らの好きにはさせないぞ!!」
おぉ、俺の姿で言うのは止めて欲しいけど、何故かポン吉を応援したくなる。
「くらえ極炎獄龍波!!」ポン吉の尻から出た極炎獄龍波がシュラオンに襲いかかる。
「ふん!!」
シュラオンは肩がけマントを手に握ると、ブンッと振って炎に当てて搔き消した。
「なっ?」
「なっ?」
「うぬでは俺には絶対に勝てぬ。勝てぬ訳があるのだ 」
「えっ、そうなの?」
「えっ、そうなの?」
驚愕する俺とポン吉。
「剣を振るうまでも無い。この左腕の拳だけで充分よ 」
「く、くそ〜っ!!」負けフラグの立つような事を言いながら、シュラオンに飛び掛かろうとするポン吉。
「ふんっ!!」
シュラオンが左腕を振るうと、巨大な拳のような魔力が放出されて、ポン吉を吹き飛ばす!!
「グワァー!!」
ポン吉がダメージを受けて悲鳴を上げる。
何なんだ?この展開は。顔を合わせる俺とアライブ。俺達はどうすればいいんだ。