覆面座談会編1
真っ暗な会議場の中でパッとメガネ君の周りだけが明るくなる。
「それでは、第1回 リーダー覆面 悩み相談会を実施致します 」メガネ君が開催を高らかに宣言した。
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!
「では注意事項等を説明します。発言者を特定されたくない皆様に配慮して、皆様の声は魔法で変化されております。また姿も巨大なモノリスに変化されています 」
俺はすかさず手を上げる。
モノリスからニョキっと手が生えてくる。
「そこのモノリスさん 」メガネ君が俺を指名すると、俺のモノリスの周りだけパッと明るくなる。
「発言する時にどうすれば良いかを確かめる為に手を上げたんだ 」
「さすがリーダー、的確で迅速な判断です。発言を求める時は手を上げて下さい。ニョキっと手が出てきます 」
俺がつい、手を上げずに、
「フフッ、優秀なリーダーもいるものだな 」
と呟くと、パッと明るくなった。
「はい、勝手な発言でも明るくなります。発言は自由ですので、遠慮なく発言をお願いします 」
俺が「それでは、収拾がつかなくなる事があるんじゃないか? 」と言うと、
「その場合は、僕がシャーラップ(お黙りなさい)と言った場合は、黙って下さい 」
俺が「黙らなかったらどうなるんだ? 」と問うと、
「持ち株の半分を失う事になりますので、ご希望の方はどうぞ 」
しーん。
みんな黙りこんだ。
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俺は手を上げて発言を求めた。
ニョキっとモノリスから手が生えて明るくなる。
「どうぞリーダーさん」
「俺の悩みなんだが、個性が無いというか、差別化が出来て無いような気がするんだ 」
「ほうほう」メガネ君が相槌を入れる。
「例えば、魔法使いとかは爺さんで、じゃ、とか儂とか言っていればいいんだが、リーダーはみんな俺って言っている気がするんだ 」
「確かに 」
「俺もそう思う 」
「俺もだ 」
「俺もだな 」
「俺もだ。」
「俺のパーティなんて、戦士も俺って言うから発言する時に注意しなくちゃならないんだ 」
「俺もだ 」
「奇遇だな。俺もだ 」
「それは大変ですね。剣士と戦士の組み合わせは多そうなので、混乱を招く要因になってそうですね 」
あるモノリスからニョキっと手が出て来てパンっと手を叩いた。
「良い事を思いついた 」
「どうぞモノリスさん 」
「俺の代わりに名前を言うのはどうだろうか?例えば、テッドは発言します。みたいな 」
「おい。そこの俺。勝手に俺の名前を使うんじゃないよ 」
「お、あの真ん中の席が尻火のテッドか 」
「俺、初めてみたぜ。元痔のテッド 」
「英雄テッドの悪口を言うとは許さんぞ 」
「俺もだ 」
「俺もだ 」
すると両手のモノリスの俺が
「すまない。揉め事を起こすつもりは無かった。メガネ君、シャッフルタイムだ 」
「了解だ。リーダー。ミュージック!」
「スタート!!」
陽気な音楽が流れ始め、足が生えたモノリスたちは立ち上がって、陽気に踊り出した。
「ストップ!!」
一斉に椅子に向かうモノリス達。
椅子に全員が座った時には、誰が誰だかわからなくなっていた。
「シャッフル完了だね 」と満足そうなメガネ君。
「ところで先程の続きだが、リーダーの個性が弱い部分については、どうするべきだろう 」少し知的な俺が話を戻す。
「うーん、そうだ。良い事を思いついた!!」
メガネ君が目を輝かせながら発言する。
俺は知っている。あれは、とんでも無い事を思いついた時の目だ……
「今から、15分の休憩に入ります。休憩後は俺の使用は禁止します。また他の人と被るのも禁止します 」
「えーっ!!」多くの俺がハモる。
「失格の方はリーダーとしての知力が足りないので、1ヶ月の間、他のパーティメンバーとリーダーを交代して頂きます 」
リーダーの面子をかけた戦いが始まった。