俺TUEEE編2
「ちょっと待ったー!!」
俺はせっかちな連中をストップした。戦いの前の儀式ってもんがわかっちゃいない。そして徐に言い放つ。
「朕の顔を見忘れたのか?」
・
・
・
「はい?」キュードラ男爵は呆気に取られる。
「朕の顔を見忘れたのかと聞いている 」
「いや、確か……お初ですよね 」と下手に出て来るキュードラ男爵。
「本当にそう思うのか?」
「えーっと……どちら様で?」
「朕の顔を忘れるとは何たる不敬、成敗!!」
すると、メンバー3人も声を合わせる。
「成敗!!」
「成敗!!」
「成敗!!」
そして狼男や吸血鬼達に襲い掛かった。急激な状況の変化について行けずにパニックに陥いる狼男や吸血鬼達。
アライブが疾風剣で駆け巡り、ブービーは口から火を吐いて吸血鬼達を攻撃。モビーは盗賊?だが拳で敵を殴り倒していた。
俺が、よし!ブービーは室内で大回転はしないな、と安堵していると、キュードラ男爵が話しかけて来た。
「まさか、貴様、わざと 」
「そうさ。危うく先制攻撃をされる所だったので、主導権を取り戻させてもらった 」
「だ、大魔王軍随一の知将たる私を謀るとは、貴様只者では無いな 」
「あぁ、体は戦士、頭は軍師とは俺の事だ 」
「聞いた事がないが、あんまり頭は良さそうではないな 」
「失敬な!成敗!!」
俺と男爵の戦いが始まった。
・
・
・
「迅雷剣!!」
俺の迅雷剣をスッと躱すキュードラ男爵。
「やるな!」
「ブラッディウィップ!!」男爵が血の鞭で攻撃を仕掛けてくる。
ズバン!!
俺は剣で血の鞭を切断する。
「貴様こそ!!」
俺が夢中になってキュードラ男爵と戦っていると、キュードラ男爵が急に笑いだした。
「ウフフ、ウハハハハ」
「何??」
「気がつかないのか、頭も戦士よの 」
俺が周りを見渡すと、落とし穴に嵌って首から上だけ出ているモビーと、吸血鬼達に捕まっているアライブとブービーがいた。
「な??」
「ごめんなさい、リーダー。僕が壁の出っ張りを押してしまったばっかりに……」落とし穴に嵌って首から上しか出ていないモビーが苦悶の声を上げる。
お前、盗賊だよね?と思わず問いたくなる状況だが、モビーの頭には二人の吸血鬼が剣を突き付けている。
どうやら、落とし穴に嵌まったモビーを人質にされて、アライブとブービーは捕まったようだ。モビーもブービーも血の鎖でがんじがらめにされて、吸血鬼達から剣を突き付けられていた。
「よくも私を謀ってくれたな。この屈辱をどう晴らしてくれようか 」
すると傷だらけになった狼男達から土下座コールが始まった。
ド・ゲ・ザ!!
ド・ゲ・ザ!!
吸血鬼達も、
「よくも騙し打ちをしてくれたな。この卑怯者!!土下座しろ!!」
「お前の所為でどれだけ仲間が成敗された事か。許せない。土下座しろ!!」
と追随してきた。
吸血鬼と狼男達が声を合わせて土下座コールをしてくる。
ド・ゲ・ザ!!
ド・ゲ・ザ!!
ド・ゲ・ザ!!
ド・ゲ・ザ!!
キュードラ男爵は勝ち誇って告げる「仲間の命が惜しければ土下座をするのだ 」
どんだけ土下座が好きなんだよ・・・
仕方ない。仲間全員が身動きが出来ない状態で剣を突き付けられている。逆らう事は出来ない。
俺は膝をつき、両手を前について頭を下げて土下座をした。調子に乗ったキュードラ男爵は、俺の頭を踏みつけてグリグリしながら高らかに告げる。
「ハッハッハッ!!遂に、遂に!魔王軍の宿敵を破ったぞ!!これで私も伯爵だ!!」
「プランCだ 」俺は蚊の鳴くような声で呟いた。「了解。マスター 」ブリーフワンが小さな声で返答する。そして、ピピピピピ!
俺以外にとって謎のピピピ音が響きわたる。
何だ?何だ?と騒めく吸血鬼や狼男達。
「クハハ 」俺はつい笑い声を漏らしてしまう。
「なんじゃ?」俺の声に注意を向ける男爵。
「クハハハハーっ!!」俺の笑いが高笑いに変わる。
皆の注目が集まったところで、俺は土下座したまま低い声で告げる!!
「土下座から攻撃出来ぬと思ったか!!」
ピュンピューン!!
土下座状態の俺の尻から多くの獄炎の矢が飛び立って、敵に突き刺さる。「うわー」とパニックになる狼男や吸血鬼達を、俺の獄炎の矢が追尾する。
「な、なぜ?」俺の頭を踏みつけたままのキュードラ男爵は呆然と呟いた。
「土下座からロックオン出来ぬと思ったか!!」
ピュンピューン!!
追撃の極炎の矢が放たれる。
ふんっ!!ブービーが血の鎖を引きちぎり、アライブを救出する。
慌ててモビーに吸血鬼が攻撃しようとするが、その前に俺の獄炎の矢が突き刺さる。すかさずアライブとブービーがモビーの救出に向かう。
「頭から、足を退けてくれるかな 」
「ひぃっ 」悲鳴を上げて倒れるキュードラ男爵。
俺は考えてきた決め台詞を発する。
「貴様の敗因は、どんな時でも諦めない俺達、テッドorアライブを敵に回した事だ!!」
・
・
・
・
捕虜となり王都に連行されたキュードラ男爵は「怖かった。土下座したまま攻撃してくるなんて奴は、人間じゃない……」と青ざめた顔で語ったと言う……