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ピスタチオの憂鬱

「ピスタチオ君。例の件は進んでいるかい 」


「はい。マイナー村の新製品の件でしたら、準備は全て整ってございます 」


「流石だね。君には僕がアドバイスする事なんてもう無いくらいだね。僕が今、王様連盟の仕事で大変忙しいのは知っているね 」


「はい。本日もまもなく会合への出立のお時間かと」


「うん。だから近々僕はドラゴンラブ商会の名誉会長になって、王様連盟の仕事をメインにして、君に会長になってもらって商会の仕事を任せたいんだ 」


「それは…… 」


「心配しなくても大丈夫だよ。君の何倍も生きている僕から見ても、君は非常に優秀な人間だ 」


「お褒めのお言葉を頂き、ありがとうございます 」


「今だって君に対しては、ほぼ丸投げだしね。今後は更にお任せしてもいいかい?」


「はい。全力を持ちまして業務に励ませて頂きます 」


「完全に任せたいね。楽しみにしているよ 」


 コン!コン!


「会長お時間です 」 部屋の外から会長の秘書が伝えてくる。


「うん。それでは行ってくる。あとは頼むよ 」


「承りました 」


 バタン。


「ふぅ〜 」思わず溜息が出てしまう。


 ナッツ商会改めドラゴンラブ商会の会長補佐ピスタチオは、まさかの激務でかなり疲労していた。


 メガネ君は上司としては非常に優秀だ。目的を明確にして優先順位をつけて組織を動かす事が出来るし、部下の教育も見事だ。


 若手社員に対しては、基本を徹底的に教育した上で、実地体験の中で成功体験を積ませている。


 一方で、熟練の幹部社員に対しては、目的に合致しているのならば大幅に権限移譲して、能力を最大限に発揮させている。


 悔しいが、社員達が以前より活き活き働いているように思えるのは事実だ。


 まさに理想の上司である。




 ただ現状に問題が無いわけではない。


 まず個人的な問題として、


 王様連盟のお偉方からは、お目付役として任せたぞと言われているが、会長が暴走した時に止める事など出来るわけが無い。


 そしてもう一つ問題がある。


 現在、ドラゴンラブ商会は従来の穀物に加えて、世界で唯一のドラゴン関係の素材を扱う事が出来る商会である。


 当然のように注文が殺到し、人員を増員しても、増員しても追いつかない状態である。


 一人前の商会員を育てるには時間が掛かるのだ。増員して直ぐに戦力化出来るような仕事ではない。


 ここらへんの改善が俺の仕事かと思っていると、ガタン!と扉が開いて会長が入ってきた。


「いゃ〜、まいったよ 」


「会長、どうなさいました?」


「急に連絡が入って、会合は明日に変更になったんだ。全員が忙しいメンバーなんだから、早めの連絡をして欲しいものだね 」


「時は金なりですな 」


「まさにその通りだね。ピスタチオ君は話が早くて助かるね 」


「私も以前はナッツ商会のトップ。それくらいで無くては商会のトップは務まりませんから 」


「今の言葉を聞いて決めた。君に完全に任せたいが、いいかな?」


 ついに来た。商会を乗っ取られてから、どれだけこの日を待ち望んだ事だろうか……


「謹んでお受け致します 」


 俺の勝利だ!!内心そう思った時だった。


「ありがとう。では君の仕事は、夢の国 勇者ランドを作る事だ。後は任せたよ 」


 え??


 ・

 ・


「勇者ランドとは何でしょうか?」


「僕が知りたいくらいさ 」


 ちょっと待てーい!!何だそれは!!


「だいたい僕が作ったら楽しめないじゃないか。未知との遭遇を求めているんだ。心配するな。君なら必ず出来る。とんでも無い物が出来る事を楽しみにしているよ 」


「では僕は帰るね 」


 満面の笑みで帰るメガネ君を見て、


 メガネ君の話は二度と鵜呑みにしないと誓うピスタチオ ナッツであった…




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