覆面座談会編2
「では、ディスカッション(討論)を開始します。テーマは「魔王軍打倒」についてです 」
メガネ君は皆を見渡して言う。
「それでは真ん中の席の方からスタートです。そこから左周りで一人ずつ発言をお願いします 」
真ん中のモノリスが発言する。
「お……オイラは魔王軍との最前戦である、大森林からの進行を提案するんだな 」
「お、いいですね。語尾もキチンと合わせてきました。グッドです。では次の方 」
「しかし、あの昼でも暗く、迷いの森と呼ばれる大森林にはどんな罠が仕掛けられているかはわからない。お……お……おじさんは反対するぞ!!」
「余は大森林よりも砂漠方面からの魔族領への進行を提案する。敵の配置も手薄。精鋭部隊での急襲が有効じゃ 」
「いや、砂漠には絶対に近づかない方がいい……オラはそう思う 」
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「うーん。今一つ盛り上がりませんね 」メガネ君が本音を漏らす。
「覆面悩み相談会なんだから、趣旨に戻した方がいいんじゃないのか?」右端のモノリスが発言する。
「そうですね。テーマを悩み相談会に戻しましょう。それでは今のモノリスさん。どうぞ 」
「お、俺。そうだ、実は……」
「ブーッ」とブザーが鳴り響く。
「はい。失格。テーマは変更しましたがルールを変えたとは言っていません 」
「えーっ!!」
「罰として立ってて下さい 」
ニョキっと足が生えたモノリスが立ち上がった。
「では、その右隣の方にお願いします 」
「わいは、わいの悩みは、最近メンバーに『テッドorアライブのテッドさんに似てきてる 』って言われている事なんや 」
俺に似てきているのが、悩みとは何だ?そうか俺のファンなので、恐れ多いという事か。謙虚な奴だ。素晴らしい事ではないか、励ましてやろう。
「お、お、……おばさんはテッドさんに似ているって素晴らしい事だと思うわよ 」
「わいは元々クールで売っていたんや……」
「ん???」
「それが、最近はキャラ崩壊してクールじゃない時間帯の方が多いんじゃないかって、みんなに言われるんだ 」
「お、おばさんは、テッドさんは凄くクールでカッコいいと思うわよ 」
一斉に立ち上がり、体を左右に振り、違う違うとアピールするモノリス達。
「おぉ!これだけのモノリスの心が一つになった 」
と満足そうなメガネ君。
「よし。今日の座談会の結論が出たぞ。満場一致で『テッドさんは凄くクールでカッコいいは否決されました 』だ」と満面の笑みで語る。
「おばさんは反対よ!!テッドさんは凄くクールでカッコいいわ!!」
「おばさんは当事者のような気がするけど……」訝しげなメガネ君。
「おばさんは、おばさんよ!満場一致なんて有り得ないんだから!!」
「うーん、わかった 」残念そうなメガネ君。
助かったとおばさんが思った時だった…
「じゃあ、テッドさんが凄くクールでカッコいいは……賛成おばさん1票、反対残り全員で否決されました 」
ガタっ!!
急に一人のモノリスが立ち上がった。皆の注目が集まると、モノリスは「コングラチュレーション(おめでとう)と言いニョキっと生えた手で拍手を始めた。
パチパチパチ。
ガタっ!!
ガタっ!!
次々に立ち上がり拍手を始めるモノリス達。
パチパチパチパチパチ。
「おめでとうテッドさん 」たまにお祝いの言葉が混じる。
パチパチパチパチパチパチパチ。
「おめでとう!!」
パチパチパチパチパチパチパチパチ。
「おめでとう 」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ。
「お、おばさんは反対なんだから〜!!」満場の拍手の中、混乱したおばさんの悲痛な叫びが掻き消されていった。
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時は変わり、王様連盟の最高評議会。メガネ君が書いた報告書を王様達が見ている。
「勇者パーティのリーダーのストレスが大変という事で、悩み相談会を開いたが、みんな楽しそうじゃな 」
覆面悩み相談会は不要との判断で、今後の開催予定は中止となった。