俺TUEEE編1
テッドの趣味は読書である。歴史小説からファンタジー小説、果ては漫画まで幅広く読んでいる。
最近のマイブームは、主人公が圧倒的な強さで敵を圧倒するお話。いわゆる俺TUEEE系のお話である。卑怯な敵を桁違いの力で圧倒し、さも当然のような決め台詞を言うのである。
あぁ、俺もこんなカッコ良いセリフを決めてみたい……
去年の勇者語大賞を受賞したが、かなり不本意な物であった為、今年は俺TUEEE的な決め台詞で受賞して、黒歴史を塗り替えてしてしまいたいのだ。
コンコン!
「リーダー、そろそろ集合の時間だよ。準備が出来たら食堂にきてね 」アライブが呼び出しに来た。
「わかった。本を片付けてから行くので、先に行っててくれ 」
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食堂には既にアライブ、モビー、ブービーの3人が揃っていた。
「では今回は、僕が状況説明と目的を説明させてもらうよ 」アライブが説明を開始する。
「この町から1km先の山のダンジョンで吸血鬼が発生したらしくて、複数の勇者パーティが退治に向かうも敗走しているんだ 」
「敗退した勇者パーティからの情報によると、複数の吸血鬼に眷属の狼男が多数いるらしい 」
「そうなると、かなり高位の吸血鬼もいそうですね 」ブービーが口を挟む。
「うん。かなり知恵の回る吸血鬼がボスらしくて、ダンジョンは1階からトラップだらけで、どのパーティも2階まですら行けずに敗走しているんだ 」
「なーに、うちには盗賊が3人もいるんだ。罠解除ならお手のものじゃないか 」俺はみんなを安心させる為に軽口を叩く。
「ただ気になる事があって、敗走したパーティ達は吸血鬼達に、テッドorアライブを呼んで来いと言われているんだ 」
「どういう事だ 」
俺の疑問にブービーが答える。
「罠かも知れませんね。我々を呼び出す為にわざと他の勇者パーティを逃がしたのかも知れません 」
「僕もブービーの意見に賛成だね。町から非常に近い為にこのダンジョンを放置する事は出来ない。パーティ構成上の理由でテッドorアライブが派遣される可能性は非常に高い 」
「でも俺達を呼び出して、何の意味があるんだ?」
「僕達は去年の最優秀パーティだから、僕達をやっつけるのは凄い手柄になるんじゃないのかな 」
「そうですね。我々を倒す事で魔王軍内での権力争いで有利に立つつもりかも知れませんね 」
「俺達は無敵のテッドorアライブだぜ。舐めた考えを後悔させてやろうぜ 」
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俺達は山の中腹にあるダンジョンの入り口についた。ダンジョン内にはうっすらと灯りがついているようだ。
「どうだ。中の様子はわかるか?」俺はブービーに指示を出す。
「百里眼!!」ブービーは中距離用の観測魔法を唱えて内部の様子を観察する。
「うーん。見える範囲には誰もいませんね。今までのパーティの話だと警備は厳重そうだったので、やはり罠な確率が高そうですね 」
「まぁいい。先頭はブービー。2列目に俺とアライブ。後衛にモビーで行くぞ 」
的確な指示を出して、俺達はダンジョン内に侵入した。
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「ふぃ〜っ、さすがに罠だらけで解除に疲れてしまいますね 」
「わかった。アライブとポジションチェンジだ 」
「了解。リーダー 」
アライブとブービーがポジションチェンジし、罠を解除しながらのダンジョン探索は続く。
カチッ。
アライブが扉を開くと地下2階への階段があった。俺達はフォーメーションを維持しつつ階段を慎重に降りて行く。
地下2階に降りると、4匹の狼男が俺達に襲い掛かって来た。しかし当然ながら俺達の相手ではない。
「迅雷剣!」
俺の迅雷剣が炸裂する。
ギャァと叫んで倒れる狼男。周りを見ると皆、狼男を倒したようだ。
「たいした事ないな 」
「えぇ、ただ油断せずに進みましょう 」
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俺達は狼男達のたまの襲撃を受けながら、5時間近くかけて地下3階まで降りて来た。今はブービーが前衛で斥候と罠解除を担当している。
「王の間っぽい扉がありますね 」
「ここまで来て逃げても仕方ない。行こう 」
俺達は王の間に入った。
真っ暗だ。ブービーに口から松明をしてもらおうとした時に灯りがついた。
部屋は大広間になっており奥には階段状のステージがあった。ステージの上に誰かいる。俺達はステージに向けて歩みを進めた。
「ようこそ。テッドorアライブ君。吾輩がこのダンジョンの主人キュードラ男爵だ 」典型的なドラキュラ顔の男が名乗りを上げる。
「伯爵じゃないのかよ!!」
「君たちを打ち果たせば、伯爵に二階級特進の約束を大魔王様から頂いておる 」
パチン!!
左右の扉から狼男と吸血鬼がわらわらと現れた。
「さぁ!!殺っておしまい!!」
乱戦が始まった。