魔王城偵察編2
俺達4人は目的地に向かう途中で、ある大都市の上空を高速で飛行していた。
ゴゴゴゴゴゴーー!!
物凄い轟音に市民達が空を見上げる。
騒めく市民達。
「なんだあれは?」
「流星??」
「黒い3つの爆炎と赤い爆炎だ!!」
「世界の終わり・・・」
「きっと魔王軍の攻撃よ!!」
ザワザワザワザワ!!
パニックになりそうになる市民達。
そこで俺達4人はミッション計画通りに、市民達が見える位置まで高度を下げる。
誰かが気づく。
「あれは・・・テッドorアライブだ!!」
「城塞都市を救った英雄テッドだ!!」
うぉおおおぉーー!!
「あの方角はビーゴ砂漠!!」
「きっと誰も倒せない謎の魔王の退治よ!!」
「謎って?」
「退治に失敗した勇者達は何故か、皆、口を閉ざすそうよ。」
「でも!!」
「英雄テッドorアライブなら大丈夫だ!!」
うおぉおおおおー!!
俺達は大歓声の中で、大都市を通り過ぎた。
俺は、運転をパンツに任せて思索に耽っていた。
名だたる勇者パーティが大勢挑んで、誰も倒せない事などあるのだろうか?
その中にはキメラ公爵を打倒した不撓不屈も含まれている。何故、キメラ公爵には不撓不屈で挑んで、こっちの魔王は完全に無視する。いっさい触れないそうだ。ストーカーかよ。ちょっとキメラ公爵が可哀想になる。
「ビーゴ砂漠の魔王城まで5分で到達予定」パンツの報告が入る。
「ブービー!!」
「千里眼!!」ブービーが千里眼の魔法を発動して様子を伺う。
「うーん。どうやら最上階のバルコニーの窓が空いていますね。一気に本丸に突入出来そうですよ。」
「了解。このまま突入するぞ!!」
俺達は爆炎を抑えて、花で彩られたバルコニーの窓から魔王城に突入した。
「ここは?」アライブが声を上げる。
部屋一面に飾られた花、花、花。罠か?なんか花粉系のヤバイ奴か?
「ならば焼き尽くすのみ!!」俺が尻から極炎獄龍波の構えをすると、
「ちょっと待っておくれよ。」という声が聞こえて、ドアが空いた。
扉が開き、若い男が入ってきた。
「お花が可哀想じゃないか。」
スタンバイを止める俺。
「君は?」アライブが聞く。
「僕はヤーフル。花と男をこよなく愛する男だ。」
皆で頷き合う。
撤退だ!!
バルコニーに駆け出す俺達。
「ちょっと待ってよ。ねぇ、こんな形の出会いなんて、悲しいよ〜」追いすがるヤーフル。
俺はつい余計な事を言ってしまう。
「お前にも、死んでも、死なれても欲しくもないんだよ。じゃあな。」
ズゴゴゴーン!!
次々とバルコニーから飛び立つ俺達。
一人取り残されたヤーフルは「運命・・・」と呟いた。
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帰還したテッドorアライブは、結成以来初のミッション失敗を報告。他のパーティと同じく、黙して2度とこの件に触れる事はなかった・・・